2016年6月10日発売
ジャングルで、オオカミに育てられた人間の少年モーグリ。クマや黒ヒョウ、大蛇らと交流し、ジャングルの掟を教えられる一方で、人間を敵視する大トラや、獰猛な赤犬の群れとのはげしい対決をくりひろげていく。人間社会の縮図のような動物社会の中で、少年がさまざまな冒険を経て成長していく姿を描く名作が新訳で蘇る。
この頃都で評判の「蝦蟇法師」がいた。犬ほどの大きさの蝦蟇をそばにおき、それが念仏を唱えて失せ物の在りかを当てる。ところが藤原景之の仏間から消えた黄金の観音菩薩の行方は分からないという。不審に思った晴明と博雅は(「蝦蟇念仏」)。秋に花咲く桜の木、天空で笛吹く博雅などいよいよ冴えわたる美しさ、面白さ、至福の十篇。
安倍晴明と源博雅のコンビが平安の闇を祓い続けて夢枕作品は百を越えた。映画、歌舞伎、ドラマ、音楽、漫画と越境を繰り返し「陰陽師もの」という一大ジャンルを築く元となった小説・陰陽師シリーズの磁力の源と謎に、インタビュー、対談、座談会、エッセイ、登場人物紹介、全話解説等あらゆる角度から迫ったファン必携の一冊。
91歳の耕造は妻に先立たれ、69歳の小夜子を後妻に迎えていた。ある日耕造が倒れ、小夜子は結婚相談所の柏木と結託して早々に耕造の預金を引き出す。さらに公正証書遺言を盾に、遺産のほぼすべてを相続すると耕造の娘たちに宣言したー。高齢の資産家男性を狙う“後妻業”を描き、世間を震撼させた超問題作。
人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう世界「山内」で、仙人蓋と呼ばれる危険な薬の被害が報告された。その行方を追って旅に出た日嗣の御子たる若宮と、彼に仕える雪哉は、最北の地で村人たちを襲い、喰らい尽くした大猿を発見する。生存者は、小梅と名乗る少女ただ一人ー。八咫烏シリーズの第三弾。
スクランブル飛行中の自衛隊機TF-1が墜落。原因はパイロットの操縦ミスとされたが、この機を開発した四星工業の技術者たちは腑に落ちないものを感じ、独自に調査を始める。そして半年後、TF-1が再び墜落した。日本の国防を揺るがす真の脅威とはなにか?松本清張賞受賞の傑作航空サスペンス!
御鑓拝借に始まった騒動から年が明け、文化十五年。赤目小籐次と、肥前鍋島本藩を含む四家が組織した追腹組の死闘は続いていた。それに追い打ちをかけるように、江戸の分限者たちが小籐次の首に千両の褒賞をだし、剣客を選んで順に小籐次を襲わせるという噂が流れる。事の真偽は如何に?小籐次の危難が続くシリーズ第4弾!
