2019年11月7日発売
長崎の油商・大浦屋の女あるじ、お希以ーのちの大浦慶・26歳。黒船来航騒ぎで世情が揺れる中、無鉄砲にも異国との茶葉交易に乗り出した。商いの信義を重んじるお希以は英吉利商人のヲルトやガラバアと互角に渡り合い、“外商から最も信頼される日本商人”と謳われるようになる。やがて幕末の動乱期、長崎の町には志を持つ者が続々と集まり、熱い坩堝のごとく沸き返る。坂本龍馬や近藤長次郎、大隈八太郎や岩崎弥太郎らとも心を通わせ、ついに日本は維新回天を迎えた。やがて明治という時代に漕ぎ出したお慶だが、思わぬ逆波が襲いかかるー。いくつもの出会いと別れを経た果てに、大浦慶が手に入れたもの、失ったもの、目指したものとはー。円熟の名手が描く、傑作歴史小説。
外国人を狙った襲撃事件が相次いで起こり、単独捜査を開始した伊丹。その窮地を救うべく特命係が動き出す「刑事一人」、凱旋帰国した世界的歌姫が誘拐事件に巻き込まれ、さらなる殺人事件へと繋がっていく「ディーバ」、警察密着番組のディレクターが現場に現れた右京と亘をメインに撮影し、お蔵入りになってしまった映像が事件を解く鍵となる「密着特命係24時」など6篇を収録。(連続ドラマ第17シーズンの第8話〜第13話を収録)
東日本大震災の翌日、子宮体ガンの宣告を受けた「わたし」は、家族と離れ、特殊なエックス線照射治療を受ける。この治療に反対する身内、肺ガン闘病中の元同僚、放射線宿酔の夢に現れる今は亡き祖父母たち。著者の実体験をもとにした病と魂の変容をめぐる傑作長編。
銀行強盗の訓練で起きた出来事の顛末(「共犯者」)。殺人犯が改心した理由とは?(「手紙」)。数多ある警察小説を黎明期から覚醒期まで3期に分け、各時代の名手による傑作短編を厳選したアンソロジー。信念を貫きながら組織で揺れ動く等身大の刑事の姿が、多彩に浮かび上がる。
立入制限区域をパトロールするロボット「ウルトラエイト」の居住区に、国税庁から派遣されたという謎の女・財護徳子が現れる。だが彼らには、人間の訪問が知らされていなかった。戸惑いながらも、人間である徳子の命令に従うことにするのだが…。
クィン・ザザ号運行史上、初の異常事態発生!原因不明の病により全男性クルーが倒れる中で龍に応戦するヴァナベル。緊急着陸した霧深いネーベル市で彼女が出会ったのは、龍捕りを嫌う料理人の少女、ラスヴェットだった。
病気の妹を救うためには大金が必要になった小鳥遊夕人は、賞金総額2700億円のVRMMOゲーム『Abyss』の存在に挑む。上級プレーヤーのアリサに勝利し、チームに加えた夕人だったが、次から次へと現れる敵やクリアせねばならないミッションの連続で思うように攻略が進まない。そんなあるとき、夕人は偶然出会ったプレーヤーに、何かただならぬものを感じる。そのプレーヤーの正体を知るため、夕人は一つの賭けに出るのだった。モラル無用の超高額賞金ゲーム、運命の第2巻!
