2018年発売
事故の後遺症に苦しむトマスの面倒を見てほしいー。知人に頼まれ、ザラは居ても立ってもいられず彼の屋敷を訪ねた。彼女にとって大富豪のトマスは恩人であり、憧れの存在だった。両親亡きあと、おじに使用人同然にこき使われて成長したザラを、トマスは偽装結婚を申しでて救いだし、解放してくれたのだ。あの日の夢のような誓いのキス…彼は覚えているかしら?だがそんな物思いは残酷に打ち砕かれる。トマスは記憶を失い、ザラの存在すら忘れてしまっていた。揺れる想いをひた隠し、家政婦として彼に尽くそうと心に決めたザラだったが…。
ロンドンにあるカファラー王国の大使館で働くジェーンは、美しく派手な双子の妹と常に比較されつつ、堅実に生きてきた。その妹が多額の借金をつくったとわかり窮地に陥ったとき、国王ザイードが突然現れて、驚くべきことを申し出る。「遺産相続のために妻が必要だ。そして君は完璧な候補者だ」しかも彼女を選んだ理由は、女性として魅力がないので惹かれず、用済みになればすぐに手放せる便宜結婚相手として適任だからと。ジェーンはあまりの屈辱に震えるが、抗うことはできなかった。新婚初夜、彼女は思いがけず夫の秘密を知ることになり…。
大富豪の夫スコットといつになく激しい夜を過ごした翌朝、彼が差し出したものを見てサラは愕然とした。それは、サラと同僚の男性との密会を匂わせる写真だった。売り言葉に買い言葉で口論になり、サラは家を飛び出した。ゆうべのスコットの激情は、嫉妬と復讐にすぎなかった。この結婚は写真1枚でたやすく壊れるほどのものだったのだ…。だが数日後、荷物を取りに戻ったサラは夫の魅力に屈してしまう。自分の弱さを恥じながら、サラは衝撃の事実に思い至った。最近ピルをのんでいない!こんな状況で妊娠したら…。
「いったい何の権利があって、僕から息子をとり上げたんだ?」偶然再会し、強引に家まで送ってくれた大富豪レアンドロは彼にそっくりなアビゲイルの赤ん坊を前にして激怒した。1年半前、彼の経営するホテルで出会ったとたん激しい恋に落ち、その強烈な魅力に抗うすべもなくアビゲイルは純潔を捧げた。だが夢のような日々も束の間、彼の妹に悪質な嫌がらせをされ、アビゲイルは泥棒呼ばわりされて彼に捨てられたのだった。レアンドロは金褐色の瞳に怒りをたぎらせ、冷徹に告げた。「結婚するんだ。君が好もうと好むまいと、ほかに道はない」
「ここにいるのは君と僕の二人だけだ」ルシアンの思わせぶりな言葉に誘われたシャーロットはいつもの冷静な自分を忘れ、熱い一夜を過ごした。その過ちの結果が妊娠だなんて!突然に人生の大転換を迎え、シャーロットは仕事を辞めて一人で子供を育てる決心をした。なにしろ、お腹の子の父親は彼女が勤める企業のCEOなのだ。シングルマザーになることを告げると、ルシアンは意外にも、二人で育てるための便宜結婚を迫ってきたーあくまでも子供のために、愛のない結婚を。密かに彼に恋していたシャーロットの胸は張り裂けんばかりに痛んだ。
リリーは学生のころ、不妊クリニックへの卵子提供の報酬により、高額な学費ローンを返済することができた。無事に卒業を果たし、夢だった看護師となった彼女のもとに、ある問題を抱えた医師カーターが現れる。「君の卵子のことで話がある」聞けば、彼の精子と彼女の卵子を使った受精卵が取り違えられ、現在妊娠中の女性と話し合いをすることにしたらしい。彼は自分の遺伝子を受け継ぐ子供をぜひ手に入れたいと、今は別れた元妻に代わり、リリーに口添えしてほしいというのだ。出会った瞬間からカーターの虜になっていた彼女はみずからを戒めた。彼はわたしを都合よく利用したいだけ。恋心なんて抱いてはだめよ。
