2013年3月12日発売
四十過ぎてホームレスになった男。目の前を往き来するのは幼馴染み“ギッちょん”とひとりぼっちの父(「ギッちょん」)。毎朝同じ電車になる男が鬱陶しくて時間をはやめてみたら、やはり男と一緒になった。適当に話を合わせているうちに「わたし」は窮地に陥る(「水の音しかしない」)。第一部・街でゆきかう老若男女の様々な思惑、殺意。第二部・海辺のサバイバル(「トゥンブクトゥ」)。
英国出身でペット葬儀社勤務のデニスは、友人の葬儀の手配のためハリウッドでも評判の葬儀社“囁きの園”を訪れ、そこのコスメ係と恋に落ちる。だが彼女の上司である腕利き遺体処理師もまた、奇怪な方法で彼女の気を引いていたのだった…容赦ないブラック・ユーモアが光る中編佳作。
若者になった「私」はジルベルトへの恋心をつのらせ、彼女の態度に一喜一憂する…。19世紀末パリを舞台に、スワン家に出入りする「私」の心理とスワン家の人びとを緻密に描きつつ、藝術と社会に対する批評を鋭く展開した第二篇第一部「スワン夫人のまわりで」を収録。
船頭として働く元南町奉行所の定町廻り同心、沢村伝次郎。ある日、派手な着物を着た女が数人の男女を引き連れて歩いているところを目撃する。翌朝、その一人が新大橋で女の土左衛門となってあがる。なぜ、謎に殺められたのか。探索を始めた伝次郎の前に深まっていく謎ー。シリーズ初の大仕掛けの事件に伝次郎の勘と一刀流の剣が冴えわたる。シリーズ史上最高傑作。文庫書下ろし長編時代小説。
冷夏霖雨のため米価が暴騰する文化五年、江戸の米問屋が相次いで襲われた。寺侍の棚橋市之丞は不順な天候と貧しさに喘ぐ者たちに心を痛めていたが、飢える者のために炊き出しをしている寺があると聞き、訪ねることに。しかし、そこに違和感を覚えた市之丞は、その寺を調べ始める。寺を舞台に繰り広げられる大活劇。江戸情緒と爽快感満載。待望のシリーズ第四弾。文庫書下ろし長編時代小説。
不眠症のサラリーマンを悩ませるマンションの住人。異常なのは彼らか自分か?(「冬の雨にまぎれて」)。アメリカ旅行の途上、「私」が出会った日本人夫婦には秘密があった(表題作)。悪徳警官の汚名を着せられた元刑事が息子とのキャンプ中、追い続けていた犯人を見つけ…(「海鳴りの秋」)。人生の歯車がずれていく人間たちの閉塞感を、短編の名手が七つの物語で紡ぐ傑作集。
四十二歳の有馬仙太郎は、製薬会社の営業マン。別れた妻に払う養育費の捻出に四苦八苦していた。ある晩、浅草での接待の後、観音裏の一杯呑み屋・金魚に立ち寄った。その店で、仙太郎は不思議な体験をする。便所を出ると、カウンターには若かりし日の父親がー。過去と現在を行き来し、仙太郎は競馬で一攫千金を狙う!疲弊したサラリーマンの鬱憤を晴らす爽快作。文庫書下ろし。
フリーのメイクアップ・アーティスト黒地渉。彼にメイクを施された女たちは、厚く身に纒った心の鎧を脱ぎ捨て、本当の自分をさらけ出す。雑誌編集者、新進女優、主婦、美術館学芸員、祇園の女将…その肌に渉のしなやかな指が触れるとき、彼女たちは今まで経験したことのない官能の悦びに目覚めていき…。女の肉体の深奥に潜む欲望を濃密に描き出す、文庫書下ろし&オリジナル連作官能小説。
ロンドンのオークションでゴッホ作「医師ガシェの肖像」を日本人が競り落とした。落札価格は約百八十億円。時は流れ、日本のバブルが弾け、借金で追いつめられた男女にある依頼が持ちかけられる。それは倉庫に眠る「ガシェの肖像」を盗んで欲しいというものだった…。第14回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝く、痛快にしてスリリングなコンゲーム小説の傑作。
小金欣作は、福岡の歓楽街・中洲の街金業者。ヤクザ相手に一歩も引かず地上げで鳴らした時代もあったが、今は長いものには巻かれてしまう負け犬同然の日々だ。ある夜、小金は一人の少女を救おうとして、地元暴力団幹部を敵に回してしまう。勝ち目のない敵との闘いに挑む小金と仲間の運命は!?日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した、痛快、中洲ハードボイルド。
深夜の自動車事故。犠牲者は、ヨットによる単独無寄港世界一周に成功し、一躍英雄となった内田洋一だった。遺体の毒物反応から、殺人事件と判明。警部補・十津川の前に次々と浮上しては消える容疑者たち…最後に真犯人と見込んだ人物には、鉄壁のアリバイがあった。東京ータヒチ間のヨットレースを舞台に繰り広げられる雄大なトリックに、十津川が挑む。長編推理小説。