夫に先立たれた女の胸に去来する、若き日に泣く泣く別れた男の面影(表題作)。凶作続きで餓死者も出ている甲州の村。百姓代の決断は(「犬目の兵助」)。異国船の来襲に、愛するものを残し長崎警護へと向かう下級武士の悲話(「捨足軽」)。晩年の五篇と幻の直木賞受賞第一作。全作書籍未収録の文庫オリジナル。
時は幕末。何をやってもうまくいかない南町奉行所の若手同心・澤村文吾は幼馴染の静馬と再会する。静馬は剣術道場を始めると語るが、その支援者は任侠の顔役・鶴の伊右衛門だったー。文吾の身を案じる親分猫・マサムネも登場してますます賑やかな書き下ろしシリーズの第四弾。おネエ同心・中村様が主役のおまけも収録。
「秋色」とは、「心の中にある秋景色のこと」である。世界的に著名な建築家をめぐる三人の女性。京都の名家出身で二廻り年下の妻、三十年来の愛人である銀座の高級クラブのママと大学生になるその娘。シドニー、麻布、銀座、奈良、京都、伊豆山と舞台を移し、華やかにそして哀しく展開される、三人三様の愛のかたちと駆け引き。
有名建築家・今野良衛は、京都の名家出身の菊子と結婚、上流階級の仲間入りを果たすも、家では暴君であった。今野にはすべてを打ち明けている三十年来の愛人・寺田奈津江がいた。貞淑な妻・菊子だが、シドニー行きの機内で出会った女子大講師・椿井新八郎の人柄に惹かれていく。その椿井を慕うのが、奈津江の娘・世紀であった。
出目で太鼓腹、そして人をつつみこむ明るい磊落ー。乱世において争いを好まず、あえて負けを選ぶことで真の勝ちを得ようともした小国・宋の名宰相、華元。詐術と無縁のまま名君・文公を助け、ついには大国・晋と楚の和睦を実現させた男の奇蹟の生涯をさわやかに描いた中国古代王朝譚。司馬遼太郎賞受賞作。
徳弥は父の急逝で若くして住職となった合コン好きの不良坊主。彼の元に、小六のとき一瞬だけ同級生だったフリーターの一時が訪ねてきた。父の遺骨を引き取るためだ。再会した二人は、かつてのマドンナ・美和の自殺にある男が絡んでいたことを知り、仕返しを企てるが…。爽快でちょっと泣ける男の純情物語。
ルポライターの私は、取材のために全国を訪ね歩いていた。どこへも辿り着かない通勤用の観覧車、ただひたすらに玉を磨く伝統産業、すでに海底に沈んだ町の商店街組合…。そこで私が出会ったのは、忘れ去られる運命にあるものを、次に受け継ぐために生きる人人だった。今、この瞬間にも、日常から消えつつある風景を描いた、6つの記憶の物語。
17歳のまひるは、親友4人で騒ぐ放課後や落語家を目指す彼氏・亮司とのデートが何よりも楽しい高校生活を送っていた。将来の夢はぼんやりしていて、大人になるのはもっと先だと思っていたが、亮司に起こった事故をきっかけにまひるの周囲は一変する。大好きな人のため、憧れに近づくため、道を切り拓いていく若者たちの成長を爽やかに綴った物語。
家庭を顧みずに仕事に没頭してきた叩き上げの刑事・本城が、警察官僚として出世争いの渦中にいる息子から懇願される。出向中に詐欺組織に盗まれた警察手帳を内密に奪還してほしいというのだ。親の務めを果たしてこなかった慙愧の念から、息子の隠匿に手を貸すことを決める本城。手帳に迫る過程で掴んだのは、殺人も厭わない詐欺組織の実態だった。
母の仇を討ったことにより、闇の勢力との激闘に巻きこまれたお夏。だが彼女は、居酒屋の女将としての穏やかな日常を守ろうとしていた。そんなある日、お夏は婀娜な女に呼び止められ、殺しを依頼される。馬鹿な願いと一蹴したお夏だが、その女が続けて口にした名前に胸騒ぎを覚え…。願えば願うほど安息の日々は遠ざかるのか?波乱の第五弾。
七世紀終わり。国は強大化する唐と新羅の脅威にさらされていた。危機に立ち向かうべく、女王・讃良は強力な中央集権国家づくりに邁進する。しかし権益に固執する王族・豪族たちは、それに反発。やがて恐ろしい謀略が動き始めるー壮大なスケールで「日本誕生」を描き歴史エンターテインメントの新たな扉を開けた傑作。
大身旗本への奉公替えで更なる出世を果たした川端藤吉。俸禄も上がり、前途洋々かと思われた。しかし奉公先である小出家では、百姓上がりの藤吉の事を良く思わない者ばかり。世話をする事になった馬への嫌がらせを受け、それが原因で若殿に怪我をさせてしまう。突として窮地に立たされる藤吉に、一筋の光明は差すのか?堅忍不抜のシリーズ第三弾。