2013年8月発売
道頓堀に巨大なタコが現れた。対処に大わらわの大坂西町奉行所の面々をよそに、大食漢の名物奉行・大邉久右衛門が用人・佐々木喜内に命じたのはー(『蛸芝居』)。連日連夜、豆腐ばかりの献立に、久右衛門は爆発寸前。どうやら財政難のせいばかりではないようでー(『地獄で豆腐』)。書き下ろし1編を含む垂涎必至の4編を収録。大坂を舞台に描く、謎あり恋ありグルメありの食いだおれ時代小説第2弾。
異様な暑さに目を覚ますと、「僕」は砂漠にいた。そこへ突如降ってきたのは、ごくごくありふれた電話ボックスだった。-いったいなぜ?混乱したまま電話ボックスに入り、助けを求めて119番に電話をかける。だが、そこで手にした真実はあまりにも不可解で…。過去と現在が交錯する悪夢のような世界から、「僕」は無事に生還することができるのか。ミステリアスな傑作長編。文庫書き下ろし。
16世紀ロンドン。法廷弁護士シャードレイクのもとに、従弟殺害の罪を問われている少女エリザベスの弁護依頼が舞い込む。少女は黙秘を続け、このままでは拷問死をまぬがれない運命だった。一方、摂政クロムウェルは、少女の審議期間延長と引き換えに、古くから伝わる幻の「ギリシャ火薬」の製法と現物を探し出すようシャードレイクに命ずるのだが…。イギリスで人気の歴史ミステリー・シリーズ第2弾。
幻の破壊的兵器「ギリシャ火薬」を追ううちに、関係者のむごたらしい死に遭遇し、自身も命を狙われるシャードレイク。手掛かりがつかめないまま、弁護を請け負った少女の審議期日も迫っていた。クロムウェル以外にギリシャ火薬を追うのは誰なのか?黙秘を続ける獄中の少女エリザベスのみが知る恐ろしい真相とは?猛暑のロンドンをシャードレイクが駆け抜け、思いもよらぬ結末を迎える迫真のミステリー!
樋口一葉の歌の師匠として知られ、明治の世に歌塾「萩の舎」を主宰していた中島歌子は、幕末には天狗党の林忠左衛門に嫁いで水戸にあった。尊皇攘夷の急先鋒だった天狗党がやがて暴走し、弾圧される中で、歌子は夫と引き離され、自らも投獄され、過酷な運命に翻弄されることになる。「萩の舎」主宰者として後に一世を風靡し多くの浮き名を流した歌子は何を思い胸に秘めていたのか。幕末の女の一生を巧緻な筆で甦らせる。
女47歳。最後かもしれない恋は突然訪れた 主人公は大学の同級生3人。主婦になり不妊治療をあきらめてカフェのパートに励む千乃、バツイチとなっても義母と同居し2児を託して証券会社に勤務する泉、起業家と結婚し専業主婦として2児を育てる真子。彼女たちが47歳の夏に再会し、更年期や子供との関係に悩む一方で、新たな恋、先の見えない恋に陥りながら、女としての残りの人生を考える姿を描く。 女はいくつまで女でいられるのか、いくつからが中年なのか。体や心の変調に悩むR40読者の間で波紋を呼んだ『中年前夜』(小学館)から4年。甘糟氏がR40、50世代の女性にあらためて問う一作です。 「若くもない女の恋愛なんて、美しいものではない」「夕方を待つ空は美しい。自分たちはまさしくこの空のようだと思う」「いくつになっても、恋は最初で最後」---印象的で美しい言葉が彩る大人の恋愛小説です。
性に溺れて生きるしかない女と、ともに溺れる覚悟をきめた男。白昼の路上、夜の渋谷、新宿のクラブ、バーのテーブルの下で。剥き出しの欲望を振りかざし、凶暴なまでの快楽を貪る年上の女・ナギ。彼女にふれて、ぼくは全てを変えられた。その女をしばる過去が何であれ、構わない。真っ暗な性の闇に堕ちてもなお、ナギとつながりたいー。
商社秘書の雪絵は、一見強気だが心も身体もオトメ。ある日ホテルのバーで出会ったエキゾチックなイケメンが次の朝、会社にやってきた。しかも彼は、中東某国のホンモノの王子さま!むりやり連れ出された雪絵の運命やいかに!?
