2016年5月10日発売
北欧で消息を絶った日本人女性の精神的彷徨 織物工芸に打ち込んでいた支倉冬子は、一枚のタピスリに吸い寄せられ、魅惑されてしまう。ついにはヨーロッパに留学する決意までした冬子。だが、冬子は、ある夏の日、その地方の名家ギュルンデンクローネ男爵の末娘エルスと孤島にヨットで出かけたまま消息を絶ってしまう。 冬子が残した手記をベースに、生と死、または愛の不安を深く掘り下げた小説となっている。絶対的な孤独の中、日本と西欧、過去と現在を彷徨しながら、冬子はどのように再生していくのか……。 辻邦生が自著『生きて愛するために』で語った「死というくらい虚無のなかに、<地上の生>は、明るく舞台のように、ぽっかり浮かんでいる」という彼の死生観とともに、西欧的骨法によって本格小説を日本に結実させんとした、辻文学初期傑作の一つである。巻末に「創作ノート抄」を併録。
1919年のニューオーリンズで、斧を使って殺人を繰り返す、アックスマンと呼ばれる犯人。「ジャズを聴いていない者は殺す」と予告までする殺人鬼を懸命に追う男女がいた。人種差別の強い街で、黒人の妻がいることを隠して困難な捜査をするタルボット警部補。ある事情から犯人を捕えるようマフィアに依頼された元刑事ルカ。ジャズマンと共に事件の解明に挑む探偵志願の若い女性アイダ。彼らの執念で明かされる衝撃の真相とは?実際に起きた未解決事件をもとに大胆な設定で描く、英国推理作家協会賞最優秀新人賞受賞作。
日暮里駅から徒歩10分。ちょっとレトロな雑居ビルの2階にある増山超能力師事務所ー。所長の増山率いる、見た目も能力も凸凹な所員たちは、浮気調査や人探しなど、依頼人の悩み解決に今日も奔走。超能力が使えても、そこは人の子。異端の苦悩や葛藤を時にユーモラスに時にビターに描く人気シリーズ第1弾。
四十歳を目前にして離婚した「私」と、親代わりに育ててくれた祖父母を亡くしたばかりの、幼なじみで従妹のちどり。孤独を抱えた二人は、一緒にイギリスの西端の田舎町・ペンザンスに小旅行に出かける。淋しさを包みあう二人の間に、三日目の夜、ある「事件」が起きる…。日々を生きる喜びが心にしみわたる傑作小説。
小金井橋の死闘で小城藩の刺客を斃した小籐次だったが、己が生涯追われる身になったと悟り、怪我を押して甲斐国へと向かった。その道中、幕閣の女密偵おしんと知り合う。小籐次は、不正の臭いのする甲府勤番を探るというおしんに同道するが、甲府では驚くべき事態が進行していた。来島水軍流の剣が冴える、シリーズ第3弾!
現代文学を代表する阿部和重が、9.11から3.11に至る世界と対峙した12の小説集。秘密研究施設、国際テロリスト殺害、放射能警戒区域窃盗団、少女都市伝説、拉致監禁、ヘイトデモ…世界中のエッジな場所から、おなじみのヒットナンバーに乗せて届くとびきりキツい毒と笑いの彼方に、ほのかに見える一筋の光。
時は江戸。ある大遊廓の創業者・熊悟朗は、人が抱く殺意の有無を見抜くことができた。ある日熊悟朗は手で触れるだけで生物を殺せるという女性・遙香と出会う。謎の存在「金色様」に導かれてやってきたという遙香が熊悟朗に願ったこととはー?壮大なスケールで人間の善悪を問う、著者新境地の江戸ファンタジー。
田鶴藩に戻った燦を不意に襲う、謎の飛礫。それはかつて共に暮らした與次の仕業だった。「今更のこのこ帰りやがって。何もかも遅すぎるんだ!」與次から篠音の身の上を聞いた燦は、ある決意をする。城では圭寿が、藩政の核心を突く質問を伊月の父・伊佐衛門に投げかけていた…。少年たちが闘う、文庫オリジナルシリーズ第七弾。
鏡磨ぎ・梟助さんの腕前に惚れ込んだ愚翁が切りだした、隣家の話。主人が寝ている隙に侵入した泥坊が、酒の誘惑に勝てず酔いつぶれて大鼾。間抜けな泥坊がどうなったかという結末を聞いて「まるで落語に出てきそうですね」と梟助さん。勢い話は落語に登場する泥坊づくしとなりまして…好評シリーズ第四弾!
