2013年3月29日発売
「五」足す「二」で「しち」。「五二屋」とは質屋のこと。黒船来航に揺れる江戸の質屋・伊勢屋を訪れるのは、本当に金に困った客、盗品を持ち込む輩、そして襲撃を企む盗賊…!?主の傳蔵が、その鋭い洞察力と深い情をもって悪事に挑む。
不可思議な工場での日々を三人の従業員がそれぞれに語る表題作(新潮新人賞受賞)のほか、熱帯魚飼育に没頭する大金持ちの息子とその若い妻を描く「ディスカス忌」、心身の失調の末に様々な虫を幻視する女性会社員の物語「いこぼれのむし」を収録。働くこと、生きることの不安と不条理を、とてつもなく奇妙な想像力で乗り越える全三篇。
失踪した友人を捜す早紀。祖父母秘伝の豆スープを配る咲。双子の兄を事故で亡くした崎の部屋に転がり込んだ、10歳の姪さき…。いま“さきちゃん”たちに訪れた小さな奇跡が、かけがえのないきらめきを放つ。きつい世の中を、前を向いて生きるひとに贈る、よしもとばなな5つの物語。
もしもまたホロコーストが起こったら、誰があなたを匿ってくれるでしょう?-無邪気なゲームがあらわにする、取り返しのつかない夫婦の亀裂(「アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること」)。ユダヤ人のヨルダン川西岸への入植の歴史を、子を奪いあう二人の母を軸にして、寓意あふれる短篇に仕立てあげた「姉妹の丘」。物語にはつねに背景がある、人生にはつねに背景があるー年若い息子に父が語る、悲劇を生きのびた男の非情な選択(「若い寡婦たちには果物をただで」)。コミカルな語り口にしのばせた倫理をめぐる深い問いかけ。ユダヤ人を描くことで人の普遍を描きだす、啓示のような八つの短篇小説。
西暦2231年、木星前方トロヤ群の小惑星アキレス。戦争に敗れたトロヤ人たちは、ヴェスタ人の支配下で屈辱的な生活を送っていた。そんなある日、終戦広場に放算された宇宙戦艦に忍び込んだ少年リュセージとワランキは信じられないものを目にする。いっぽう2014年、北アルプス・コロロギ岳の山頂観測所。太陽観測に従事する天文学者、岳樺百葉のもとを訪れたのは…。21世紀と23世紀を“つないで”描く異色の時間SF長篇。
有望な若手社員としての期待に応えられず、仕事に倦んでいたジョッシュ。ある日上司から、「二週間の休暇の間に、仕事を続けるかどうか決めてほしい」と言われる。休暇初日、とうもろこし畑の迷路で迷ったジョッシュに、農夫がくれたひと粒の種。種をまくべき場所を見つけるために、十四日間の旅が始まるー。
低迷を続ける大企業、スープ・インクのCEOに就任したナンシー。そんなある日、ランチに立ち寄ったスープハウスで驚くほど美味しいスープに出合う。そのスープを作っていたのは、「味の秘訣はこの私」と話すグランマ(おばあちゃん)だった。買収の危機に瀕する会社を救うため、グランマのレシピを手にナンシーの奮闘が始まるー。