2017年10月発売
武田小春は、十五年ぶりに再会したかつての親友・碓氷優佳とともに、予備校時代の仲良しグループが催した祝賀会に参加した。仲間の一人・湯村勝治が、ロボット開発事業で名誉ある賞を受賞したことを祝うためだった。出席者は恩師の真鍋宏典を筆頭に、主賓の湯村、湯村の妻の桜子を始め教え子が九名、総勢十名で宴は和やかに進行する。そんな中、出席者の一人・神山裕樹が突如ワインボトルで真鍋を殴り殺してしまう。旧友の蛮行に皆が動揺する中、優佳は神山の行動に“ある人物”の意志を感じ取る。小春が見守る中、優佳とその人物との息詰まる心理戦が始まった…。
脳疾患で入院中の老人・糸島末彦が失踪した。彼の年若い恋人・大谷深美から捜索を依頼された旅行作家・茶屋次郎は、糸島の訛を手掛かりに福岡に飛んだ。糸島は元警官で、定年目前に退職、その後地縁もない山口の岩国や京都を経て上京したことが判明する。なぜ彼は定年を待たず退職し、居を転々と移したのか?横槍を入れてくる県警を尻目に、やがて茶屋がその陰に、一人娘の痴漢被害があり、それが揉み消されたことを掴んだ時、博多で警官殺しが続発した!九州一の繁華街・中洲に消された謎を追う、傑作旅情推理。
出っ歯の透きっ歯で極端な縮れ毛ー。上杉家当主・景勝の前に現れた真田家の人質・弁丸(後の幸村)は大変な醜男であった。その上、美男の兄・源三郎(後の信之)では気に入らないだろうと言い放つ。景勝と跡目を争った義兄弟・三郎景虎が美男で名高かったからだ。手討ちになるかと思いきや、その明るい人柄で気難しい景勝に気に入られる。秀吉の出陣命令にも、時勢を読んだ的確な助言をし、武将としての厚い信頼も得る。上杉家中での存在感を増していく中、弁丸は父の名代として秀吉に謁見することになるが…。真田幸村を描いた「ぶさいく弁丸」他、自ら作った薬で家臣団との絆を強めた徳川家康、高貴な身分と偽った豊臣秀吉、北条早雲、武田信玄、上杉謙信、織田信長ら、天下に名を轟かせた七武将の知られざる“初陣”を鮮やかに描く!
大学の物理学研究室で発生した爆破事件の現場に急行していた警視庁捜査一課の入間祐希は、同じ管内で発生した大手電気通信企業の超高層ビル立て籠もり現場に行き先を変更した。犯人は元傭兵の斉東克也、手製の武器で武装し五名を惨殺していた。イルマも斉東の攻撃に遭い負傷するが、身柄確保に成功。しかし、イルマは同時に発生した二つの事件の関連を疑う。直後、科学系出版社の編集部で第二の爆発が。犯人に繋がる唯一の手掛かりは、爆発物の送り状の末尾に記された“ex”という文字のみ。“狼のような”イルマだけが犯人の足跡を嗅ぎ取り、追走を開始するが…。
戦争に翻弄されつつも、数奇な運命に導かれ、鮮やかに輝いた青春があったー。東京大空襲からわずか三週間後の昭和二十年四月一日。上京した十四歳の美代子は、新宿の看護婦養成所に入学した。「お国のために働きたい」と勉学に励む美代子だったが、激化する空襲に、現場はたちまち野戦病院と化していく。同じ頃、二十三歳の隆作は、通信兵として大陸を転戦していた。だが、壮絶な行軍の末、体調に異変を来してしまう…。
彼女は重力を無視するかのように、ふわりと僕の前に降り立ったー「屋上へ何をしに来たの?」それが白兎のマスクを被った君との、初めての出逢いだった…。ひりつく痛みと愛おしさが沁み渡る青春恋愛ミステリー。
“神戸発釜山行き、豪華客船レインボー号で行く魅惑のショートクルーズ”-五日間の休暇がとれた銀座第一消防署の消防士・神谷夏美と柳雅代は、贅沢な船旅を張り込んだ。全長三百メートル、十一階建ての威容に圧倒されるも、非常設備の不備や通路の狭さなどに不安を覚える。一方、船長の山野辺は、経営難の会社から、種子島にカジノを誘致する計画の第一人者・民自党の石倉代議士を接待し、新航路を獲得するよう厳命されていた。山野辺は、支援者のために洋上で花火を打ち上げたいという石倉の希望に添うべく種子島沖へ航路を変更。だが、数時間後、異音と共に排水が逆流し船が傾斜。その上、南洋にあった巨大台風が大きく進路を変え、後方に迫り始めていた…。21世紀の『ポセイドン・アドベンチャー』、ここに誕生!
