2017年8月29日発売
愛する人との内縁関係を貫いた曾祖母、族のヘツドの子どもを16歳で産んだ祖母、理想の家庭像に邁進しすぎる母という、強烈な女系家族に育つ女子高生の若菜は、自分のキャラのなさに悩んでいた。文学少女キャラの友人・高橋さんと家出をしてみたり、彼女の初恋や家族の恋への助太刀を決め、名脇役を目指してみたり。はたして若菜は自分のキャラと、皆の幸せを掴めるか。かしまし迷走青春劇。
国を追われた二匹のアマガエルは、辛い放浪の末に夢の楽園にたどり着く。その国は「三戒」と呼ばれる戒律と、「謝りソング」という奇妙な歌によって守られていた。だが、南の沼に棲む凶暴なウシガエルの魔の手が迫り、楽園の本当の姿が明らかになる……。単行本刊行後、物語の内容を思わせる出来事が現実に起こり、一部では「予言書」とも言われた現代の寓話にして、国家の意味を問う警世の書。
天府城に拠り国を支配する強大な幕府、女人にだけ帝位継承が許された天帝家。二つの巨大な勢力の狭間で揺れる都市・天府の片隅には、人知を超えた技術の結晶、美しき女の姿をした“伊武”が存在していた!天帝家を揺るがす秘密と、伊武誕生の謎。二つの歯車が回り始め、物語は未曾有の結末へと走りだすー。驚異的な想像力で築き上げられたSF伝奇小説の新たな歴史的傑作、ここに開幕!
ベテラン警官が拳銃を奪われ、両腕を切られた姿で発見された。遺体損壊の謎を追い、特別捜査班の岬怜司は、似顔絵をメモ代わりにする里中宏美とコンビを組む。連続する銃撃事件、現場に残された不可解な数字。浮上する過去の未解決事件と闇に消えた男とは…。つながる点と線、迷宮の核心、そしてクライマックスは東京駅へ!緻密な伏線が冴える、本格捜査ミステリー。
グループホームの老人たちがクイズ大会に参加した。珍解答を期待する主催者を手玉に取る面々。覚醒した彼らは海外旅行に出かけ、合コンに妖しく浮き立つ。一方、世間では団塊アゲイン党なる政党が勃興した。同世代の反体制派が闘争を開始、社会に衝撃が走る。これは悪夢か、現実か。日本を守らんと義勇軍を結成したのは…。超高齢社会日本を諷刺するハードコア老人小説。
パトカーに追われた二人組の強盗、四人組の宝石強奪犯、自動車会社社長を襲った男、前総理を襲撃した四人のテロリスト…。たった一本の杖で、次々と暴漢を撃退していく謎の男「天草四郎」。島原キリシタン一揆の英雄と同じ名を名乗る男は、一躍、世間の注目を浴びる。「天草四郎」とは、何者なのか。そして、その目的は?十津川警部が現代に甦った「英雄」の秘密に挑む、長編ミステリー。
恋人の家に転がり込んできたのは、とっくの昔に離婚したはずの彼の元妻だった。ひとつの場所にとどまることのできない女の存在が二人の関係を変える(「夜を想う人」)。一度は別れを選び、それぞれが新しい伴侶を見つけ、子供も授かった元夫婦の約束とは(「二人のプール」)。裏切りに満ちたこの世界で、信じられるのは私だけ?平仮で幸福な愛の“嘘”に気づいてしまった男女を繊細な筆致で描く六篇。
東京オリンピックの後、急激に治安が悪化した首都。大量の難民の発生と過激派の台頭とともに多発するテロ計画を察知し、未然に鎮圧すべく、総理直轄・女性6名の特殊捜査班、通称「R.E.D.」が警察庁に設立された。謎のテロリスト“勿忘草”を追う彼女たちは、副総理と警視総監が絡む政官業巨大疑獄の影を捉える。元警察庁キャリアのみが描けるリアル。警察小説の新機軸がここに誕生。
ローマ大学に留学中の玄須聖人は、教授の依頼でヴァチカン秘密記録保管所を訪れ、企画展に向けて幻の資料を探すことに。その頃、ドイツとオーストリアで魔女狩りを彷彿とさせる猟奇殺人が起こる。悪魔信仰者の存在がちらつくなか、疑惑の目は教皇庁にも向けられる。図書館の膨大な蔵書に謎を解く鍵があると調べ始める聖人と神父のマリク。だが、事件の真相は意外なところに…。
