2014年発売
明治になって衰退する柔術界に、新星のごとく「講道館流」が誕生した。提唱者は文武二道の達人、嘉納治五郎である。技のたゆまざる追究と人間教育への情熱によって、「姿三四郎」のモデルとされる志田(西郷)四郎ら「四天王」がめきめきと頭角を現す。若き気概に充ちた、闘う漢たちの壮大な物語が、いま幕を開ける。
柔術王国たる九州では、古流柔術の猛者たちが激突し、全国一の規模を誇る関東の揚心流戸塚派は、新興の講道館に激しく対抗心を燃やす。新しい時代、この国で覇をとなえるのは誰なのか?運命の「警視庁武術試合」を前に、闘いはいよいよ激しさを増す。
抗いがたい力によって掏摸を続ける男が掏摸集団にスカウトされる。そこで出会う個性豊かな人間たちとは…「指」。失業中かつ恋人の部屋に居候中の男が、刑務所前にある定食屋で働かないかと誘われる。出所者を見張るのがその仕事なのだが、男は恋人の助言もあって料理に手を加え定食屋を大繁盛させる…「飯」。そして文庫化にあわせて新たに書かれた物語…「嘘」。3編を繋ぐ妙技も見事な作品集。都会の片隅に生息する“放浪者”を鋭く活写した第33回吉川英治文学新人賞候補作。
警視庁捜査二課。殺人などの凶悪事件を担当する捜査一課とは違い、横領や詐欺といった狡猾な知能犯と対峙する。その二課に所轄署から配属された西澤警部補は、独特の捜査方法や同僚をライバル視する捜査員に戸惑いながらも眼前の犯罪に立ち向かっていく。人はどんな時に人を騙し、裏切り、真実を隠蔽するのか。細かく作り上げられた事件と、人間の奥深い心理を圧倒的なリアリティーで描くこれまでにない警察小説。待望の文庫化!
音吉と名乗る年端もいかない男の子が、岡っ引の弥平次が営む船宿『笹舟』に父親を捜しにやってきた。見知らぬ男たちに音吉の母親が連れ去られたと聞いた弥平次は、その行方を追おうとするが、音吉の捜す父親が、かつて弥平次の手先で、探索の最中に命を落とした飴売りの直助だと知り…。江戸の岡っ引たちに一目置かれる弥平次と個性豊かな手先たちの活躍を描く人情捕物の決定版。シリーズ第二弾。
武家女の物の怪が旗本を色香で惑わせ次々と取り殺しているー江戸を騒がす不気味な噂に、暗殺奉行の依田は謀略の匂いを嗅ぎつけ、闇裁きの配下に探索を命じる。一刀流の早見、手裏剣遣いの神谷ら軍団の面々が仕掛仕置に闘志を燃やすなか、ひとり浮かぬ顔の与七。実は三人目の旗本が殺められた川開きの夜、血刀を手に必死で逃げる美しい女を深川で助けたのだった。大反響の新シリーズ第三弾!書き下ろし長編時代小説。
腕のいい蝋燭職人の父との確執から家を飛び出した照介は、十年に亘る放蕩無頼の生活の末、実家である蝋燭問屋に舞い戻る。すでに父は亡くなっており、家業は弟の次郎が継いでいたのだが、往時の繁盛ぶりは見る影もなく…。(「あかり」)-家族の愛憎を扱った表題作をはじめ、米つき屋、廻り髪結いなど、江戸の市井で懸命に生きる人々の、日々の暮らしぶりや人間模様を描いた、傑作人情絵巻シリーズ第一弾。書き下ろし時代小説。
ある雨の日「Yuregi Detective Office」の表札がある部屋の前で、女の人が一人で煙草を吸っていた。「あの、もしかしてここの事務所の方ですか」「そうよ」「探偵さん…ということですか?」「そうなるわね」「すごいですねえ。あの。探偵さんってことは、推理とか、するんですか?」「まあね。あなた、もしかして最近、新しく靴を買ったんじゃない?」史上最短、デビュー2作目で今年度本格ミステリ大賞受賞。天才モリカワによる前代未聞の名探偵、登場!春夏秋冬、そしてまた春ー雨女探偵が出会う5つの事件!
井原西鶴は寛永19年(1642)生まれで、松尾芭蕉や近松門左衛門と同時代を生きた俳諧師でもあり浄瑠璃作者でもあった。若くして妻を亡くし、娘と大坂に暮らしながら、全身全霊をこめて創作に打ち込んだ西鶴は、人間大好き、世間に興味津々、数多の騒動を引き起こす。ほんま、はた迷惑なお父はんや。日本初のベストセラー作家にして娯楽小説の祖・井原西鶴。娘との日々の暮らしから、謎に包まれたその人生に迫った。直木賞受賞第1作!
イタリア駐留米軍基地の建設現場で発見された人骨は、第二次世界大戦中に謎の失踪を遂げたパルチザンのものだった。当時何があったのか?その頃、憲兵隊の大尉カテリーナと米軍の情報将校ホリーは、米軍少佐の娘ミアの誘拐事件の捜査を始める。犯人は基地の建設反対を訴えて、ミアを責め苛む映像をインターネットで全世界に配信する。狡猾な犯人に苦慮するカテリーナとホリーはSNS「カルニヴィア」の創設者ダニエーレに協力を求めるが…。壮大なミステリ三部作、波瀾に満ちた一気読み必至の第二部が登場!
