2018年発売
時は戦国、下剋上の世。京都・相国寺近くにある三好家の屋敷に、その男はいた。得体の知れぬ出自でありながら、茶の湯に通じ、右筆として仕える野心家である。気に食わぬ者は容赦なく首を刎ね、殺害した女を姦通し、権謀術数を駆使して戦国大名へと成り上がっていく。織田信長ですら畏れた稀代の梟雄・松永弾正久秀を突き動かすものは、野望かそれとも…!?「悪とは何か」を問う新感覚時代小説。
ジャスティーン・エヴァンズは恋人との暮らしに耐えかねて、娘を連れて逃げ出した。彼女たちが移り住んだのは亡き大叔母ルーシーが遺した湖畔の別荘。大叔母は六十四年前に妹の失踪と父親の自殺が相次いで以来、ずっとこの湖畔に留まっていたという。死者たちが影を落とす家でのジャスティーンの生活は娘との確執や母親の訪問によって次第に息苦しいものになっていく…。ルーシーが書き記した過去の事件の一部始終と、現在のジャスティーンの葛藤。二つの物語によって明かされる悲しみに満ちた家族の秘密とは?
どこか遠い銀河間の虚無空間に、シャット=アルマロングという名のロボット文明があった。ロボットたちはその用途別にファミリーという単位でグループ分けされ、“永遠の従者”と自称している。自分たちに命令をあたえる“指令コード”を持つ主君を、長年待ちつづけているのだ。あるとき、ロボット文明から追放されて宇宙をさまよっていたクロングとパルスフの両ファミリーが、ヴィシュナの具象ベリーセの目にとまった!
突如地球を襲った未曾有の大災害をスリリングに描き、ヒューゴー賞/星雲賞を受賞した傑作「無常の月」をはじめ、人類未踏の超高密度天体・中性子星に赴いたベーオウルフ・シェイファーの驚異の冒険譚「中性子星」、同じく“ノウンスペース”シリーズに属する「帝国の遺物」「太陽系辺境空域」など、ハードSFの巨匠の数ある作品の中から、ヒューゴー賞受賞作4篇を含む名作中短篇全7篇を収録した日本オリジナル傑作選。
魔術師実習生のシオニーは、来月に迫った紙の魔術師の最終試験の準備中。だがその試験官は、愛する師匠である紙の魔術師セインではなく、彼を毛嫌いするベイリー師が務めることになってしまう。そんなシオニーのもとに、以前、彼女やセインらの命を狙った邪悪な血の魔術師が、護送中に逃亡したという報せが届く。彼女だけが知る魔法の真実を駆使して、シオニーは敵と対決を試みるが…。“紙の魔術師”三部作、完結篇!
その部屋には、何かがいた…。強盗事件のトラウマに苦しむ夫婦は、気分転換にパリ旅行を計画する。節約のため、泊まるのは現地の住人の家だ。しかし、到着してみると、待っていたのは、どことなく不潔で陰気な部屋だった。不安をおぼえつつも、パリでの滞在を楽しもうとする二人を、やがて異変が襲う。どこかから聞こえる子供の泣き声。警告する老女ーはたして二人は生きて帰ることができるのか。戦慄のホラー登場!
死者四名を出した現金輸送車襲撃事件の共犯として、十年の刑に服していたオーディ・パーマー。奪われた七百万ドルの行方を知るとされる彼は、獄中でどれほど脅されても金の在処を吐くことはなかった。そして刑期満了の前夜、オーディは突如脱獄を果たす。翌日には自由と金が手に入ったはずなのに、いったいなぜ?英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞受賞、エドガー賞最優秀長篇賞最終候補になったノンストップ群像劇。
オーディ・パーマーと獄中で仲のよかった受刑者モスは、何者かによって刑務所から連れ出され、妻の命と引き換えに脱獄したオーディを探し出すよう命じられる。また、事件の捜査に当たるFBI特別捜査官デジレーも、十一年前の現金輸送車襲撃事件を見直していた。ふたりはやがて、事件の裏にひそむ巨大な権力の存在に気づく。スティーヴン・キングが絶賛した著者がテキサス南部を舞台に描く、壮大な陰謀と愛と悲劇の物語!
