2019年11月発売
北関東の小さな集落で、家々の壁に描かれた、子供の落書きのような奇妙な絵。決して上手いとは言えないものの、その色彩の鮮やかさと力強さが訴えかけてくる。 そんな絵を描き続ける男、伊苅にノンフィクションライターの「私」は取材を試みるが、寡黙な彼はほとんど何も語ろうとしない。 彼はなぜ絵を描き続けるのかーー。 だが周辺を取材するうちに、絵に隠された真実と、孤独な男の半生が次第に明らかになっていく。 抑制された語り口ながら、読了後に感動が待ち受ける傑作長編。
白昼の東京で銀行強盗が発生した。現場に居合わせ、犯行を阻止した栗原太郎は称賛され一躍有名に。だが、強盗らは「栗原は共犯だ」と証言、やがて栗原は姿を消す。十津川警部が彼の素性を調べると、親に捨てられ、福祉施設で育った過去が判明。彼が捨てられていた段ボール箱の謎の文字を手掛かりに、十津川は能登へ向かうが…。
SNSで話題沸騰、緊急重版! 『蛇を踏む』『神様』『溺レる』『センセイの鞄』『真鶴』『水声』── 現代日本文学の最前線を牽引する傑作群を次々に発表し続ける作家・川上弘美が、8年の年月をかけて丹精こめてつくりあげた、不穏で、温かな場所。 どこにでもあるようで、どこにもない、〈このあたり〉へようこそ。 そこは〈このあたり〉と呼ばれる「町」。 そこには、大統領もいて、小学校も、公民館も、地下シェルターもNHKもある。 朝7時半から夜11時までずっと開店しているが、 町の誰も行くことのない「スナック愛」、 六人家族ばかりが住む六人団地の呪い、 どうしても銅像になりたかった小学生。 どこにでもありそうな懐かしい場所なのに、 この世のどこよりも果てしなく遠い。 〈このあたり〉をめぐる26の物語は、どれも短いのに、ものすごく長い。 「この本にはひみつが多い。 そんな気がする。」 ──作家・古川日出男(解説より) 近藤聡乃さんの挿絵に彩られたこの物語を読み終えるとき、 全身が奇妙な感動に包まれる。
警察の支給品を大量に売る店が歌舞伎町に出現した。誰が何のために横流しするのか?(表題作「密売者」)。夜間犯罪発生率日本一の新宿署において、新宿の表も裏も知り尽くし「夜の署長」の異名を取る警部補・下妻晃が、新人女性刑事・村上沙月らとともに、事件に挑む。虚飾と欲望に塗れた街を舞台にした人気シリーズ第二弾!
「マイナスイオンドライヤーなどの美容家電製品は、廃止すべきです」 大手電器メーカーに勤める科学マニア、羽嶋賢児は、 自社の非科学的な商品にダメ出しをしたばかりに、 最も行きたくなかった商品企画部に島流しに…。 空気を読まずに正論を言う。そんな賢児はやがて部の 鼻つまみ者扱いになってしまう。 賢児のまっすぐすぎる科学愛は、美容家電を変えることができるのか!? 自分の信念を曲げられずに日々会社で戦っている、 すべての働く人に贈ります。 ドラマ化もされた『わたし、定時で帰ります。』で話題の著者が描く、お仕事小説。 (『賢者の石、売ります』を文庫化に当たり、改題。) 解説・塩田春香(会社員・HONZレビュアー)
獅子丸が引退を決意!? 天才的頭脳の少年・論語は、若きスター探偵・獅子丸に “忘れられない女性”プルミエールの正体を知りたいと依頼する。 一方、助手の大河には、さる高貴な男性の醜聞が持ち込まれる。 醜聞の相手は、大河のかつての恋人で……。 真の敵は、天才犯罪者の美少年・論語か、それとも? 京都×シャーロック・ホームズ譚×スター探偵の好評シリーズ第2弾が 文春文庫オリジナルで登場! 巻末には、獅子丸と大河の、ある日の「よりみち」を描いた スピンオフ漫画を特別に収録。
「デフ・ヴォイス」シリーズで話題の著者による傑作長篇! 「居所不明児童」--親などに連れられ所在が分からなくなってしまう子どもたち。 近年社会問題となっている「闇」を通して、「親と子」の在り方を問う物語。 ある日、一人の少女が失踪した。 恋人・祥子の教え子で、父親に連れられて姿を消した小学4年生の紗智。 彼女を探すことになった二村直は、少女の背後に広がる「居所不明児童」、 虐待や棄児、援助交際など、社会の闇を知ることになるーー。 自分自身の結婚への迷いや、親になることへの不安、そしてそれまで目を背けていた過去に対峙し、やがて直はある決断を迫られる。 家族とは何か、親になるとはどういうことか、を問う物語。 解説:大塚真祐子(書店員)
自らを「始皇帝」と名乗るに至った男、〓政(えいせい)。乱世に終止符を打ち、中華帝国を統一した男は暴君なのか、それとも英雄なのか?三歳まで人質として過ごした幼少期、兄との熾烈な玉座争い、家臣との相克ー。天賦の才覚と不屈の精神力で過酷な運命のもとに勝ち上がった〓政(えいせい)の真実を浮き彫りにする、不朽の名著。
昔の男が住む京都で、美しい恋人はどんな反応をするのだろうか。悪意のサプライズ旅行を企画した29歳出版社勤務の「僕」は、関係を持つ三人の女性の誰とも深く繋がろうとはしない。理屈っぽく嫌味な言動、驚異の記憶力の奥にあるのは、絶望か渇望か。切実な言葉たちが読者の胸を貫いてロングセラーとなった傑作。
改築中の佐々木道場の地中から古甕が見つかった。その中身に瑞兆を感じ、胸が高鳴る坂崎磐音だったが、身近な人々に心配は尽きない。縫箔職人に憧れ、悩むおそめ、忍耐の修業が続く幸吉、突然の縁談に戸惑い、思いを残す幼馴染みを訪ねんとする道場師範・本多鐘四郎…。彼らの幸せを願い奔走する磐音を、謎の武術家が襲う!