ローレルは英国の伯爵家の娘として生まれたものの、身分の卑しい母親が出産時に命を落とし、スペインの修道院へ送られた。ほどなく父が迎えた上流階級出身の後妻にうとまれたから。大人になったローレルは修道院をあとにし、農園主の館で住み込みの家庭教師として働き始める。ある日、好色な農園主に襲われそうになっていたとき、遠い親戚だと名乗るジャックがふいに現れ、館から連れ出してくれた。ローレルの父が亡くなったことで伯爵位を継承したばかりの彼は、彼女を故国へ連れ戻しにはるばる来たという。但しそのためには結婚する必要があると言われ、ローレルは息をのんだ。
いわれなき決闘を申し込まれたお父さまの命を守らなくちゃ!ジュリエットは少年に変装し、身代わりとして決闘の場へ向かった。相手はロンドンきっての道楽者と噂のブレイボーン公爵。公爵は代理人との決闘を渋ったが、彼女が挑発すると乗ってきた。だが銃弾は、無情にもジュリエットの肩を貫き、彼女は気を失った。一方、ただかすり傷を負わせて追い払うつもりだった公爵は、予想外の展開に慌てふためいた。この子供が死んだら大問題になる。彼は自分の屋敷に少年を連れ帰り、手当てをすることにしたーそこから、すべての歯車が狂い始めることになるとも知らず。
キャシディは妊娠9カ月。子供嫌いな大企業の副社長ドノヴァンに、妊娠を打ち明けられず別れたきりだったが、その日、驚くことに彼が突然訪ねてきた。「結婚してくれ、キャシディ。ぼくたちの赤ん坊の父親になりたい」ああ、わたしだって本当はあなたが恋しくてたまらなかったのよ!でも…義務感からのプロポーズなら受けるわけにはいかないわ。「離れていた間に、きみの大切さが身に染みてわかったんだ」誠実なドノヴァンの言葉に、キャシディも心を開き、彼の変化をいぶかりつつも求婚を受け入れるーまさかそれが、彼がCEOに就任するための便宜結婚とはつゆ知らず。
二十歳のとき事故で両親と恋人を同時に失ってから、ブロディは孤独な日々を送っている。そんな彼女が朝のジョギングで言葉を交わすようになったハンサムな男性、魅力的な億万長者ケード・ウェブは、世の女性たちの憧れの的だ。彼に部屋に誘われたある日、迷いつつも応じたけれど、燃えるようなキスを受けた瞬間、急に怖くなって逃げ出した。半年後、思いがけずパーティでケードと再会したブロディ。セクシーな彼がほほえむたび、抑えがたい欲望を感じて、招かれた部屋のデスクの上で性急に情熱を分かち合う。ところが、避妊具が破れて妊娠してしまい…。
カルは髭を剃りながら、妻と愛し合った甘い余韻に浸っていた。ダイアナとの暮らしは幸せに満ちている。子供に恵まれないことを除けば。突然鳴り出した電話が、彼を現実に引き戻した。病院の緊急治療室からだ。ダイアナが通りで転倒して頭を打ち、運び込まれたという。おまけに、赤ん坊も一緒だと。いったい何があったんだ?ダイアナはほんの30分前に家を出たばかりだ。それに、なぜ赤ん坊が一緒なのだろう。病院に駆けつけたカルを、妻はおびえた目で迎えた。愛する妻は、夫のぼくが誰だかわからないのか…。そればかりか、自分の助けた赤ん坊を我が子と思い込んでいたのだ。
グレースは姉夫婦のため、代理母となって赤ん坊を産んだ。だがまもなく二人は事故で亡くなり、子どもだけが残された。そこへ、訃報を受けた義兄の弟ジョシュが帰ってくる。10年前、実業家になるという野望を抱いて町を出たジョシュ。ずっと彼を慕っていたグレースは、その前夜、彼にすべてを捧げた。やがてジョシュは世界を股にかける大物実業家となったが、なぜかグレースの代理出産に猛反対し、二人は仲違いしたのだった。姉夫婦亡きいま、その理由を知ってグレースは絶句する。義兄は、姉に内緒でジョシュの精子を提供していたというのだ。なんてこと…姉の忘れ形見は、“わたしたちの子”だというの?