空を飛ぶ病身の女、キャベツの赤ん坊を育てる母親、身体を入れ替えられた妻、生の心臓を食べたがる娘、マッチを擦る黒いコートの少女ー。世界幻想文学大賞受賞の現代ロシアを代表する作家、待望の傑作短編集!
古書と専門書の書店が軒を連ねる、読書家の聖地ストーナム。トリシアはこの町のミステリ専門書店店主だ。ヴィンテージものからベストセラーまで取りそろえたこの店は、彼女の夢が詰まった大切な城。ところが隣の料理書専門店の店主が殺され、高価な初版本が消えた。第一発見者のトリシアは容疑を晴らそうと必死で事件を調べる。本屋だらけの町を舞台にしたライトミステリ第一弾。
映画が喋りはじめた1930年のベルリンで、将来を嘱望されていた女優が撮影中に痛ましい死を遂げた。事故で片付けようとする上司に反発し、ベルリン警視庁殺人課のはみ出し者ラート警部は、またもや独自に動きだす。刑事としての矜持ゆえ、さらには自らの栄達のため。光と影が交錯する映画界と巨大都市を、ラートは東奔西走するが…。ベルリン・ミステリ賞受賞の傑作警察小説。
警視庁の内部でも、捜査先でも次々と問題を起こし、身動きが取れなくなっていく刑事ラート。そんな中、不可解な状態の女優の屍体が発見される。屍体に施された異様な細工は何を意味するのか…?ナチスが政権を獲得する前、人々が自らの信念に忠実でありえた最後の時代、ラートはいかにして刑事としての矜持を示すのか。現代ドイツ・ミステリの豊饒を体現する、傑作警察小説。
旅を続ける英国人少年クリスは、小さな町で家々の扉や壁に赤い十字架のような印が残されている不可解な事件に遭遇する。奇怪な首なし屍体の目撃情報も飛び交う中、クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが…。書物が駆逐される世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。本格ミステリの未来を担う気鋭の著者の野心作、「少年検閲官」連作第一の事件。
年金生活者で独り暮らしの主人公の自宅に、「われわれの贈り物で、死んで下さい」と書かれた異様な手紙が届けられた。世界中で、差出人不明の卵型の自殺器と手紙がばらまかれる。キャップを外すと中に針があり、それを自分の体に刺すと、一瞬にして死ぬことが出来る。徐々に人口が減り始め、“死”が日常になる…終末SFの傑作「自殺卵」ほか書き下ろし「退院前」、「とりこ」の2作を収録した全8編!
突如現れた謎の土塊に生き埋めとなった少女が救われた事件を発端に、京都周辺に数多く出現し始めた謎の弁別不能体・不忍。それは人の動機を殺すため存在を感知できず、視界に入れた者は行動不全に陥る。7年後、シノバズの討伐・処理組織「高天原探題」に参入した寺沢俊樹は、かつて己が救い出すも危険な異能者として強制隔離されてしまった少女・皆戸清美との再会を望むが…比類なき独創性を放つ闘いと純愛の伝奇SF。
故あって英国秘密情報部SISから追われた男トーマス・ケル。彼は昔の同僚から思わぬ依頼を受けた。SIS初の女性長官に就任するアメリア・リーヴェンが突如消息を絶った。アメリアのことをよく知るケルに彼女を探し出してほしいというのだ。ケルは捜索を始めるが、やがて驚くべき国際的陰謀が明らかに!非情な謀略に巻き込まれた人々のドラマを描く傑作スパイ小説。英国推理作家協会賞スティール・ダガー賞受賞作。
十六世紀。スコットランドの高地に牧童として生まれたアラン・ジョスリンは、十七歳で戦士集団に加わり、アイルランドに渡る。そこで出会ったのは、オマリーの氏族の猛々しくも魅力的な男たちと、赤い縮れ毛を短く切った、十歳の少女グローニャ。闘いと航海に明け暮れる、波瀾の日々の幕開けだったー。
属国支配を強めるイングランドに対して、アイルランドの氏族は内輪もめを繰り返し、団結することができない。息子を捕縛されたグローニャは、彼の釈放と暴戻な行政官の解任を要求すべく、ロンドンに向かう。毅然として時に妖艶な不世出の女海賊と、彼女の従者であり続けたアランを待ち受ける運命とはー。