2018年発売
旅客機が爆破され、乗客全員が死亡。五十一名のうち四人と、切符を買いながら乗らなかった者一人には奇妙な共通点があった(「77便に何が起きたか」)。電車では毒殺、フェリー内では密室殺人…楽しいはずの旅路が血に染まる!乗りものにロマンと魅力的な謎を見いだした著者による、トラベルミステリーの名作をセレクト。
鷲を親だという娘「鷲」、河獺に嫉妬された漁師「深川の老漁夫」、美しい白い肌の少女に懸想した「くろん坊」という山の妖怪と安易な口約束が招いた悲劇ー。近代化がすすむ日本の暗闇にとり残された生き物や道具を媒介に、異界と交わるものを描いた「近代異妖篇」の続篇。附録として単行本未収載の短篇二篇を添える。
今日の決戦こそが諸君の名をローマ戦史のなかに不朽のものにするだろうー皇妹を妃とし、副帝としてガリア統治を任ぜられたユリアヌス。普遍の真理を地上に顕然とさせんとする真摯な彼の姿は、兵士たちの心を打ち、ついにゲルマン人の侵攻を退ける!巻末付録・『背教者ユリアヌス』歴史紀行。
ティアドロップを巡る一連の事件は片桐、金田ら多くの犠牲を伴い終結した。その後、四十九日を迎えて片桐の墓を参拝した絆の前に、謎の男が現れた。かつて片桐と同僚だったと名乗る男だが、その直後、何者かに殺されてしまった!死に際、絆に手渡されたSDカードを巡り、この世の光と闇が蠢き出す…。シリーズ第四弾!文庫書き下ろし。
死後に同一人物であることが明かされた二人の作家、フィオナ・マクラウドとウィリアム・シャープ。蘇生するケルトの息吹、悲哀と慈愛のロマンス、哲学的な思索の旅…神秘のヴェールに包まれた伝説の作家の知られざる名作幻想小説20篇。
郷里の山口から上京した青年・詩人美。中原中也、高村光太郎…詩を愛する心優しい青年は、新宿・歌舞伎町で暮らす叔父の無塁のもとに身を寄せていた。ギャンブルと酒を愛する無塁とともに様々な人と出会い、色々な経験をする詩人美。恋を知り、勝負の場に身を置き、旅に出て、大切な人たちを失い…青年は強い風にもビクともしない骨太な大人に成長していく。「遊びと学び」の青春物語。
スキは人生最高の25歳の誕生日を迎えた。密かに片思いをしてきた、親友の兄ラモンとついに結ばれたのだ。だが、実業家と芸術家という二つの顔を持つ魅惑的な彼にとって、身分違いのスキとの一夜はほんの気まぐれだったのだろう、翌朝ラモンの姿は消えていた。10カ月後、親友が事故で急死し、思いがけず再会したラモンは、怒りもあらわにスキに詰めよった。なぜ妊娠したことを僕に知らせず、勝手に中絶したんだと。違う、誤解よ!赤ちゃんは…ショックで取り乱すスキの耳に冷酷な命令が響いた。「君には後継ぎを産んでもらう。償いとして」
“薄汚い娼婦”キーリーはアリストンから受けた侮辱を忘れない。8年前、18歳だった彼女が奔放な母親の起こした不祥事のせいで深く傷ついたとき、優しく慰めてくれたのは彼だけだった。ところが、甘いキスを交わし陶然となった彼女を突然突き放すと、アリストンは罵声を浴びせ、振り向きもせず立ち去ったのだ。今やギリシア一の海運王の彼は、再会するなりこう切りだした。キーリーを多額の報酬で使用人として雇いたいというのだ。また私を侮辱するつもり?でも介護施設の母にはお金がかかる。承諾したキーリーは、まだ知らなかった。彼の非情すぎる計画を。