太平洋を航海するヨットの上から落とされた女と、絶海の孤島に吊るされていた男。一体、誰が誰を殺したのか?そもそもこれは、夢か現実か?男の手記、関係者の証言などで、次々と明かされていく三角関係に陥った男女の愛憎と、奇妙で不可解な事件の、驚くべき真相とは!?
「あらゆる謎を万物の関連性から解きほぐす」私立探偵ダーク・ジェントリーは、寝坊して依頼人との約束に大遅刻。慌てて向かった屋敷に待っていたのは、レコードにのった依頼人の生首だった!『銀河ヒッチハイク・ガイド』のダグラス・アダムスが生んだ傑作、抱腹絶倒の奇想ミステリー第二弾。今回の相手は、なんと「神」です。
居酒屋の歌い手が、ある美しい女性の記憶を語る短編「ピム港の女」のほか、難破をめぐる物語、滅びゆくクジラと捕鯨手たちの歴史的考察、ユーモラスなスケッチなど、夢とうつつの間を漂う“島々”の物語。
近年の再評価により注目を集める獅子文六作品だが、生前発表されていた短篇小説の多くは、現在は読むことができなくなっている。それらは戦前から昭和中期までに発表されながらも、今読んでもモダンでフレッシュな魅力を届けてくれる。本書は編者監修のもと表題作「断髪女中」を筆頭に“女性”が活躍する作品にスポットを当てた初文庫化作品多数のオリジナル短篇集。
獅子文六の短篇小説は、生前多数発表され、長篇小説にも勝る魅力を持ちながらも、そのほとんどは読むことができなくなっていた。そんな貴重な作品群から編者監修のもと、“男性”が活躍する作品をコンセプトに編んだ作品集。当時の性に対する社会風刺ともいえる表題作「ロボッチイヌ」を筆頭に、ユーモアと人間味、鋭い批評性にも溢れたオリジナル編集の傑作短篇集。
長女の授業参観に参加していた警視庁捜査一課の広田達也は、下北沢で女性の死体が見つかったとの連絡を受け、急きょ現場へと直行する。そこは以前、広田と原麻希が巻き込まれた殺人事件の現場と同じ場所だった。続けて、広田の娘が何者かに誘拐されてしまう。すべてが八年前と同じ状況ーはたしてこれらは、かつての“アゲハ”事件の再来なのか。伝説の犯罪者アゲハが蘇る、大人気シリーズ最新作。
警視庁は広田の娘を誘拐した犯人が“アゲハ”で、再び国外逃亡を図ろうとしていると推測。アゲハがFBI施設へのテロを計画しているという疑いも出てきたため、公開捜査に踏み切る。一方、別ルートで事件を追いかけていた広田と麻希は、ついにアゲハのもとにたどり着くが、そこで意外な事実を告げられ…。はたして麻希たちは真相に迫ることができるのか。事件はクライマックスへ!
元社畜の小薄れんげ、29歳。現在、京都伏見の古町屋で甘味マニアな男子大学生と、甘えん坊の子狐との共同生活中。理不尽な退職勧告、結婚予定の同棲彼氏の浮気、と人生計画が木っ端微塵な状況で、京都の地に降り立って早一ヵ月。東京とは違うゆるやかな時間の中で自分を取り戻しかけていたが、またもや子狐がらみの怪しい難問が。そのうえ、振り切ったはずの亡霊=元彼までもがあらわれて…。あやかしと老舗甘味を巡る不思議な人気シリーズ、第2巻です!
若き妻と夫の機微を描いた著者初期の意欲作3編。「ソクラテスの妻」は1963年度の芥川賞候補になった秀作。著者自身がモデルとされた作品で、浮世離れした夫の行状に手を焼く妻の苦労が描かれる。「二人の女」もまた芥川賞候補となり、親友をモデルにした「加納大尉夫人」は1964年度の直木賞候補となった。いずれもユーモアと深いペーソスに彩られた、色あせることのない珠玉の一冊である。
戦に生きた男、焦がれる女ー。二人の小さな恋のつぼみ激動の時代に大輪の花は咲かせられるのかー。時代の転換点ともなる戊辰戦争の一連の戦いの中で明治2年3月25日に盛岡藩宮古村で新政府軍と旧幕府軍の戦闘が繰り広げられた。志ある若者と時代に翻弄される女の感涙必至の人間ドラマ。最後に待ち受ける二人の運命が、ただただ眩しく神々しい。