両親亡き後、叔父に実家を追われた晴太郎と幸次郎。兄弟は、かつて父の許で修業していた職人の茂市と一緒に、菓子司「藍千堂」を開く。優しい職人肌の晴太郎と、しっかり者で商才に長けた幸次郎は、亡き父の教えを守りながら、叔父の嫌がらせにも負けず、知恵と工夫を凝らした季節の菓子で店を切り盛りする。
自分を果物にたとえたら……四者四様の恋が動き出す 「フルーツパーラーにない果物はなんでしょう」その質問をきっかけに、四人の女性は自分の恋愛を振り返る。甘酸っぱい連作短編集。
日本橋の高札場で盛岡藩士が切腹した。背景には弘前藩との長年にわたる確執があるらしい。旗本嫡男の神木光一郎は、元鳥取藩主・松平冠山や盛岡出身の剣豪・相馬大作と親交を深めるうち大藩の存亡に係わる真実を知ることになるがー。“陸奥の忠臣蔵”といわれた事件を背景に、武士の“義”を切実に描く傑作。
折口信夫が、江戸川乱歩が、そして澁澤龍彦が種村季弘が絶賛した、郷愁の作家の最高傑作集。「オウボエを吹く馬」「変身」「匂う女」「異邦の人」「歩く木」「ふかい穴」「崩壊」「蟻の道」「冥府の犬」…下町物、明治大正エロティシズム、“春日検事の事件簿”シリーズより、台湾物…の、多様な読み味の全11篇。異色の幻想・ミステリ作家の面目躍如!
ハルマゲドン勃発!睾丸破壊、性別転換、猥褻目的限定遠距離干渉、瞬間死刑、カレーの辛さ調節、無差別強制自傷行為…等々の多彩な能力を持つ「魔人」を擁する「生徒会」と「番長グループ」の生き残りをかけた戦いがついにはじまったのだ。そこに無限の攻撃力と無限の防御力を持つ第三勢力『転校生』も加わって、事態はさらに混迷を深めていくー。
公爵家の次男ローランドは、友人たちと滞在先の古城へ向かう道中、かつての恋人リリベットと偶然再会する。ふたりは7年前、激しい恋に落ちて将来を誓いあった。しかしローランドの長期出張で連絡が取れぬうちに、リリベットは父親の借金のかたに別の男性と結婚させられたのだった。はなればなれになっても片時も忘れなかった女性と再びめぐり逢えた奇跡を喜び、あの頃以上の情熱を燃えあがらせるローランド。一方リリベットは、愛のない生活につらい思いを抱える中、夫の恐ろしい秘密まで知ってしまい、危険を感じてここまで逃れてきていた。運命のいたずらから、友人とともに古城で暮らすことになったふたり。やがてリリベットの傷ついた心は、ローランドの優しさで癒されていくが…。エリザベス・ホイト絶賛、珠玉の愛の物語!
超高級ワイナリーの豪華試飲パーティに招待されたセオドシアとドレイトン。ワイナリーの命運がかかっている新しい銘柄の完成披露とあって、チャールストンじゅうの美食家や評論家たちが一堂に会した。ワイン樽が開けられるのをいまかいまかと待ちかまえるセレブたち。ついに開いたと思った瞬間、なんと、樽の中からすでに息絶えた若い男性が転げ落ちてきた!悲劇に見舞われたワイナリーのオーナーから事件の真相の解明を懇願されたセオドシアは、探偵さながらの鋭い目で被害者の部屋に謎めいたメモが残されているのを発見した。それがどうしても頭から離れず…!?いっぽうティーショップでは、英国貴族屋敷をテーマにしたお茶会を開催し、これが大好評。ついには店の移転や二号店出店の話まで出てきて!?