2018年発売
強かに、狡猾に、ときに残酷に。覇権定まらぬ戦国の世を生き抜く者たちー甲斐・武田家重臣の家に生まれながらも、訳あって牢人となった植原次郎左衛門とその息子・三十郎。数奇な運命により、ふたりは庄屋の娘であった亡き母の故郷の村で暮らすことになる。だかそこでは、武士・解死人・庄屋の縁者という三つの身分に翻弄されながらの暮らしが待っていた…期待の実力派、書下し長編歴史小説。
匠の技巧が発揮された傑作短篇集 「猫と鼠」猫が鼠を台所で追いかけている。鼠はフロアランプを避けるべく二つに分裂し、猫は壁に激突、アコーディオンのように体がひだひだに折りたたまれ、そこから音楽が流れでる。猫は鼠との追いかけっこ、知恵比べで絶対に勝てないと分かっていながら、鼠を捕まえたい欲求がつのるばかり……鼠が赤いハンカチで猫の体を拭きとり、鼠も自らを拭きとりはじめ……。 アニメ『トムとジェリー』の楽しいドタバタを想起させるが、こうしてミルハウザーの手にかかると、息もつかせぬ速い展開と、細部にわたる滑稽かつ残酷な描写に翻弄されてしまう。とうていありえない状況にもかかわらず、「ミルハウザーの世界」に一気に読者を引き込む描写は、さらに凄みを増している。 ほかにも、周囲から無視しつづけられた少女の体が文字通り消える「屋根裏部屋」、バベルの塔をめぐるパロディ「塔」、森の向こうにある町への憧憬「もうひとつの町」、エジソンの助手による偽の日記「ウェストオレンジの魔術師」など。「オープニング漫画」、「消滅芸」、「ありえない建築」、「異端の歴史」の4部構成で、13篇を収録。
台湾の鬼才が紡ぐ、人生を癒す終活小説 大河巨篇『鬼殺し』で好評を博した、台湾の若手実力派作家、甘耀明の最新作。台中を舞台に、身寄りのない老人など社会的弱者に着目し、主な登場人物は全員女性という新境地となる長篇小説である。 主人公の「私」は、大規模な幼稚園に勤める二十代の女性保育士。ある年の夏、十数年音信不通だった祖母が、私に会いにやってきた。末期の肺がんに冒された祖母は、気がかりだった孫娘に、死ぬ前に会う責任があると思い、自らが営む小型の共同ホームの老女たち五名と老犬一匹と共に私の家に姿を現した。ちょうどその時、私は自宅で幼稚園の園長の息子にレイプされ、祖母は唯一の目撃者となる。私の心は傷つき、園長の息子を告訴し、幼稚園を退職、祖母を含めた共同ホームの老女たちと行動を共にするようになる。祖母の終活に寄り添いながらひと夏を過ごした私は自己回復していく……。 女性問題、独居老人、同性愛など、現代の台湾社会が抱える問題を捉えつつ、著者のまなざしは、社会的弱者の心を温めて“生”をいろどる“記憶”に注がれる。それが厳しい現実を生き抜く支えになるというメッセージをユーモア溢れるタッチで描いた傑作。解説・高樹のぶ子
沢渡留理は亡き父親から引き継いだ会社“沢渡家具”を守ろうと必死だった。そのためには、志を異にする兄・要次と、その愛人でもある秘書の福田麻衣子を排除するしかない。留理は綿密に計画を練り、痴情のもつれを装ってふたりを殺した。偽装工作は完璧だったはずなのに、翌朝、家政婦から、家に強盗が入り、その強盗に兄が殺されたようだという連絡を受ける。いったい何が…。想定外の出来事に混乱しつつ現場に戻った留理は、子供のように捜査に没頭している長身の女刑事と出会った。その女は、花房京子と名乗ったー。
現象学者の凪田緒ノ帆は、半年前に自宅の火災で恋人を失った。まる焦げで発見されたその死体が持っていたスマホのロック画面には、下着姿の謎の女性の画像が残されていた。突然、緒ノ帆の前に現れた美青年・露木は“予現者”を自称し、「僕が予現したあなたの恋人以外の直近三件の火災事故では、いずれも被害者の男性のスマホにこの女性の画像がありました」といい、事件と女性の関係を一緒に調べようと誘う。さらに、謎の女性の画像を手がかりに、メグミという名前と、彼女を探す消防士・海老野ホムラが見つかる。三人は、露木の“予現”する火災とメグミの手がかりを追う旅をはじめたー。
死者10人を出した簡易宿泊所放火事件。警察官・寺島が入手したノートの「1970」「H・J」の意味とはー。45年の歳月を経て、2つの事件が結びつく時、過去に囚われた男たちの最後の戦いが始まる。現代史の“闇”に迫る怒濤の公安小説。
「小説家になろう」発! 佐崎一路の最新作!! “悪役令嬢”をこっそり救え! 盆暗王子の暴挙を阻止するべく駆けまわるのは、ヨイショが得意な取巻きA!?(実は最強) 「もう我慢ならん、アドリエンヌとの婚約を破棄する!」 「我らは殿下のご決断を支持します!」 取巻き筆頭として、いつものように王子追従(ヨイショ)に励むロランは、貴族学園の転校生クリステルに懸想し、婚約者アドリエンヌを悪女とののしる王子に、突然、強烈な違和感を抱く。あれ? この状況、国としてかなりマズくない!? 半年後に計画された王子の婚約破棄宣言を阻止するため、義妹のルネやメイドのエレナとともに、時に〈神剣の勇者〉としての力を使いながら、罠にはまる“悪役令嬢”を救うロラン。一方、王子と取巻きたちから崇められるクリステルには、誰にも言えない事情があった……!? 汚名を着せられる悪役令嬢をこっそり救うのは、伝説の勇者! そして世界の秘密が解き明かされる!?
