2018年3月発売
「お前は伴走者だ。俺の目だ」『夏・マラソン編』「速いが勝てない」と言われ続けた淡島は伴走者として、勝利に貪欲で傲慢な視覚障害者ランナーの内田と組むことにー。『冬・スキー編』優秀な営業マンの涼介は、会社の方針で全盲の天才スキーヤーの女子高生・晴の伴走者をするよう命じられるが…。自分ではなく他人のために勝利を目指す。熱くてひたむきな戦いを描く、新しいスポーツ小説!
「この世で一番の兵を探している」捷足の達人・道鬼斎は、天下に静謐をもたらす男を探し諸国をめぐる。勇敢な猛将も、臆病な天下人も、愚直な武士もいた。桶狭間の戦いから大坂の陣まで、戦国の六大決戦を渡り歩いた道鬼斎が辿り着く、“まことの兵”とは。
11月初旬のある日、渡辺探偵事務所の沢崎のもとを望月皓一と名乗る紳士が訪れた。消費者金融で支店長を務める彼は、融資が内定している赤坂の料亭の女将の身辺調査を依頼し、内々のことなのでけっして会社や自宅へは連絡しないようにと言い残し去っていった。沢崎が調べると女将は六月に癌で亡くなっていた。顔立ちのよく似た妹が跡を継いでいるというが、調査の対象は女将なのか、それとも妹か?しかし、当の依頼人が忽然と姿を消し、いつしか沢崎は金融絡みの事件の渦中に。切れのいい文章と機知にとんだ会話。時代がどれだけ変わろうと、この男だけは変わらない。14年もの歳月を費やして遂に完成した、チャンドラーの『長いお別れ』に比肩する渾身の一作。
人に不用意に近づきすぎないことを信条にしていた大学一年の春、僕は秋好寿乃に出会った。空気の読めない発言を連発し、周囲から浮いていて、けれど誰よりも純粋だった彼女。秋好の理想と情熱に感化され、僕たちは二人で「モアイ」という秘密結社を結成した。それから3年。あのとき将来の夢を語り合った秋好はもういない。僕の心には、彼女がついた嘘が棘のように刺さっていた。
世界的なグルメガイドの元「格付け人」、牧村紗英。「絶対味覚」を持つ彼女は、独立して会社を立ち上げ、人気店を覆面調査し、「星をつける」仕事をしている。彼女の判断は、企業による対象店への投資を左右する重要なものだ。今回、彼女が調査するのは、カリスマ料理研究家、須賀ユウコが手がけるカジュアルフレンチ、「ユウコの厨房」。プレミア価格がついている幻の日本酒の蔵元、「酒蔵烏鵲」。高級鮨を手軽な値段で味わえると人気の大箱鮨店、「すし海将」。華やかな成功の陰にある嘘、そしてそこには常にある男の存在が…?
司書として図書館で働く諒子は、一度だけ無自覚に娘を手を上げてしまい離婚、その後悔を引きずったまま孤独な毎日を過ごしていた。図書館へ頻繁に通ってくる中学生の女の子に自分の娘を重ね合わせていたが、少女は突然失踪してしまう。一方、専業主婦の美咲は、3歳の娘の育児に苦労し、夫ともうまく行かず疲弊していた。ある日、娘が幼稚園から何者かに連れ去られてしまい…。接点のないふたりの女性が交錯するとき、胸に秘めていたそれぞれの本音があふれ出していくー。ふたりの行く末は絶望か、希望かー切なき母娘物語。
創立十五周年記念公演を目前とした名門バレエ団に公演中止を要求する脅迫状が届いた。海外の要人が鑑賞を予定していることが判明し、海埜警部補が専従班として警護に当たることに。芸術知識と推理力で数々の事件を解決してきた甥の“芸術探偵”瞬一郎と通し稽古に向かうと、演目の『ドン・キホーテ』は危険なシーンばかり。万全の警備態勢を整えるが、海埜はある絶対的な不安の原因に気づいてしまったー。緊張の中、幕があがる!(「ドンキホーテ・アラベスク」)舞台で渦巻く疑念があなたを幻惑する書き下ろしミステリ中篇集。
ニック・ロッシは写真が掲載されるだけで女性誌を売り切れにするセクシーセレブ。フェイス・マーフィにとっても、親友の兄というだけでなく憧れの人だった。そんな彼と夢の一夜を過ごし、不運続きの人生は終わったと思った彼女だったが、出張先のイタリア・シエナで大事件に巻き込まれる。一方フェイスを追って、自分のルーツでもあるシエナへやって来たニックは、街をあげての祝祭の中、帰属意識を実感し、新たな人生を考え始める。大人気作家のイタリアへの愛着にあふれたラブ・サスペンス!