セレナはイタリア旅行中に、レオ・カルヴァーニと出会った。無骨な印象を与えるが、この上なく魅力的で、優しい。郊外に農場を持ち、質素な生活を愛しているのだという。抗いがたい魅力、セクシーな笑顔、そしてどこか高貴な雰囲気…セレナはそのすべてに惹かれ、運命の男性に出会ったのだと思った。だがその喜びは、予想もしなかった嘘によって打ち砕かれる。レオは途方もない億万長者であるばかりか、いずれはベネチアの宮殿と伯爵の称号を受け継ぐ身だったのだ!自分の素性すら偽る男性を、どうして信用できるだろう?なのに彼は、僕と結婚し、宮殿の女主人を務めてくれなどと言い…。
玄関のドアを開けてファルークの姿を目にした瞬間、すさまじいショックに襲われ、カルメンは凍りついた。ファルークは中東ジュダール国のプリンスで、1年半前に仕事を通じて出会い、すぐさま惹かれ合った。そこで二人は将来の約束をしないという合意のもと、3カ月という期間限定の恋人同士になったのだった。だがカルメンは約束の時を待たずして、ファルークのもとを去った。職を変えて転居までしたのに、見つかるなんて…。まさか彼は知ってしまったの?私がなぜ去ったかを。うろたえるカルメンに、ファルークは冷たい声で言い放った。「ぼくの娘に会わせてもらいたい」
“君のキスや愛情で、僕は息がつまりそうだ…”6年前、愛する夫ラスが別れぎわに言い放った言葉を、今日もアプリルは胸の痛みとともに思い出していた。天涯孤独の彼女にとって、結婚生活は初めて知った幸福だった。それなのにラスにはその愛は重く、若い彼女をおいて去ったのだ。物思いに耽るアプリルの前に、そのときトラックが飛び出しー頭を強打した彼女は、目覚めると記憶の一部を失っていた。やがて病室に、知人だという、見知らぬハンサムな男性が現れる。アプリルは彼を見つめた。まさか自分を捨てた夫だとは思わずに。
「僕は妻に金を出すと約束した。妻を抱くのは当然のことだ」ロレインがいつまでも拒むので、傲慢な夫は腹を立てている。「結婚前からバージンじゃなかったくせに、なぜもったいぶる」彼は知らない。私の体が無垢なことも、この胸に秘めた思いも。堪えきれない涙がひと筋、ロレインの頬を伝った。病室で一人、苦しむ妹の治療費のためなら何でもする覚悟だった。けれど、大富豪の夫ハルに惹かれるとは夢にも思わなかったのだ。しかもある“秘密”を、夫に絶対に知られてはならない。自分がハルの妻ではなく、彼女の双子の妹だということを。
ある日、ローラのもとに、祖父の会社の次期後継者ダンが現れる。心臓病で余命わずかな祖父は、会社の安泰のために、ローラと祖父の信任厚いダンとの結婚を望んでいるのだという。ダンは魅力的だが、無慈悲で目的のためには手段を選ばない。なかば強引に、指に青いサファイヤの宝石をはめさせられて、祖父の前で、ローラはダンとの結婚の誓いをさせられる。一目で心を引かれた…けれど私に愛など微塵もないこの人と?しかも彼はローラの体を値踏みしながら、端整な顔を歪めたのだ。「跡取りをこしらえてくれたらいい。これは会社のための結婚だ」
シャネイは3歳の娘と一緒に、カーニバルの喧騒を楽しんでいた。そこで思わぬ相手とでくわしてしまうー夫の弟夫婦と。スペインの名家の一員で、億万長者のマルチェロと結婚し、上流社会に溶けこもうと努力したシャネイだったが、嫌がらせを受けたうえに、夫に愛人までいるとわかり、逃げるようにして、故国オーストラリアに帰ったのだ。その後に妊娠が発覚し、娘を産んだことを隠してきたのに、このままではマルチェロにすべてを知られてしまう。案の定、夫は自家用飛行機ですぐさま現れた。娘を奪うために。