ある日突然言葉を話せなくなった女。 すこしずつ視力を失っていく男。 女は失われた言葉を取り戻すため 古典ギリシャ語を習い始める。 ギリシャ語講師の男は 彼女の ”沈黙” に関心をよせていく。 ふたりの出会いと対話を通じて、 人間が失った本質とは何かを問いかける。 ★『菜食主義者』でアジア人作家として初めて英国のブッカー国際賞を受賞したハン・ガンの長編小説 ★「この本は、生きていくということに対する、私の最も明るい答え」--ハン・ガン
破天荒に生きた父に捧ぐ! 「金スマ」2時間スペシャルで大反響を呼んだ父と娘の感涙の物語 野沢直子さんの父親ほど破天荒で魅力溢れる人物がほかにいるでしょうか。 まったく奇抜なアイディアで事業を成功させたり、完全に失敗したりを繰り返し、愛人 をあちらこちらに持つ父。しかし家族のことは大切にしていました。その父が死に、通帳 には千円の残高しかなかったのでした。 父には一生背負わなければならなかったある経験がありました。それらの秘密や、家族 の大切な記憶が徐々にひもとかれていきます。野沢さんの祖父は、直木賞候補と目された 作家、陸直次郎。一家を支える三味線の師匠である祖母と、夫を信じ、愛人との駆け落ち も受け入れる母。叔父に声優の野沢那智氏。 事業を手掛けては失敗する父と、成功を信じて疑わない母。その間で、野沢さんは懸 命に「お笑いの道」を目指します。ところが母親の死後、韓国人の隠し子が現れ、最後の 章では、誰もが仰天するあらたな出会いが待っています。 「文藝芸人」(文春ムック)掲載時に、読者から「リリー・フランキー『東京タワー』 に匹敵する親子愛の名作」と絶賛された作品に、格闘家デビューした長女、野沢・真珠オ ークライヤーと激しく争った子育ての日々などを、大幅に加筆しました。懸命に生きる野 沢家の人々の姿は、可笑しくてせつなくていとおしい。全編笑いに包まれながら、涙をな くして読むことができない本書は、小説を越えた小説と言えるでしょう。野沢直子さんは やはり並の人間ではなかった!
東京青梅で発見された会社役員の他殺体は、奇妙なことに虚無僧姿だった。事件に遭遇した浅見光彦は、尺八名人の被害者が名曲「滝落之曲」だけは一度も吹かなかったことに疑問を抱く。かつて暮らしていた修善寺由縁の曲をなぜ?現地へ向かった浅見は、事件当日修善寺でも虚無僧が目撃されていたことを知る。青梅の殺人との関連は?やがて被害者の残した謎の言葉が浮上する!
ピアノ調律師の一藤麻衣子には、秘密があった。愛媛の山奥にある七富利村で過ごした少女時代、村がダムに沈む直前の村長であった伯父日出夫の無惨な死体を、麻衣子は目撃したのだ。その肩には、くっきりと十字の印が焼きついていた…。それは村人が噂する隠れキリシタンの祟りなのか?深い水底に沈んだ村から二転三転して真実が浮かび上がる、戦慄のミステリ。
土地取引に絡んで辣腕を揮う弁護士西城昌一は、廃園と土地売却を目論む幼稚園長の代理人として、存続運動を行なう教師や父母と対することに。だが、相手側弁護士となったのは、かつての恋人藤枝みずえだった。立ちはだかるみずえの前に廃園計画は暗礁に。そんな折、過去に西城が担当し無罪を勝ち取った事件を追う刑事が姿を消すー。西城がひた隠す真相とは?
“アイドルを嫁にしたい”役場の杉井は、村の権力者巴山を丸め込み、自ら育てたアイドルをデビューさせるため、のど自慢大会を開催した。だが大会中、巴山が死体で発見された!事故か殺人か。捜査が進む中、別件で巴山を訪ねてきた東京の刑事は“殺し屋”の犯行を疑う。なぜ殺し屋が村に!?そこには村が隠し続けた禁忌が…雪深き山村で起こる前代未聞の大事件!
「雪の形をどうしても確かめたくー」下総古河藩の物書見習・小松尚七は、学問への情熱を買われ御目見以下の身分から藩主の若君の御学問相手となった。尚七を取り立てた重臣・鷹見忠常とともに嬉々として蘭学者たちと交流し、様々な雪の結晶を記録していく尚七。だが、やがて忠常が蘭学を政に利用していることに気付き…。蘭学を通して尚七が見た世界とはー。
須崎槇之輔は、元は信州須崎藩の世継ぎだったが、父の起こした刃傷沙汰の咎により、大和鴻上藩に「預」となってしまった。不遇をかこつこと五年。槇之輔は冷水を買う銭も惜しみ、趣味の狩猟と料理で無聊を慰めていた。そんな折、父の仇・城島家に再興の目が出ると、須崎家旧臣の一部が「城島、討つべし」と息巻き始めた!悩める若様に、御家再興の途はあるのか?
お園が、江戸に帰ってきた。だがその矢先、お園を待っていたのは、店の危機だった。近所にできた京料理屋“山源”に、留守にしている間に客を根こそぎとられてしまったのだ。しかも“山源”の板長・勘市は、「お客の心を癒すための料理」というお園の考えを強く否定した。だが、信念を曲げないお園は、お客と自らをも救う一品を作り出す。優しさ溢れる人情料理帖。
島原の乱の生き残りで、天草四郎の力を継いだ“聖騎士”寅太郎たち。切支丹の世を目指す中、弾圧の首魁天海を打ち倒したが、それでも幕府の磐石な体制は揺るがなかった。そんな中で出会った、軍学者由井正雪。正雪は世の中から零れた浪人を纏め、新しい世を作るというのだがー。力なき弱者は、強者に消されゆくしかないのか。あくなき希望を繋ぐ、大河歴史伝奇。