2018年3月29日発売
函館から津軽海峡をフェリーで渡る67歳の野原ゆかりは、元ムード歌謡の歌手。借金返済のため、営業の旅に復帰したのだ。その船内で知り合った12歳の家出少女森川縁が、なぜかゆかりの後をついて来る。旅先で起きるトラブルや55歳の歳の差を乗り越えて、いつしかふたりは固い絆で結ばれていく。そしてたどり着いた最後の会場、東京。そこにはゆかりの悲しい過去が刻まれていた…。
諏訪野良太は、純正会医科大学附属病院の研修医。初期臨床研修中で、内科、外科、小児科、産婦人科など、様々な科を回っている。ある夜、睡眠薬を大量にのんだ女性が救急搬送されてきた。その腕には、別れた夫の名前が火傷で刻まれていた。離婚して以来、睡眠薬の過剰摂取を繰り返しているという。しかし良太は、女性の態度に違和感を覚える。彼女はなぜ、毎月5日に退院できるよう入院するのか…。(「彼女が瞳を閉じる理由」)初期の胃がんの内視鏡手術を拒否する老人、循環器内科に入院中の我が侭な女優…。驚くほど個性に満ちた患者たちとその心の謎を、新米医師、良太はどう解き明かすのか。ふと気づけば泣いていた。連作医療ミステリ。
心惹かれていた同級生との死別により、幼くして死への想いに取り憑かれ、一方で、性的マイノリティとして、内なる疎外感に苛まれていた迎梅。女子高での密やかな恋、そして運命を暗転させる「災難」の果てに、日本に半ば逃亡のような気持ちで渡った彼女の葛藤と孤独を描く、若き台湾人作家の鮮烈なデビュー作。第60回群像新人文学賞優秀作。
思い起こされる幼年時代、患者の最期を看取る医療と作家業の両立の無理からの発病…その日その日を生きのびるために、畔を歩き、四股を踏む。たぶん、答えはあらかじめからだのなかに用意されていたのだろう。南木物語の終章。信州の総合病院を定年退職した。同時代の男たちとイワナをつかみ獲り、小屋を造って集い、語り、そして燃す。生死のあわいをおだやかに見つめる連作短篇集ー医師として生死を誠実に見守りつづけた著者にしか描きえぬ、幽明境を異にした者たちとの饗宴。充実の最新作品集。
インカ文明を専門とする考古学者ヘンリーはペルーの発掘地で発見された古いミイラを大学のラボに持ち込んだ。ミイラの首には黄金の十字架。宣教師のミイラなのか?不審に思ったヘンリーはミイラをCTにかけるのだがー。その頃、発掘現場で新たな発見があった。神殿の地下に隠された扉が見つかったのだ。ヘンリーの甥サムとチームのメンバーはその秘密部屋の調査を進めるが、神殿が崩落して閉じ込められてしまう。そして地下から脱出すべく奮闘するサムたちの前に驚くべき事実が姿を見せる。
サムとメンバーたちは秘密部屋の奥に洞窟の入口を発見する。奥へ奥へと探索を進める彼らはやがて巨大なネクロポリスの只中にいた。誰がこんなものを?なんのために?背後には奇っ怪な生き物の影が迫る。一方、法医学者ジョーンの協力を得たヘンリーは、ミイラに神秘的な能力を持つ未知の物質を発見する。そしてこの物質を狙う謎の集団がヘンリーたちを襲う!この物質はいったい?集団の目的は?インカは何を隠し持っているのか?大胆な想像力が歴史と戯れるアドベンチャー巨編!
ロサンゼルス空港で全世界の人口半数以上が死に至る謎のウイルスが発見された。瞬く間にパンデミックと化し、人々が混乱と狂気に陥るさなか、人気作家のマックスと恋人のラナは疫病の蔓延するニューヨークを脱出。途中で知り合った生存者たちと力を合わせて安住の地を求める。仲間になった者には一見なんの共通点もなかったが、実はあの大規模なパンデミック以降、それぞれ不思議な念力を手に入れていた。ロマンスの女王がディストピアを舞台に描く、震撼のラブサスペンス&ファンタジー!
マックスとラナは生存者たちが身を寄せ合う街「ニュー・ホープ」へと辿り着き、久々の安息を手に入れる。新たな命を授かったふたりは静かな幸福を噛みしめるものの、心の奥には、弟のエリックが仲間を殺め、裏切りとともに姿を消した記憶が暗くわだかまっていた。ある日、平和な日々を取り戻すべく街のリーダーとなったマックスのもとへ、犯罪集団が大規模な奇襲を仕掛けてくる。彼らの狙いがラナだと知ったマックスは命を賭けて闘うのだが…。恋人たちの想いが胸を打つ衝撃のラスト!