古くから伝わる“少女と魚の悲恋”の逸話をなぞるように絶世の美女の叔母に惹かれゆく少年を捉えた表題作をはじめ、規範や差別、偏見に苦悶するなかで邂逅するエロスを晴れやかに描く、現代ハイチ文学の傑作短編集。
度重なる激務に耐えかね、ついに倒れてしまったアラサーのサラリーマン・明智正五郎は、『神』による理不尽な気まぐれ(?)によって、一匹の猫に憑依させられてしまう。そして、突如として始まった、猫の飼い主の女子高生・柊との共同生活。猫になった明智には、神から次々と柊を救うための試練が与えられ…?試練をこなせなかったら一生猫のまま!明智は人間に戻れるのか!?ドタバタ・ヒューマン・ストーリー!
「君に流星をプレゼントしよう」 満天の星空から流れる一筋の光。 不思議な青年との出会いが物語の始まりだった! 浅草に住んでいた大鳥居祥子(おおとりいしょうこ)の実家は明治時代から続く「人力舎」という地元でも有名な車引きの店を営んでいた。 父への反発心から京都の大学に進学して卒業するまで地元に戻ることはなかったが、家業の車夫を継ぐために久々に実家に帰ってきた祥子。 しかし、彼女が目にしたのは、タクシー会社に業態転換した「人力舎」の変わり果てた姿だった。 父が祖父や母の反対を押し切って無理矢理タクシー会社を始めてしまったのである。 車夫という仕事を愛する祥子は父の行いがどうしても許せなかった。 思わず家を飛び出した祥子が桜橋の袂で出会った大也(だいや)と名乗る青年は、祥子のためにマジックを見せてくれるという。 彼は持っていたステッキで星の1つの周囲に小さな輪を描くとその星がそのまま流星となった。 星は次々と流れていく。2つ3つ4つと… 大道芸人だというこの青年に祥子は興味を抱くようになる。 大也は大道芸をする傍ら浅草の古い民家を改造したシェアハウスの大家もやっていた。 部屋に空きがあることを知った祥子はそこに住むことに決める。 ところが、シェアハウスの住人は、フィンランド出身の銭湯の店番、世界的歌姫、小料理屋の店員、水上バスの乗員など職業も国籍もバラバラでクセのある人物ばかり。 バラエティにとんだ住人たちが引き起こすミステリアスな事件に祥子は巻き込まれていく。 観光の街「浅草」には実はとんでもない秘密が隠されていた。 祥子は大也とともにその謎解きに挑戦する。 第一章 始まりは浅草駅から 第二章 花見の名所『桜橋』 第三章 大也のシェアハウス 第四章 寄合は神社の集会所で 第五章 女神様を目指して草むしり 第六章 三社祭 第七章 両国国技館でロボット大会 第八章 名探偵祥子 事件の謎に迫る 第九章 リリーさん救出大作戦 終章 あとがき
運命に導かれ、それぞれの楽土を目指せ。満洲の怪人・甘粕正彦、男装の麗人・川島芳子、欧州に現れた吉田茂。昭和史最大の事件「日中戦争」前夜、大陸に野望を抱き、夢を掴もうとする者たちが動き出す。そして、希望の光をまとい、かつての英雄が中原のかなたに探し求めた男がついに現れた。その名はー。
「巨悪はいつも、身のまわりにひそんでいる」東京地検特捜部の検事・中澤源吾と特捜部機動捜査班の事務官・城島毅。高校時代野球部のダブルエースだった二人は、ある事件をきっかけに「検察」の道を選ぶ。二人の前に立ちはだかる、政治家、企業、秘密機関ーーそして「消えた二兆円」。真相に辿り着く過程で明らかになる現代の「巨悪」の正体とは。東京地検特捜部を舞台にした渾身の検察ミステリー巨編。 「東京地検特捜部という取材も不可能かと思われる捜査機関を、これほど真に迫る形で描いたのは、おそらく今作が初めてではないか。本作によって「ポスト横山秀夫」といっても過言ではない域へと駆け上がったことは間違いない」(宇田川拓也 ときわ書房本店) 「納得できないな。何もかも」 「俺もだ」 一枚の公孫樹の葉がその後の運命を決めた。 東京地検特捜部の検事・中澤源吾と特捜部機動捜査班の事務官・城島毅。高校時代野球部のダブルエースだった二人は、ある事件をきっかけに「検察」の道を選ぶ。 「現代にも巨悪はいます。それは過去の巨悪よりも巨大で性質も悪い。余りの大きさゆえ全体が見えず、巨悪を巨悪だと認識できないだけなんです」 二人の前に立ちはだかる、政治家、企業、秘密機関ーーそして「消えた二兆円」。真相に辿り着く過程で明らかになる現代の「巨悪」の正体とは。 東京地検特捜部を舞台にした、元新聞記者の著者渾身の検察ミステリー巨編。
