2017年発売
レストランを手伝うダーシーは、グラスを割って指にけがをする。居合わせた会社経営者のローガンに優しく気遣われ、無我夢中で彼の上等なシャツにすがって泣きだした。母親を亡くしたばかりなのに、父親の再婚話が持ち上がり、仕事中にもかかわらず取り乱してしまったのだ。悩んだ末、ダーシーは後日、新しいシャツを彼に送り届けた。すると血相を変えたローガンが店に現れ、若い娘が見知らぬ男に高価なシャツを贈るものではないと叱り飛ばした。ダーシーはなぜ怒られるのかもわからず、唇をわななかせた。
ロサンゼルスで成功を収めたマギーだったが、何かを逃れるように田舎の家へ移り住んだ。そこで知り合った、逞しい隣人クリフに守られるようにして、慰められる日々が過ぎた。だが、彼女は失った家族のことを忘れられず、そのせいで臆病になり、彼の愛情を受け入れられずにいた。ある日、荒れ果てた庭から白骨死体が掘り起こされる。クリフの亡き母親が、遺体の男と関係があったと知って、マギーの心にじわりとクリフへの不信感が芽生え…。
訪れた城で、リーはショーヴィニー伯爵ことジルと再会する。 6年前の夏、16歳のリーは端麗な美貌のジルに幼すぎる恋をした。 だが純粋な想いは、いつでもちょっとしたことで汚される。 ふたりに嫉妬した友人が、リーの字体をまねて、 潔癖なジルにいかがわしいラブレターを出したのだーー。 今だにリーが書いたと信じる伯爵は、蔑みの色を浮かべ、脅した。 君は僕と結婚するんだ。さもないとあのコピーをばらまくと。 さらに、これは愛ではない、単なる欲望だともつきつけられて、 古傷をかきむしられたリーの心は、声にならない悲鳴を発した。
チューリップの庭園と、息をのむような図書室を備える古城・ベルジュ城。 利き蜜師・仙道と弟子のまゆは、利き蜜師協会からの、ある命(めい)を受け城を訪れた。 敷地に入った瞬間、仙道はそこに働く特殊な力を感じる。 仙道たちを迎えた城主シェーラは若く美麗な女主人だったが、その気配はあまりに弱々しい。 やがて仙道とまゆはこの城で、利き蜜師の真実を知ることになり……。 迫力のスケールで描かれる利き蜜師の物語・第二話。 「続きが気になる!」熱い支持を得ていよいよ登場です! 序章:旅立ち 一章 霧の古城 二章 図書室の魔女 三章 夜の会遇 四章 呪われた城 五章 閉ざされた時の部屋 六章 月のワルツ 七章 炎の花 八章 明けの空 終章 帰郷
現代人の孤独という同時代的な問題を投げかけるチベットを代表する作家・ツェラン・トンドゥプの初翻訳小説集。社会や宗教、政治の腐敗に対する風刺をテーマに、変わりゆく世相や、人びとの抱える現実や苦悩をリアリスティックな筆致で描き出す。 チベットの人びとだけでなく、英語、フランス語、ドイツ語などにも翻訳され、世界各地で読まれている。およそ30年にわたる作家活動の中で生み出された数多くの作品の中から、珠玉の短編15篇、中編2篇を掲載。 地獄堕ち ツェチュ河は密かに微笑む 黒い疾風(はやて) 月の話 世の習い ラロ 復讐 兄弟 美僧 一回の真言(マニ) D村騒動記 河曲馬 鼻輪 両親の介護をした最後の人 あるエイズ・ボランティアの手記 ブムキャプ 黒狐の谷 訳者解説
ぼくはパパに育てられた。パリで生まれたぼくは、ママを失った後、パパと二人で生きてきた。大人になったぼくは、恋人と共に、パパたちの物語と自らの未来に向き合っていく。フランスで子育てをする著者が描く、家族と愛をめぐる運命的な長編小説。
悪名高い実業家添田が、白馬にまたがった黒い鎧の騎士に剣で殺されるという謎の事件が発生。しかも愛人今日子の目の前で!次に騎士が現れたのは、あるパーティ会場。製薬会社会長の黒川の心臓を槍でひと突きにした。騎士の正体とは?何が目的なのか?!現場に居合わせた鈴本芳子は、被害者の娘黒川さつきに相談を受け、おなじみ“第九号棟の仲間たち”と「黒い騎士事件」に迫る!
老夫婦が住んでいた空き家で、男女の白骨死体が発見された。行方不明になっていた夫婦の銀行口座からは二千万円が引き出されていることが判明。捜査を進めると、他に高齢者夫婦が三組、行方不明になっていることもわかった。立て続けに起った高齢者失踪事件。しかし、上層部の消極的な姿勢が捜査の邪魔をして…。葛木父子の所轄魂に火がついたとき、衝撃の真相が明らかになる!本庁が事件を潰す?リアル警察小説!!「所轄魂」シリーズ第2弾!
