2016年7月8日発売
勝利を、信じろ。足袋作り百年の老舗が、ランニングシューズに挑む。このシューズは、私たちの魂そのものだ!埼玉県行田市にある老舗足袋業者「こはぜ屋」。日々、資金操りに頭を抱える四代目社長の宮沢紘一は、会社存続のためにある新規事業を思い立つ。これまで培った足袋製造の技術を生かして、「裸足感覚」を追求したランニングシューズの開発はできないだろうか?世界的スポーツブランドとの熾烈な競争、資金難、素材探し、開発力不足ー。従業員20名の地方零細企業が、伝統と情熱、そして仲間との強い結びつきで一世一代の大勝負に打って出る!
娘を殺された山野辺夫妻は、逮捕されながら無罪判決を受けた犯人の本城への復讐を計画していた。そこへ人間の死の可否を判定する“死神”の千葉がやってきた。千葉は夫妻と共に本城を追うがー。展開の読めないエンターテインメントでありながら、死に対峙した人間の弱さと強さを浮き彫りにする傑作長編。
朝鮮出兵の前半、文禄の頃。一通の文箱が博多の津に打ち上げられた。それは半島に渡った夫を思う妻のものだった。興味を持った豊臣秀吉は女を名護屋に呼び寄せたが…(「汐の恋文」)。顧みられること稀な戦国の世の夫婦の姿に焦点をあて、「武」の背後に秘められた様々な情愛の光景を描いた傑作短編七作を収録。
郷里ゆかりの地で漁師になった長尾。彼に伴われ移り住んだ紗江は「二号丸」と呼ばれ、地域のコミュニティから拒まれる一方、長尾の妻とは電話を通じて不思議な交流を続けていたが…。表題作ほか、プリンを巡る男たちの思いが熱い短篇三作と、大震災以降を生きる女性たちを描いた中篇「あの日以降」を収録。
天保の大火でお袖を失い自堕落な生活をおくる色男・瓢六。しかし老中・水野忠邦と“妖怪”鳥居耀蔵の陰謀に苦しむ人々を見ていられず、また謎の武家女性・お奈緒の魅力に導かれるように、相棒の堅物同心・篠崎弥左衛門と幕政の理不尽に立ち向かう。大切な人を喪った者のみが知る優しさが漂うシリーズ第四弾。
「町廻りのついでに時々麹町の常楽庵に立ち寄ってくれ」定町廻りの新米同心・間宮仁八郎は上役に命じられ、おそるおそる門をくぐる。大奥勤めが長かったという年齢不詳の庵主になぜか気に入られ、行儀見習いに庵に出入りしていた娘の失踪、商家の不審火など、様々な事件に巻き込まれるはめにー。江戸の新本格!
久慈屋の大番頭、観右衛門の依頼で芝神明大宮司、西東正継を助けることになった小籐次。社殿前の賽銭箱に若い男が剣で串刺しにされ、死んでいたという。大宮司は、小籐次に思いもかけない秘密を打ち明けたー。“酔いどれ”の名が江戸市中に広まり、小籐次の身には次々に新たな難題が降りかかる。ますます快調の決定版第5作!
