2016年6月30日発売
今晩和、親愛なる地平線の旅人よ。これは彷徨いながらも抗い続ける女性の為の物語だ。後の世に神の手を持つ者と称される男の物語だ。美しきものを心に刻みつけて目を閉じる者の物語だ。さあ、詩を灯そう。詠い続けよう。聖夜に生まれいづる彼と共に。
すれ違う登山者と挨拶をするたびに返ってくる怪訝な表情。焦燥感に囚われはじめた矢先、謎めいた男が告げた“事実”が恐ろしい「命の影」。友人と縦走する山道をずっとついてくる女性の動きが操り人形のようで不気味な「ついてくる女」、あまりの恐ろしさに、著者が山と距離を置くきっかけとなった体験「山を這う蟻」など、厳選した16話を収録。山とその裾野で遭遇した不思議なできごとを、美しくも厳しい自然とともに活写する。
東京オリンピック開幕前後、六十六歳の松坂熊吾は金策に窮していた。大阪中古車センターをオープンさせるも、別れたはずの愛人・博美との関係を復活させ、それが妻・房江に知られ、高校生になった息子・伸仁にも責められ、熊吾は家を出ざるを得なくなる。糖尿病は悪化し、大怪我を負い、さらに会社の不振が続く。熊吾の運は尽きたのか。そして、心を痛めた房江はついに…。執筆三十五年、ついに次作・第九部で完結。
ある日、自分のハリが大嫌いで、ほかのどうぶつたちとうまくつきあえないハリネズミが、誰かを家に招待しようと思いたつ。さっそく手紙を書きはじめるが、もしも○○が訪ねてきたら、と想像すると、とたんに不安に襲われて、手紙を送る勇気が出ない。クマがきたら?ヒキガエルがきたら?ゾウがきたら?フクロウがきたら?-さまざまなどうぶつたちのオソロシイ訪問が、孤独なハリネズミの頭のなかで繰り広げられる。笑いながら、身につまされながら、やがて祈りながら読んでいくと、とうとうさいごに…。オランダでもっとも敬愛される作家による、臆病で気むずかしいあなたのための物語。
大学院生・井森建は、ここ最近妙な夢をよく見ていた。自分がビルという名前の蜥蜴で、アリスという少女や異様な生き物が存在する不思議の国に棲んでいるというものだ。だがある夜、ビルは不思議の国ではない緑豊かな山中で、車椅子の美少女クララと“お爺さん”なる男と出会った。夢の中で「向こうでも会おう」と告げられた通り、翌朝井森は大学の校門前で“くらら”と出会う。彼女は、何者かに命を狙われていると助けを求めてきたのだが…。夢の“クララ”と現実の“くらら”を巡る、冷酷な殺人ゲーム。
「タスケテ」って思っても味方なんてダレもいないんだ。「クルシイ」って思っても逃げ場なんてドコにもないんだ。誰もかも蔑んだ、アタシをどうしてやりたいの…?ココロがコワレルんだ、アタシはどこへと消えるの…?かにみそPのダークサイドとDeinoワールドの暗黒コラボが満を持してノベル化!
アリッサ・ガードナーにはふたつの悩みがあった。ひとつは、あの『不思議の国のアリス』のモデルだったアリス・リデルの子孫だということ。それをクラスメイトに毎日からかわれてうんざりしていた。もうひとつは、突然虫や花の声が聞こえるようになったこと。自分はおかしいのかもしれないとひとりで悩み続けていた。だがある日、アリッサは入院中の母親から虫たちの声が聞こえるのはアリスにかけられた呪いのせいだと教えられる。呪いを解くために不思議の国へ旅立ったアリッサ。だがそこはキャロルの本とは違い、耳のような骨がある小人の白ウサギ、彼女を食べようとする花のゾンビなど、不気味な生き物だらけの悪夢のような世界だったー!
不思議の国へやってきたアリッサが出逢ったのは、不気味な生き物たちだけではなかった。幼い頃から知っていたはずなのになぜか存在を忘れていた、翼を持つ青年モーフィアスと再会したのだ。アリス・リデルの呪いを解くには、彼女が不思議の国で巻きこした混乱を元に戻さなくてはいけないとモーフィアスから教えられたアリッサはいくつもの試練に挑む。眠りについたお茶会の出席者たちを目覚めさせ、チェシャ猫の魂を探し…。そして、最後にアリッサを待ち受けていたものはー。奇妙な世界観で紡がれた、ダークで美しい、もうひとつの『不思議の国のアリス』。