両親に結婚を強要されたソフィーは故郷シチリアを出て、ローマの五つ星ホテルでメイドとして働き始めた。ある日、彼女がスイートルームに朝食を届けに行くと、イタリア人大富豪バスティアーノがベッドに横たわっていた。同郷の彼に惹かれ、ソフィーは魅入られたように純潔を捧げる。3カ月後、再び訪れたバスティアーノと甘い夜を過ごした翌朝、突然罵声が飛んだ。「盗んだ指輪を返せ!あれは母の形見だ」酷いわ、濡れ衣よ!だが結局ソフィーは職を解かれ、彼も失う。泣く泣く彼女は帰郷したーおなかに彼の子を宿して。
目を覚ましたとき、ロギーはローワンに抱きかかえられていた。3年ぶりに彼に会って、どうやら気を失っていたらしい。億万長者のローワンは危険が迫っているとロギーに教え、なぜか国外にある彼の城で保護したがった。しかし、彼女にはどうしても国を出られない理由があった。バージンを捧げたローワンに、一夜で捨てられたからではない。私の父が原因で、彼に死ぬほど憎まれていることも関係ない。気絶してできた怪我も忘れて、ロギーは勇気を振り絞った。私たちには2歳になる娘がいるの、と告白するために…。
雇い主ブラムの姿をひと目見た瞬間、臨時秘書のルビーは呼吸を忘れた。“この世のものとは思えないほど美しい異国の大富豪”-5年も隠遁生活を送っているにもかかわらず、その魅力は健在らしい。初対面の臨時秘書に不信感をあらわにするブラムだったが、彼はルビーが天涯孤独だと知ると、驚くことに便宜結婚を申し出た。祖国に戻ることになり、花嫁を連れ帰る必要に迫られているのだと。大富豪の嫁なんて大それた役が、私なんかに務まるのかしら…。ルビーは悩んだ末、亡父の負債を返済するために依頼を引き受けた。口裏合わせのロマンスを創作し、ブラムの優しさに触れるにつれて、つのる想いに苦しむことになるとは思わずに。
イタリア屈指の名家の御曹司ジオ・ヴァルティエリと、そばにある農場の娘アニータは幼少期からの親友だ。5年前に恋人同士となるも、その後突然ジオから一方的に振られ、アニータはひどく傷ついた。それでも今なお、彼を愛し続けている。あるとき、ヴァルティエリ一族の休暇旅行の直前にジオが大怪我をし、アニータが身の回りの世話をすることになった。二人きりの時を過ごすうち、ふたたび熱い情熱の火花が散ったが、自分は不誠実で結婚には向かないと言うジオに、彼女は肩を落とした。やがてそれぞれの日常へ戻ったあと、予期せぬ妊娠が発覚する。義務感から求婚するジオに向かって、愛なき結婚はできないと、心で泣きながらアニータは告げるのだった…。
屋敷と財産を賭博で失った父が蒸発し、シーアは独り取り残された。父は最後にサー・デヴリンなる貴族を相手に大負けして、彼女の花嫁持参金まで巻き上げられていた。路頭に迷ったシーアは苦渋の選択でサー・デヴリンの館を訪れ、切なる願いを申し出たー私をもらってください、と。デヴリンは突如現れたみすぼらしい身なりの女性の言葉に驚きつつも、理想の花婿と見るやつきまとってくる貪欲な令嬢たちを退けられ、跡継ぎも手に入るなら好都合と、彼女の願いを叶えてやることにする。半年前に見かけた瞬間から彼に恋していたシーアは舞い上がるが、初夜を迎えた翌日から、夫は急に冷たく無口になってしまい…。
“利口すすず、慎ましやかで、口答えしない、家柄のいい美人。そんな娘がもしもいるなら、結婚を考えてもいい”祖母に結婚をせっつかれている男爵チャールズは、まだ独身を謳歌したくて、無理難題と言える結婚の条件を出していた。ところが驚いたことに、そんな娘がいたのだ。祖母の知人の紹介で引き合わされた彼女の名は、セラフィーナ。面白みがなく従順そうで、天使のように愛らしいだけの彼女となら、結婚後も自由にやれそうだ。高慢にもそう考えた彼はまだ知らなかった。自分の目に映っているしおらしいセラフィーナが、愛する家族を苦境から救うための、一世一代の名演技をしているとは!
