2017年6月8日発売
ギヴ。それがその犬の名だ。彼は檻を食い破り、傷だらけで、たったひとり山道を歩いていた。彼はどこから来たのか。何を見てきたのか…。この世界の罪と悲しみに立ち向かった男たち女たちと、そこに静かに寄り添っていた気高い犬の物語。『音もなく少女は』『神は銃弾』の名匠が犬への愛をこめて描く唯一無二の長編小説。
1980年代の大阪。高校卒業後、どこにも就職できなかった大西秀明は、担任教師の口利きで、舞台進行見習いとして「なんば花月」に出入りしていた。幼い頃から何をやっても失敗ばかりの大西は、吉本でもとんでもないヘマばかり。そんな大西が、人気絶頂の明石家さんまと出会い、孤独や劣等感を抱えながら芸人として成長していく。
夜の街でやんちゃが少し過ぎた「俺」は、裏社会の大物である祖父ちゃんにお灸を据えられることに。半ば拉致状態で連れて行かれたのは、マンション「リバーサイドシャトウ」。そこは高額の家賃を払って規約を守れば、どんな奴でも入居可能。日本人はもちろん、世界各国から犯罪者たちが集まる無法地帯だった。強引に管理人助手をさせられるハメになった俺の目に飛びこんできたのは手榴弾を握りしめた人間の片腕!赴任早々、手荒い洗礼を受けた俺はすっかり意気消沈。任期は一年だが、それまでもつのか、この命!?
京で隆盛を極める吉岡一門を我独りにて完全に滅ぼす、ついてはその前に女を抱きたい。あきれたことに武蔵はそう口走るのだったー。槍術の達人・宝蔵院胤栄、そして天下の剣豪・柳生石舟斎とあいまみえながら見据えるのは佐々木小次郎の姿。ときに憎しみに近い妬心を、ときに身を捩りたくなるような懐かしさを覚えさせる男。いざ、決戦のとき。衝撃と感涙のクライマックスに向けて物語は猛然と突き進む。
その夜、カメラマン志望の大学生・木下英志は夜景を撮っていた。人気のない公園で鈍い音を聞きつけカメラを向けると、そこには一人の女性がいた。彼女は屈強な男たちを叩きのめすと、車椅子の老人を伴い車へと消えた…。後日、改めて画像を見た英志は気づく。-似ている。横顔が、あの子に。カメラが捉えた不可解な事件に隠された哀しい過去とは?
「すごい二人」がいた!蒲柳の質ながら常に時代の先端を行く幸之助を、抜群の行動力で支えた義弟・歳男。関東大震災、昭和恐慌、戦争、そしてGHQによるいわれなき財閥指定…、幾度もの困難を乗り越えてパナソニックと三洋電機を創った二人の人生を直木賞作家が描く感動のノンフィクション・ノベル。
銀鉱で成り上がったメキシコ生まれの主人と従者の出立から始まる物語はやがて、黒人の奏でるギター、街頭を轟かす謝肉祭の喧噪、ヴィヴァルディのオペラ、ルイ・アームストロングのトランペットへと、変幻するテンポのうちに秩序は多元的に錯綜していく“幻想交響曲”で幕を下ろす。擬古的な文体で周密な作品空間を描き出し、響きわたる雑多な楽音で読者を圧倒する傑作。
それはある日、突然はじまった。癌だった。-腎細胞癌。大家族を夢見た父ヒーロー(ヘルヴィッヒ)・ヴィーラント。家族は増え、会社も経営し、人生は順調かに思えた。ところが、病をきっかけに、つぎつぎとあらわになる家族のほころび。5人の子供と孫たちが抱える悩みや問題の数々。できちゃった結婚をする息子、外国人と付き合う娘、借金をする息子、庶子を生んだ娘と孫娘。…欠点だらけの家族。不治の病のヒーローは、病と、そして崩壊しそうな家族とどう向き合うのか。父が家族に残した最後の贈り物とは?家族とは何なのか、それぞれの視点からユーモアたっぷりに語られる、心に響く「ある家族の物語」。