巣鴨の路上でIT企業社長が刺し殺された。目撃者も凶器も発見できず、剣持直樹たち極秘捜査班に白羽の矢が立つ。社長は粉飾決算を繰り返したが、会社は倒産。その前に、起業家仲間、投資会社を始め企業舎弟や闇金業者からも金を借りまくり、個人資産五億円を密かに交際中の元タレントに預けていた。金の臭いを嗅ぎつけたハイエナ達が暗躍する実態が次々と明るみに。長篇サスペンス。
宝飾品職人のイーザは、姉夫婦が引き起こした宝石盗難事件に巻き込まれ、新婚の夫に別れを告げる間もなく逃亡を余儀なくされた。事情を知らぬまま残された夫のヴィクターは事件の容疑者として拷問され、また妻に棄てられた傷心から疑い深い人間になってしまう。それから十年後、友人の探偵社でイーザらしき女性の消息をつかんだ彼はスコットランドにおもむき、ついに妻と再会する。互いへの強い想いは戻りながらも疑心は消えず、しかもイーザには大きな秘密があった…新展開!公爵の探偵団シリーズ・第二弾!
「その秘密の場では、それはすでに場でさえないのだが、矛盾が矛盾でなくなり、同時に、図というものが、なじみぶかい触感とともに消えうせる。人間の言葉がえがける世界は、あとかたもなく消えうせ、あるのはただ、無言にして有無をいわせぬ、色彩のない数式、不動の行列力学の抽象的な壮大さで、その想像をこえる美しさは、あなたの目に見抜かれるのをずっと前から待ちつづけていたのだ。」 1920年代、それまで不動のものとされてきた古典物理学の理論と相反する現象がつぎつぎと見つかり、盛んな論争が展開されていた。そこに「不確定性原理」をもって登場した若きハイゼンベルクは、量子力学の確立への功績でノーベル物理学賞を受ける。「あなたは何気なくポケットに両手をつっこみ、色彩のない空を前にして、無用にして感動を禁じえないほどの若さを保ったまま、可能と現実のはざまに立っていた。」しかし、その後の現実世界は、ナチスの台頭、戦争、アメリカによる原爆投下にむかって進んでいった。 量子力学に魅せられたゴンクール賞作家が、過去と現在を往還しながら、言葉にするのが困難な世界のうちに、これまでにないハイゼンベルクの姿を幻視する精密な小説。 位置 速度 エネルギー 時間 著者覚書 訳者あとがき 本書の人物
「一度の過ちもせずに、君は人生を終えられると思う?」女の後をつける男、罪の快楽、苦しみを交換する人々、妖怪の村に迷い込んだ男、首つりロープのたれる部屋で飛び跳ねる三つのボール、無情な決断を迫られる軍人、小説のために、身近な女性の死を完全に忘れ原稿を書き上げてしまった作家ー。いま世界中で翻訳される作家の、多彩な魅力が溢れ出す13の「生」の物語。
東京・丸の内の路上に停車中の自動車内に、謎の首切断死体が発見されたー。広大な屋敷に蠢くがま蛙、久恋の女秘書、怪奇な幽霊、いわくの美女、蟇屋敷主人…。探偵作家と刑事は横浜、鎌倉、埼玉奥地、大阪へと犯人を追う。大胆なトリック、秀逸なプロット、気宇壮大なスケール。スリリングに展開する甲賀三郎の最高傑作、初の文庫化!KAWADEノスタルジック探偵・怪奇・幻想シリーズ。
女性は人類に入らないとされていた十九世紀半ばのヨーロッパで、虐げられた女性と労働者の連帯を求めて闘った革命家フローラ・トリスタン。芸術の再生を夢見て、家庭を捨てヨーロッパを捨ててひとり逆境に身をおいた。フローラの孫ゴーギャン。自由への道を求めつづけた二人の反逆者の波瀾の生涯を、異なる時空をみごとにつなぎながら壮大な物語として描いたノーベル賞作家の傑作。
数々の殺人を犯しながらも逃げ切ってきた自由人、トム・リプリー。悠々自適の生活を送る彼の前に、億万長者の家出息子フランクが現れる。少年は父親殺しの罪を犯していた。トムは自分を慕う少年とともにベルリンへと旅立つが、その地で誘拐事件に巻きこまれる…男と少年の奇妙な絆を美しく描き切る、リプリー第四の物語。改訳新版。
王、商人、僧侶、騎士、貧者、貞淑な人妻に奔放な貴婦人。多彩な人物たちが繰り広げる物語を語り続けたこの宴、そろそろお開きかと存じます…世界文学史上不滅の古典、全訳決定版、完結。