亡き親友の兄で大富豪のリードのもとを訪れたライラは、黒髪と明るい緑色の瞳にたちまち心を奪われてしまった。だまされてはだめ。外見はゴージャスでも、彼の本性は傲慢で冷酷。妹がお金に困っていたときも、助けようとしなかったのだから。「この子はあなたのものよ」ライラは胸の痛みをこらえ、腕の中の赤ん坊ー親友の忘れ形見を伯父にあたるリードに引き渡した。そして、ナニーが見つかるまでの約束で子供の世話を引き受ける。リードの家でともに暮らすうちに、ライラは冷たい仮面の下の本当の彼を知り、惹かれる気持ちを抑えられなくなる。だが、彼が求めているのはベッドをともにしてくれるナニーで…。
亡姉の子を代理出産したケイラは、赤ん坊の父親、ドノバンを訪ねたー姉の葬儀の日の夜、たった一度だけ情熱を分かち合った魅惑の大富豪を。生まれた子にきょうだいを作ってやりたいという姉の望みを叶えるには、彼にもう一つの受精卵を使用する許可を得なくてはならなかった。「この子はあなたの娘よ」だが自分にそっくりな目を持つ赤ん坊を見ても、ドノバンは冷淡だった。「受精卵は破棄する約束だった。それに、ぼくには婚約者がいる」頼みを断られ、肩を落として帰宅したケイラを悲劇が待ち受けていた。あろうことか、住み込みのナニーに貯金を全額盗まれてしまったのだ。困り果てたケイラが、もう一度ドノバンを訪ねると…。
父の死後、ペイジは妹とふたり、叔母の家で貧しい暮らしに耐えていた。ある日、再会したのは、ギリシア海運王ニコラス・ペトロニデスー4年前、18歳だったペイジがひと目で虜になり、純潔を捧げた男性。夢の日々を過ごし、その後悲嘆のどん底に突き落とされるとも知らず。彼は資金難の父の事業に投資するふりをして近づいてきただけだったのだ。あんな仕打ちをした彼が、なぜ今になって現れたのだろう?「友人の娘の家庭教師としてギリシアに来てほしい」ニコラスの言葉にとまどうペイジだったが、折悪しく妹の非行が叔母の逆鱗に触れて家を追い出され、やむなく仕事を引き受けることに。二度と彼に心を奪われてはいけない。ペイジは固く胸に誓うが…。
21歳の掃除人マグダは、派遣先の豪奢な邸宅で、若きイタリア人実業家ラファエッロと初めてはち合わせた。ハンサムな顔に思わず見とれていると、彼がいきなり申し出た。10万ポンドの報酬で、半年だけ僕の妻になってくれないか、と。亡き友人の赤ん坊を育てるマグダは、戸惑いながらも引き受けるが、「跡取り息子が不器量で貧乏なシングルマザーを嫁にした!」と、由緒あるラファエッロの実家の逆鱗に触れてしまう。それこそ、両親と確執のある彼の思惑どおりだったのだが、あまりの責めを受ける彼女を不憫に思ったか、ラファエッロはマグダを美容室に連れていき、ドレスも買ってやる。すると…。
名家の御曹司マックスとケイトは、誰もが羨む理想の夫婦だった。ところが、父親の汚いビジネスを継ぐことを嫌ったマックスが怒りを溜めこみ冷たくなり、思い余ったケイトは家を出た。まだ彼に知らせていないお腹の子のために、できるだけ遠くへ。時が過ぎ、入院中の家族を見舞いに訪れた病院で、ケイトは偶然にマックスと8年ぶりの再会をはたす。かつての夫の姿がよみがえり、ケイトは恐れおののくが、彼は初めて恋した頃の、隠やかな自信あふれる男性になっていた。でも彼の魅力に屈してはだめ。だってわたしには秘密が…。そのときエレベーターの扉が開き、7歳になる娘が走り寄ってきた。