村の安定のために、新しい村づくりを始めた村長・火楽。たちまちケンタウロスやミノタウロスなどの異種族移民が現れて…。みるみるうちに農村『大樹の村』の周辺は賑やかさを増していく!!異世界を『万能農具』で切り拓く、ほのぼのスローライフ・ファンタジー!!
何者かの声に誘われて入った洞窟で遺跡を発見した、ホルム伯カムールの娘ウェンドリン。新たな遺跡の噂を聞いた冒険者たちでホルムの町は賑わう一方、遺跡では彼らが次々と魔物に襲われて魔物化してしまう事態が続発していた。旺盛な知識欲で遺跡を研究する女神官テレージャは、遺跡に棲む太古の皇帝の存在と、被害拡大を防ぐには皇帝を倒す必要があることを見抜き、探索監督のため直々に姿を現した大公の息子テオルの動きにも警戒を寄せる。ウェンドリンはテレージャや幼馴染の少女ネル、彼女に想いを寄せる若き騎士アルソンとともに、皇帝討伐のため再び洞窟の奥へと足を踏み入れた。魔物たちの攻撃をかいくぐり、ついに皇帝に対峙した一行。熾烈を極める争いののち、再び聞こえる謎の声。いったい何者なのか?不可解な動きを見せるテオルの真意とは?
人材派遣会社に勤める田町譲。平凡な男のブラックな日常生活を勇気づけるのは、幼い頃に憧れていた野球選手と、長らく会っていない元同級生の日記だったー。第30回小説すばる新人賞受賞作。
すべてはあの夏に始まった。明彦の通うプールでは不可思議な現象がたびたび起こっていた。水の中に何かいる。ある日、一人の青年がプールの前にたたずんでいた。なんとその青年は幽霊と話ができるらしくー。六道の世界を周回する山手線、真冬の高校で起きた行方不明事件、取り残された迷子の少年霊。日常に起きる怪異をめぐる短編集!
奇妙なこどもたち(ピキューリア)の魂を喰らおうとする非情な敵・コールの魔の手から逃れたジェイコブとエマ。満身創痍のなか、コールに連れ去られた仲間とミス・ペレグリンを追跡して、敵の要塞のあるタイムループへ潜入する。しかしそこで二人が目にしたものは、この世のものとは思えない荒廃したピキューリアの巣窟だった。
再び捕らわれの身となったジェイコブとエマは、コールの最後の陰謀を知り愕然とする。コールは、古いタイムループに存在する「魂の図書館」を探し出し、保管されている古代の強力なピキューリアの魂を手に入れようとしていたのだ。世界の支配を目論むコールと、ジェイコブとエマの最終決戦がついに始まる。そして二人の未来の行方は?
嵐の夜、米大統領を乗せた専用ヘリコプター“マリーンワン”が、ホワイトハウスからキャンプ・デーヴィッドへ向かう途中で墜落した。フランス製のヘリの欠陥かと全米世論が沸くなか、海兵隊のパイロットだった弁護士マイクは、製造会社の弁護を引き受けることに。何者かに脅かされ命を狙われながらも真相を求めていくと、そこには驚くべき事実があったー。かつて米国海軍のトップガンとして活躍、後に弁護士に転身した異色のベストセラー作家が遺した傑作法廷ドラマが、日本初上陸。虚構か現実か?怒涛の終章まで、ページをめくる手が止まらない!
時は戦国、下剋上の世。京都・相国寺近くにある三好家の屋敷に、その男はいた。得体の知れぬ出自でありながら、茶の湯に通じ、右筆として仕える野心家である。気に食わぬ者は容赦なく首を刎ね、殺害した女を姦通し、権謀術数を駆使して戦国大名へと成り上がっていく。織田信長ですら畏れた稀代の梟雄・松永弾正久秀を突き動かすものは、野望かそれとも…!?「悪とは何か」を問う新感覚時代小説。