北海道東川町のお屋敷で営まれる十九世紀英国式の生活。この特別な毎日にも終わりが近づく中、メイドのアイリーンこと派遣家政婦の鈴佳は、奥様が望む舞踏会の実現に奔走する。しかしそれは思いがけず、町ぐるみの盛大な催しへ。頼みの綱の執事のユーリさんはどこか様子が変でー。庭の侵入者、秘密のダンス、奥様が遺した最後の謎。お屋敷の歯車達が輝かす「本物」の時間の締めくくり。
イギリス郊外に静かに佇む古い貴族屋敷に、両親と死別し身を寄せている眉目秀麗な兄と妹。物語の語り手である若い女「私」は二人の伯父に家庭教師として雇われた。私は兄妹を悪の世界に引きずりこもうとする幽霊を目撃するのだが、幽霊はほかの誰にも見られることがない。本当に幽霊は存在するのか?私こそ幽霊なのではないのか?精緻で耽美な謎が謎を呼ぶ、現代のホラー小説の先駆的な名著。Star Classics名作新訳コレクション。
2075年、環境破壊のために沿岸地域が水没しつつあるアメリカ。化石燃料の使用を全面禁止する法案に反発した南部三州が独立を宣言、合衆国は内戦に陥った。家族の大黒柱をテロで失った南部の貧しい一家の娘サラットは、難民キャンプへ避難する。北部へのゲリラ戦を繰り返す武装組織に接近する兄。サラットに自爆テロ攻撃をそそのかす謎の男。苛酷な運命に導かれる彼女はどこへ向かうのかー。
北部民兵による難民キャンプでの大虐殺で母親を失った傷心の一家は、故郷へと帰還するが、サラットの心だけは内戦の前線地帯でわだかまっていた。自爆テロか、弛緩した生か。しかし、ある日突然彼女はテロ容疑で戦犯収容所に拘留されてしまう。地獄のような拷問の日々。解放されるも、人格が崩壊したサラットは、ある人物のもとを訪れるのだったー。驚異の新人による問題作が緊急上陸!
魚釣島に日章旗を立てた日本人を中国人民解放軍が拘束。それを機に海上自衛隊護衛艦と中国海軍が交戦状態に入った。在日アメリカ軍もこれに反応、沖縄を舞台に、ほぼ半年にわたって戦争状態が継続することとなった。米軍によって組織された民間の自警軍ー琉球義勇軍に参加した沖縄生まれ沖縄育ちの渋谷賢雄は、自らの小隊を率い、血で血を洗う激戦を生き抜く。そして、突然の終戦ー。東京に居を移した賢雄の周辺を、不審な輩が跋扈し始める。暗躍する中国の非合法工作員“紙の虎”の正体と、その作戦実行部隊“紙の風”の目的はー?やがて賢雄のもとに、かつての個性的な部下たちが、再び集う。さらなる激しい戦いの火蓋が切られたー。国際謀略アクション小説、新たな傑作の誕生。
鬼の義重・坂東太郎と恐れられた荒武者だったが、今は子・佐竹義宣に実権を譲り、隠居した身だ。そんななか、天下統一を成した豊臣秀吉より命が下る。「常陸を平定せよ」五百年の歴史を持つ佐竹家の誰もがなし得なかった夢を我がなし得る。義重は年老いた身でありながら早速攻略に取りかかる。しかし、実権を握る子・義宣に報せが入り…。父祖伝来の重み、在りし日への思い、老いへの恐怖、次世代へと委ねるもの。祖・源義光より現代まで900年続く佐竹の家名はいかにして護られたのかー。
アジア北方の草原に生まれたテムジン(チンギス・ハン)。族長の父を亡くし、一族は滅亡の淵にまで追いやられる。中世的身分社会の冷酷さに懊悩するテムジンを救ったのは、冒険心と己の才能によって生き抜く多国籍の人々だった。「人間に差別なし、地上に国境なし」。獲得した思想を信念とし、テムジンは遊牧民の皇帝に就く。
中華の大国を破り、中東のホラズム帝国を制して、ついにユーラシアに覇を唱えたチンギス・ハン。なぜただの征服者でなく、世界の創造者に飛躍できたのか。脱・部族階級社会と絶対王制を支えた策を解き明かす。「天尽き地果てるとも、わが志は止まぬ。時移り、人代わるとも、この想を継げ」の最期の言葉に至る道。