2016年2月8日発売
中上健次、もう一つの遺作も初単行本化! 「路地」の解体時期に父親(浜村瀧造の朋輩・ヨシ兄)殺しに手を染め、「路地」から逃れた鉄男は、やはり夫・セキグチジュンを殺した女・セキグチマリと出会う。女は鉄男にそれまでと異なった衣装を着せ、ジュンと名付け、ジュンという<物語>を背負わせる。 マリが精神病院の患者同士として知り合った友人で、富豪の”太った女”水島エリは、鉄男を教祖とあがめる新興宗教に加わろうとし、道すがら出会った暴走族の首領の若者も、これまた鉄男の教祖としての雰囲気に惹かれていく。 そして、鉄男、マリ、エリ、暴走族の若者とその妹は、南の地・シンガポールへと向かうのだった……。 中上作品の中でも最もエンターテイメント色の濃い作品で、雑誌「SPA!」に連載中に未完のまま絶筆した。
シンガポールへ飛んだ鉄男の暗躍が始まる! 「路地」の解体時期に父親(浜村瀧造の朋輩・ヨシ兄)殺しに手を染め、「路地」から逃れた鉄男は、水島ジュンを名乗り、シンガポールではリー・ジー・ウォンの偽名で、青年政治家ミスター・ヤンに出会う。 やがて、ミスター・ヤンの母親であるミセス・ヤンの手引きで香港社会を操る黒幕・ミスターパオにも出会うが、彼は英語を流暢に使いこなすプレーボーイで、シンガポール、香港と渡り歩き、中上作品にこれまでなかった新しいキャラクターとして描かれる。 下巻では、鉄男のプレーボーイぶりが物語の読みどころとなっており、シンガポール(第二部 緑の館)、香港(第三部 翡翠の兵隊)とテンポ良く、スリリングかつエロティックな鉄男の暗躍が、読む者を魅了する。 中上作品の中でも最もエンターテイメント色の濃い作品で、雑誌「SPA!」に連載中、第三部の途中で未完のまま絶筆した。
あの日あの場所で何が起きたのか(「道成寺」)、助けられたかもしれない命の声(「黒塚」)、原発事故によって崩れてゆく言葉の世界(「卒都婆小町」)など、エンターテインメントの枠を超え、研ぎ澄まされた筆致で描かれた五編。
増加する若年層の自殺を防ごうと、政府による戦慄のプロジェクトが始まった。心理データ取得のためにあえて自殺に追い込まれる子供たちを、監視員の洋平は救うことができるのか。感動のラストに多くの読者が涙した、初期の名作大幅改稿版。ホラー短篇「魔子」も併録。
「響き合う幸せを、音楽を愛する人々と分かち合うために。ふたりはチェロを弾き続けていたんだね」。世界的な指揮者の父とふたりで暮らす、和音十六歳。そこへ型破りな“新しい母”がやってきてー。親子の愛情、友情、初恋、そして実母との奇跡の再会。音楽を通して描くドラマチックな感動物語。
すべての女は男の携帯を見ている。男は…女の携帯を覗いてはいけない!同棲する彼女の携帯を軽い気持ちで盗み見たことから生まれた、小さな疑い。だが、疑いは疑いを呼び、秘密は深まるばかり。引き返せなくなった男の運命は?話題の芥川賞作家による、驚愕の家庭内ストーキング小説。
代理母問題を扱った衝撃の話題作「獄」、心を閉ざした四十代の女性の追憶「優しさ」、愛と孤独を静かに描く表題作など、いずれも現代中国のさまざまな社会問題を背景に、深い失望や喪失に苦しむ人々の心もようが切々と伝わる珠玉の短篇九篇。この一冊でリーは「短篇の名手」としての名声を確立した。O・ヘンリー賞受賞作二篇収録。
すべてはダブリンから始まった。20世紀最大の作家の世界へ、ようこそ。 執筆一一〇年の視差で甦るジョイスのダブリン市民像 《おもな目次》序 はじまりのジョイス 吉川 信/第一章 「姉妹たち」 金井嘉彦/第二章 「遭遇」 小島基洋/第三章 「アラビー」 桃尾美佳/第四章 「エヴリン」 奥原 宇/第五章 「レースの後」 滝沢 玄/第六章 「二人の伊達男」 丹治竜郎/第七章 「下宿屋」 田多良俊樹/第八章 「小さな雲」 横内一雄/第九章 「複写」 南谷奉良/第十章 「土」 坂井竜太郎/第十一章 「痛ましい事件」 小林広直/第十二章 「蔦の日の委員会室」 戸田 勉/第十三章 「母親」 平繁佳織/第十四章 「恩寵」 木ノ内敏久/第十五章 「死者たち」(一) 中嶋英樹/第十六章 「死者たち」(二) 河原真也/第十七章 「死者たち」(三) 吉川 信/あとがき 金井嘉彦/引用・参考文献一覧