“シビュラシステム”の調査のため、日本に潜入した工作員チェ・グソン。彼には、母国・朝鮮人民共和国に残してきた最愛の妹スソンがいた。しかし帰国を命じられた彼を過酷な運命が待ち受けていたー流浪のハッカーが槇島聖護に出会うまでを描く「無窮花」、執行官・縢秀星の人生を変えた料理にまつわるエピソード「レストラン・ド・カンパーニュ」の全2篇収録の『PSYCHO-PASSサイコパス』スピンオフノベライズ第1弾。
コンサルティング探偵シャーロック・ホームズの相棒の医師ジョン・ワトソンは、今日もシャーロックが依頼人の素性を一瞥で当てるのを小気味よく見ていた。裸にこだわりのある依頼人は秘密クラブ『全裸連盟』から退会告知を受けた原因を調べてほしいという。興味をもったらしいシャーロックは、だが次の瞬間言った。「頼んだぞ、ジョン」…21世紀を駆ける名探偵と相棒の活躍を描く、現代版ホームズ・パスティーシュ全6篇。
“サラセン”の存在とそのテロ計画は、アメリカ政府の知るところとなった。暗号名“ピルグリム”を与えられた男は、すぐに追跡を開始する。敵の目標は?その手段は?手がかりはたった二回の電話傍受記録のみ。トルコへ飛んだ“ピルグリム”は、そこで謎めいた殺人事件に遭遇する…一方“サラセン”のテロ計画は決行へ向けて着々と進んでいた。はたして“ピルグリム”の追跡は実を結ぶのか?超大作白熱の第2弾!
製薬会社の研究員マリーナ・シンは、ブラジルへの出張を命じられる。生殖医療に革命を起こすとされる新薬の開発状況を確かめ、また、現地で病に倒れた同僚の死の詳細を知るためだ。気が進まないながらブラジルのマナウスに飛んだマリーナは、アマゾンの奥地にある極秘研究施設に赴く。そして、昔の指導教授スウェンソン博士との再会をきっかけに、熱気と謎に満ちた密林のなかで、過去の挫折や後悔と向き合うことになるがー『ベル・カント』のオレンジ賞受賞作家による、驚異と希望の物語。
IT企業ジェイ・プロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられるー「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。やがて香港法人の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして恋愛小説。伝説のデビュー作『グリフォンズ・ガーデン』から22年ー運命と犯罪と恋についての長篇第2作。
殺人罪で六年の刑期を終えた小早川恵太が熱海に帰ってきた。平穏な温泉街に緊張が走る!!そして二週間後、湯河原に住む会計士が何者かに射殺される。そんな折、十津川警部は東京で発生した幼女誘拐事件の容疑者として小早川をマークする。ところが、新たに起きた連続殺人事件が十津川に立ちはだかる!!巻末に長篇推理「寝台特急トワイライトエクスプレスを爆破せよ」連載!!
どの藩の経済も傾いてきた寛延三年、藩札掛となった奥脇抄一郎は命を賭すにたる御勤めと確信。飢饉の際、藩が命ずる実体金に合わない多額の藩札刷り増しを拒み、藩札原版を抱え脱藩。江戸で、表向きは万年青売りの浪人、実はフリーの藩札コンサルタントとなった。各藩との仲介は三百石の旗本・深井藤兵衛。次第に、藩札による藩経済そのものを大本から立て直す仕法に至った矢先、東北の最貧小藩から依頼が…。剣は役に立たない時代、武家が穀潰しでなくなる方策とは?三年で赤貧の小藩に活気ある経済状況をもたらしうるか!
虎の皮を被ってライオンと戦うはめになった男が、見世物の檻の中で出会ったのは…。ユーモラスな展開の中に人生の深淵を垣間見る「銀色のサーカス」、母の乳房、脈打つ心臓、鼠取り、砕かれた手…。精緻で謎めいたイメージが交錯する「アラベスクー鼠」、電信柱と柳の木の奇妙な恋物語「若く美しい柳」など、日常の裏側にひそむ神秘と怪奇、啓示と奇蹟を詩情ゆたかに描くコッパードの珠玉の短篇集。
侯爵令嬢メグスはロンドンの貧民街セントジャイルズで婚約者を殺され、スキャンダルを避けるためゴドリックと便宜結婚をする。形だけの夫婦となった二人は、顔を合わせることもせず、メグスは夫の田舎の領地でひっそり暮らしていた。あれから二年ーメグスは婚約者の命を奪った“セントジャイルズの亡霊”の正体を暴き、仇を討つために、ロンドンに住むゴドリックの屋敷を訪れた。ゴドリックは、病気がちだった前妻を亡くしてから固く心を閉ざし続けていた。しかし、明るくはつらつとした妻メグスと接するうちに、哀しい過去を乗り越えようとしている自分に気づく。もう二度と誰かを愛することなどないと思っていたのに、彼はメグスを心からいとおしく感じはじめていた。ゴドリックは彼女をまもるために全身全霊を捧げることを誓う。なぜなら彼は…。「メイデン通り」シリーズ第5弾!
サンゴ礁と魚たちが織りなす美しい水中庭園ーセオドシアが水族館の巨大水槽をうっとりと眺めていると、目の前の水中で必死にもがく男性の姿が、あれは元恋人パーカー!?懸命の救助も間に合わず、彼はその場で絶命した。警察は事故死と断定するが、セオドシアの目はパーカーの腕にある傷を見逃さなかった。おそらく犯人に抵抗したときにできたもので、これは事故なんかじゃない!彼女が早速調べてみると、シェフだったパーカーは死の直前、店の買収問題などいくつものトラブルを抱えていたことがわかった。でも、容疑者を絞れないまま捜査は行き詰まり、人気店の経営者であるセオドシアには本業の仕事も山積み。おまけに、店の大切な仲間ヘイリーに引き抜きの話まで持ち上がり…!?茶の湯に着物、和の心が光る人気シリーズ第13弾!