上級職の「ニンジャ」でありながら、「冒険者の酒場」で無為な日々を過ごすプレーヤーがいた。彼の名は「ああうあ」。実戦経験なし、レベル1。冒険者のアイテムを管理するためにパーティーに所属している補欠メンバーだ。「ああうあ」の正体は、前世でプログラマを務めるサラリーマンだったが、不幸な事故で命を落とし、女神の力によって、この世界に転生していたのだった。そんなある日、女神に会った「ああうあ」は、この世界がレトロゲーム風に改造されたことを知る。女神が世界をアップデートするまでに自分のレベルを上げなければ、命が危ない!似たような境遇で過ごすレベル1の「司教」職の「ああういあ」と共に、新たな歩みをはじめるが…。
孤独と怒りを抱えた少女が、崩壊寸前の家族を捨て、全寮制の中学校へ行くのは圧倒的なひらめきだった。家を出て行った父と、それを受け止めた母、静かに悲しむ弟。四人家族の輪から最初に抜けたのは、私。それでも私は「父親」という存在にいつまでも囚われている。孤高のミュージシャン、そして小説家。魂の最新長編書き下ろし。
作者と主人公が哲学問答!?融通無碍な小島信夫の奇想天外ワールド。前巻で描かれた、アキレスとアキレスの馬による「トロイ戦争の原因」に関する考察は本巻でも延々と続き、一向に出口が見えない。と、そこに白い馬が現れ、ようやく物語は動き出すーかと思いきや、突然「作者特別回」が始まり、『別れる理由』という小説そのものについての考察がなされる。しかし、主人公である前田永造が作者に「ねえ、小説家」と電話で語りかけ哲学問答を始めるなど、物語は再び混沌の世界にー。文芸誌「群像」に150回にわたって連載された、小島信夫“執念の大作”の第5巻。当巻には第101話から第125話までを収録。
聖地巡礼スポット・台南を舞台にした表題作ほか、珠玉の短編5編。明治、大正、昭和の3つの時代にわたって、詩歌や小説、文芸評論など幅広い分野で足跡を残した佐藤春夫の、珠玉の小説アンソロジー。表題の『女誡扇綺譚』は、日本時代の台南を舞台に、鄙びた町の姿や、没落豪族の娘の霊との出会いを描いた作品で、作者自ら「五指に入るであろう」と評した幻想的な傑作。改稿を重ねた渾身の一作『田園の憂鬱』は、田舎に移り住んだものの周囲と溶け込めず、次第に病んでいく文学志望の青年を描く。他に処女作品『西班牙犬の家』のほか、『のんしゃらん記録』『美しき町』を収録。『大正幻影』で佐藤春夫を掘り下げた評論家の川本三郎氏が解説。
妻を池の端の出合い茶屋で惨殺された同心・凶四郎は不眠症となり、夜回り同心として江戸の町を見守っている。「武家屋敷に化け猫が出た」「神社の石灯籠が動く!?」-江戸の夜は意外と賑やかだ。一方妻の実家の主が蝦夷地の交易に密かに手を染めているらしいと判明した。果たして妻が殺された真相に迫ることが出来るのか!
家庭裁判所調査官補として研修の間、九州の福森家裁に配属された望月大地。そこでは窃盗を犯した少女、ストーカー事案で逮捕された高校生や親権を争う夫婦とその息子など、心を開かない相談者たちを相手に、懊悩する日々を送ることに…。大地はそれぞれの真実に辿り着き、一人前の家裁調査官となれるのか!?
北関東に、家々の壁に原色で描かれた稚拙で奇妙な絵で話題となり注目を集める小さな町があった。描いているのはすべて、ひとりの男だという。ライターの「私」はその男・伊苅にインタビューを試みるも寡黙でほとんど語らない。周囲に取材を重ねるうちに、絵に隠された真実と男の孤独な半生が明らかにー。
白昼の東京で銀行強盗が発生した。現場に居合わせ、犯行を阻止した栗原太郎は称賛され一躍有名に。だが、強盗らは「栗原は共犯だ」と証言、やがて栗原は姿を消す。十津川警部が彼の素性を調べると、親に捨てられ、福祉施設で育った過去が判明。彼が捨てられていた段ボール箱の謎の文字を手掛かりに、十津川は能登へ向かうが…。
『蛇を踏む』『神様』『溺レる』『センセイの鞄』『真鶴』『水声』── 現代日本文学の最前線を牽引する傑作群を次々に発表し続ける作家・川上弘美が、8年の年月をかけて丹精こめてつくりあげた、不穏で、温かな場所。 どこにでもあるようで、どこにもない、〈このあたり〉へようこそ。 そこは〈このあたり〉と呼ばれる「町」。 そこには、大統領もいて、小学校も、公民館も、地下シェルターもNHKもある。 朝7時半から夜11時までずっと開店しているが、 町の誰も行くことのない「スナック愛」、 六人家族ばかりが住む六人団地の呪い、 どうしても銅像になりたかった小学生。 どこにでもありそうな懐かしい場所なのに、 この世のどこよりも果てしなく遠い。 〈このあたり〉をめぐる26の物語は、どれも短いのに、ものすごく長い。 「この本にはひみつが多い。 そんな気がする。」 ──作家・古川日出男(解説より) 近藤聡乃さんの挿絵に彩られたこの物語を読み終えるとき、 全身が奇妙な感動に包まれる。
警察の支給品を大量に売る店が歌舞伎町に出現した。誰が何のために横流しするのか?(表題作「密売者」)。夜間犯罪発生率日本一の新宿署において、新宿の表も裏も知り尽くし「夜の署長」の異名を取る警部補・下妻晃が、新人女性刑事・村上沙月らとともに、事件に挑む。虚飾と欲望に塗れた街を舞台にした人気シリーズ第二弾!