何をしていましたか?ツイッターに投げられた質問に思い思いの答えを返す人たち。問いの全文が知らされるのは答えが出揃ってからー小説家のネムオが震災後に始めたそんな言葉遊びが、さまざまな場所にいるさまざまな男女の人生を丸くつないでゆく。この著者にしか書けない、静かだけれど力強い長編小説。
カメラマンの喜多川はある日、若い女性から余命短い母親の遺影用の写真を撮ってほしいと依頼される。母親はかつて喜多川に撮影されたことがあるというが、全く記憶にない。一体どんな因縁があったのかー(「遺影」)。50歳から22歳まで、フィルムを巻き戻すようにさかのぼって人生の哀歓を描き出す傑作。
慶応三年、万国博覧会に出席する徳川昭武の随行医として渡欧した三十一歳の医師・高松凌雲。パリの医学校で神聖な医学の精神を学んだ彼は、幕府瓦解後の日本で旧幕臣として箱館戦争に身を投じる。戦地の病院で、命を賭けて敵味方の区別なく傷病者の治療に当たった、義と博愛の人の生涯を感動的に描く歴史長篇。
海辺の遊園地、ジョイランド。彼女に振られたあの夏、大学生の僕はそこでバイトをしていた。そこで出会った仲間や大人たちとすごすうち、僕は幽霊屋敷で過去に殺人があったこと、遊園地で殺人を繰り返す殺人鬼がいることを知る。もう戻れない青春時代の痛みと美しさを描くキングの筆が冴え渡る!感涙必至の青春ミステリー。
『国史』(『大日本史』)が未完に終われば、水戸徳川家は天下の笑いもの。遅々として進まぬ編修(編集)に業を煮やした光圀公は、遅筆揃いの不届きな執筆者どもから直々に原稿を取り立てんものと、書物問屋の御隠居に身をやつし、御自ら原稿催促の旅に出た。お供を申しつけられたのは、水戸彰考館で国史の編纂に携わる、おなじみ覚さん介さん(実在)をはじめ、机(デスク)のお吟など名うての編修者。最初に訪れた下田では、目当ての学者の身辺で、なにやら不可解な陰謀が。爆笑必至、痛快時代エンターテインメント開幕!
死ぬ前に“二十分間”、自由な時間をもつことができた女性の意外な選択(「跨線橋の秋」)、生と死についての真理を人間に教えるか討論する動物たち(「バルル原理」)、夢の世界で自由に遊べる技術を身につけた男に訪れた、思いがけない出会い(「夢見王子」)など、現在から過去、未来、さらには“物語”の中まで、さまざまな世界を箱庭に見立てた連作短篇集。泣けて、笑えて、ゾッとする、「箱庭旅団」シリーズ第三弾。
めったにない幸運は、ある日突然やってきた。鮓売りの与七が、こはだの鮓を分けてくれたのである。作兵衛は、夢にまで見た鮓に小躍りするのだが…。江戸の浅草が舞台の表題作をはじめ、本所を舞台に職人の日常を描いた「たき火」「泥鰌」など、市井人情ものの単行本未収録短編小説に加え、幻のデビュー作「ママは知らなかったのよ」と、新選組関連作品の原点とも言える読み物を特別に収録した作品集。
谷根千中学に通う桜つぼみは、谷中墓地で青髭の男に襲われていたところを、女子高生探偵・花丸リンネに助けられる。それをきっかけに二人は“地獄変”を思わせる、連続少女誘拐事件に挑むことになるのだが、古書カフェ店員のヤエや転校生のローズ、さらに芥川龍之介の幽霊?が絡み…。根津神社、団子坂、夕焼けだんだんなど、情緒溢れる町で起こる事件を少女たちは解決できるか!?
岩手県久慈に生まれ、悪ガキとして育った三船久蔵は、仙台二中に進学し、柔道と出合った。小柄ながらも地元で敵なしの久蔵は、上京後、講道館に入門し稽古に励み、異例の速さで昇段、数多の強敵を倒していく。不断の鍛錬の末に辿り着いた「押さば回れ、引かば斜めに」の境地は、幾多の新技を創出し、やがて究極の神業「空気投」を生み出す。不世出の柔道家の生涯を描いた長編小説。
受験勉強に励んでいたアンヌは1966年6月のある日、新進気鋭の映画監督ジャン=リュック・ゴダールに手紙を送る。それが彼女の運命を変えてしまうとは、考えもせずにー。舞台は古き良きブルジョワ文化と若者の新しい文化がせめぎ合い、政治と芸術が混沌と共存していた時代。毛沢東思想の影響を受けていたゴダールは、アンヌを主役に『中国女』の撮影を始める。