イヴの異称を名前に持つ女、上田絵羽。絵羽はある野望をもち、日本国内の超進学校に潜り込む。そこには数学の天才児・上杉和典が在籍していた。絵羽は己の目的を達成するために、自分が目を付けた優秀な人間に扇情的な言葉を投げかける。その筆頭が和典だった。絵羽からの荒唐無稽な要望に強い拒絶感を感じる一方で、強く惹かれる和典。しかしその裏に見え隠れする、得体の知れない闇に危険を感じ、それが何なのかを探り始める。
◆祝!3冠達成★第9回山田風太郎賞&160回直木賞受賞!&第5回沖縄書店大賞受賞!◆希望を祈るな。立ち上がり、掴み取れ。愛は囁くな。大声で叫び、歌い上げろ。信じよう。仲間との絆を、美しい海を、熱を、人間の力を。【あらすじ】英雄を失った島に新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染みーーグスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり、同じ夢に向かった。 私の年代では記録といえる戦後復帰時代の話ですが、肌がちりつきました。 読み進めるにつれ鳥肌が止まらなくなるのは、私が沖縄人だからでしょうか? リブロリウボウブックセンター店 宮里ゆり子さん 米軍施政下の時代に翻弄されながら、立ち向かい、熱く生き抜いた沖縄の若者たちを描く超大作!そして現代に続く基地問題を知る必読の書! ジュンク堂書店那覇店 森本浩平さん 占領下、実際に起きた戦闘機小学校墜落、米軍車両死亡交通事故無罪判決。県民の怒りが爆発したコザ暴動。主人公たちの生き方を通して沖縄の痛みが理解できる作品です。 球陽堂書房メインプレイス店 新里哲彦さん この熱い息吹、この語りの身軽な舞いを堪能せよ。--野崎六助(日経新聞6/21夕刊) 叫びだしたくなるほど猛烈な歓喜と感謝があふれ出して止まらなくなったーー宇田川拓也(本の雑誌7月号) 本書は真藤順丈の新たな代表作にして、今年のエンタメ小説界の台風の目だーー朝宮運河(ダ・ヴィンチニュース6/23配信) 圧倒的な傑作である、いつまでも長く読まれ愛される名作になるだろう。必読!--池上冬樹(小説現代6月号) 超弩級エンタテインメント大作。読みのがすなかれーー香山二三郎(週刊新潮6/28号) 読み始めたら最後、開いた頁はいつまでも閉じることができないーー奥野修司(週刊文春7/5号) とにかく全篇に籠められた熱量が圧倒的ーー千街晶之(週刊文春7/5号) 「朝日新聞7/14日刊」斉藤美奈子、「毎日新聞7/15日刊」川本三郎、「毎日新聞7/7日刊」記者、「読売新聞7/3夕刊」記者、「日本経済新聞7/3日刊」野崎六助、「産経新聞7/22日刊」大森望、「東京新聞6/29」記者、「本の雑誌7月号」宇田川拓也、「クイックジャパンVol.138」浅野智哉、「 週刊新潮6/21号」香山二三郎、「週刊文春7/5号」奥野修司、「週刊文春7/5号」千街晶之、「ダ・ヴィンチ8月号」朝宮運河、「HBCラジオ7/9放送」永江朗、「野性時代8月号」吉田大助、他書評多数! 奪われた「故郷」を取り戻すため、少年少女は立ち上がる。 米軍統治下の沖縄を嵐のように駆け抜ける、青春と革命の一大叙事詩!!
何でも率直に物を言う新入社員・麻吹美華が経理部に入り、気苦労が耐えない沙名子。私生活では付き合い始めた太陽との関係に戸惑い気味。そんな中、沙名子は社員同士の不倫を目撃してしまい……?
〈椿屋敷〉と呼ばれる古屋敷に住む香澄と柊一は、ワケありの“偽装夫婦"。が、偽装とは言い切れない感情が生まれつつある。そんな折、香澄の元・許婚の晶紀が、椿屋敷の裏のアパートに引っ越してきて……?
大樹の前に、母方の叔父・零一が十数年ぶりに現れた。祖母の遺産を要求してくるが、「ゆきうさぎ」を売却しなければ支払えない。途方にくれる大樹をよそに、零一は連日のように来店し食事していくが……?