2013年2月8日発売
ジョージ・ゲイツはかつては失踪事件が起きた場所を訪ね歩く旅行作家だった。七年前に八歳の息子が何者かに殺されてからは、地方新聞社の記者として働いている。ある日、彼は二十年前に謎めいた小説を残して失踪した詩人キャサリン・カーについての話を聞く。ふとしたきっかけで、彼は早老症の少女アリスとともに、その小説を手がかりとして詩人の行方を追うことになる。だが、徐々に詩人の運命が彼自身の人生と奇妙につながっているように感じられてきて…。世界が絶賛する巨匠が繊細に紡ぐ苦悩と再生の物語。
「謎の種族」の正体を解明すべく、未踏星域に侵入したアライアンス艦隊は、テディベアに似た姿の凶暴な種族と遭遇した。激闘の末ジャンプ点へ逃れたが、出た先は白色矮星の星系で、そこにも別の異星人がいた。整然とした編隊を組み、姿はクモとオオカミを合わせたような種族だ。ギアリーはこの種族と友好関係を築こうとするが、超弩級戦艦を含む凶暴な異星人の艦隊が追撃してきた…果たして艦隊は、無事故郷に帰れるのか?-。
吸血鬼や人狼らと人類が共存するヴィクトリア朝英国。おてんばなわれらが主人公ソフロニア・テミニック嬢は、上流階級の子女が集まる花嫁学校に入れられてしまうことに。ところがそこは、情報収集や毒物の使い方、異界族への対処などといった技術を教える、女スパイ養成所だった!?さらにソフロニアは、空盗賊がらみの謎解きにも巻きこまれるがー歴史情緒とユーモアにみちたスチームパンク冒険奇譚、新シリーズ開幕。
物のはずみで起きた決闘で相手を斬殺した片桐宗春は、逆うらみによる敵討ちに狙われていた。己の正当のため討たれまいと逃亡に身を窶す宗春だったが、江戸に潜んで町医者として暮らすうちに触れた人情と心意気、肉親の縁にいつしかその心が変わりゆくー。秘密を抱え生きる男の姿を、円熟の筆が描く傑作長編。
首席家老・桑山又左衛門の許に、ある日果たし状が届く。恥を知る気持ちが残っているなら、決闘に応じよ、と。相手は野瀬市之丞。同門・片貝道場の友であり、未だ娶らず禄を食まず、厄介叔父とよばれる五十男である。「ばかものが」戸惑いつつも、又左衛門は過去を振り返っていくー。運命の非情な饗宴を描く、武家小説の傑作。
同時期に道場に入門した五人の仲間は各々の道を歩み、時代は移ろう。逼迫した財政を救うため、藩の長年の悲願だった太蔵が原開墾に向け、邁進する又左衛門。だが策謀と裏切りを経て手にした権力の座は、孤独であったー。人生の晩年期に誰もが胸に抱くであろう郷愁と悔恨を、あますところなく描いた傑作長篇。
太平洋戦争末期、北ボルネオで、気鋭の民族学者・三上隆が忽然と姿を消した。彼はジャングルの奥地に隠れ住む矮人族(ネグリト)を追っていたという。三上の生存を信じる捜索隊は、ジャングルの奥地で妖しい世界に迷い込むー。ジョセフ・コンラッド『闇の奥』に着想を得、その思想を更に発展させた意欲作。2011年芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
“アメリカ淵”と呼ばれる渓谷で発見された女性の全裸死体。手がかりは仏が身につけていたネックレスただひとつ…。警視庁捜査一課の土門功太朗は、徹底的な地取り捜査で未知の犯人ににじり寄る。やがて浮かんだ容疑者。息詰まる取調室の攻防。懐かしの昭和を舞台に、男たちの渋い仕事っぷりを描いたノスタルジー刑事小説。
江戸の吉原で黒い狐面の集団による花魁殺しが頻発。北町奉行所の貧乏同士、今村圭吾は花魁たちを抱える女衒に目をつけ、金で殺しを解決してやるともちかけた。一方、大工の幸助は思いを寄せていた裏長屋の華、おようの異変に気づき過去を調べ始める。「姫川」シリーズの著者初の時代小説。傑作捕物帳登場。
広告代理店の冴えない営業マン・狛江が単身赴任したのは、リストラ対象の北九州支店。思わぬトラブルでヤクザに絡まれ、大借金のうえ身売りの大ピンチに。鉄拳の雨と禁断のレバ刺し、爆弾を抱えたダイ・ハードな日常。生き地獄に陥った男のI(=自分)ターンとは!?血圧急上昇、リーマン・ノワールの傑作。
「呼ぶことはできなくても頻繁に呼ばれる人生」を送るOLのヨシノ。友人から結婚式招待状が届き、申し込んだその日に旅行をキャンセル。二次会幹事まで頼まれ準備万端当日を迎えたが、途中で上司の父親の通夜手伝いに呼び出され、空腹のまま駆けつけるはめに…芥川賞受賞後、ますます快調な著者の傑作中篇集。