安永六年、初夏。江戸随一の両替商・今津屋では佐々木道場の改築完成を間近に控え、主な老分番頭が祝いの品を思案していた。一方の坂崎磐音は、道場開きで行う対抗戦に頭を悩ませる。そんな中、南町奉行所定廻り同心の木下一郎太と夜道を歩いていた磐音は、火事の現場に遭遇し、またもや思わぬ事件に巻き込まれることに…。
大崎梢 加納朋子 近藤史恵 篠田真由美 柴田よしき 永嶋恵美 新津きよみ 福田和代 松尾由美 松村比呂美 光原百合 冒険、ミステリー、人間ドラマ、恋愛…… 11人の人気女性作家が同じテーマに挑む短編小説集! 誰しも、自分だけの隠しごとを心の奥底に秘めているものーー。 実力と人気を兼ね備えた11人の女性作家たちがSNS上で語り合い、「隠す」を テーマに挑んだエンターテインメントの傑作! 多彩な物語すべてに、共通の「なにか」が隠されています。 (答えが掲載されている「あとがき」は、最後にお読みください) これが、本物の短編小説集。
ボディランゲージから嘘を見抜く天才、キャサリン・ダンス捜査官。彼女が尋問の末に無実との太鼓判を押して釈放した男が麻薬組織の殺し屋だったと判明、責任を負って左遷されてしまう。だが左遷先で彼女は、満員のコンサート会場にパニックを引き起こして人々を殺傷した残忍な犯人に立ち向かうことに…。シリーズ第四作。
パニックを引き起こして無差別殺人を犯す煽動者は、講演会場やテーマパークで新たな事件を起こす。同時に取り逃がした麻薬組織の殺し屋の一件にも対処しなくてはならないー二つの事件に悩まされるダンス捜査官。物語全体に仕掛けられた騙しが、最後の最後に大いなる衝撃を引き起こす、シリーズ屈指の驚愕作。
日本初の全文訳・訳註付『赤毛のアン』シリーズ第3巻。 アン18歳、ギルバートとカナダ本土の大学へ。美しい港町、新しい友フィル、パティの家での楽しい共同生活。 娘盛りのアンは、貴公子ロイに一目惚れされ、青年たちに6回求婚される。やがて真実の愛に目ざめ、初めての口づけへ……。 英文学と聖書からの引用を解説した日本初の全文訳・訳註付アン・シリーズ、恋に胸ときめく第3巻! アンが語る幸せな生き方 「そうね」アンはゆっくり話し出した。「小さな困難は、笑いのたねと見なすこと、そして大きな困難は、勝利の予兆と考えること。……」第37章「一人前の学士たち」 特徴1)日本初の全文訳 英国詩人テニスンが童話「眠り姫」をモチーフに書いた詩の4行に始まり、同じくテニスンの詩の一節「愛は砂時計を持ちあげる」の章題に終わる日本初の全文訳。 冒頭の詩は、この小説で、アンが少女という眠りから大人の女性へ目ざめ、真実の王子とキスをして結ばれる結末を暗示する。最終章の章題「愛は砂時計を持ちあげる」(本邦初訳)は、アンと「王子」の愛が砂時計を持ちあげ、「眠りの城」で止まっていた二人の愛の時間が流れ始めることを伝える。 特徴2)巻末訳註324項目 作中に引用されるシェイクスピア劇と英米詩の古典、聖書の名句、移民国家カナダにおける各登場人物の民族、19世紀カナダの料理・菓子・手芸、暮らし、草花、衣服、プリンス・エドワード島とノヴァ・スコシア州の歴史、地理、社会、キリスト教、ケルトとアーサー王伝説など、324項目について、69頁にわたる訳註で、わかりやすく解説。 特徴3)口絵写真14点と地図2点 『アンの愛情』の主な舞台はアン・シリーズで唯一、プリンス・エドワード島州ではなく、カナダ本土のノヴァ・スコシア州ハリファクス(小説中ではキングスポートという地名)。 訳者が現地を取材して撮影した小説の舞台の写真(アンが通う大学のモデル、下宿前の墓地公園、ギルバートと散歩する海岸公園、求婚されるあずまや、パティの家の豪邸街)と作中の品々(求婚の花メイフラワー、モンゴメリ家に伝わるゴグとマゴグとの片方)、モンゴメリが本作を書いたオンタリオ州の牧師館など、写真14点。カナダ東海岸の地図と島の地図を収載。 特徴4)あとがき……小説をより深く、楽しく読むために 一、物語の魅力 二、物語の舞台ハリファクス、エヴァンジェリンの土地 三、スコットランド系とアイルランド系の物語 四、ケルトとアーサー王伝説、ゴグとマゴグ 五、キリスト教文学としての『赤毛のアン』シリーズ 六、ケルト・キリスト教を象徴する聖カスバート 七、『アンの青春』の最後と『アンの愛情』の冒頭のつながり 八、ハリファクスに二度暮らしたモンゴメリ 学生、新聞記者として 九、執筆前後のモンゴメリ
「あの事件の日」から、すべては始まったー。1974年10月14日、過激派の次代のエース・下山が突如、東京から失踪した…仲間を、家族を、そして最愛の人を残して。警察は下山を追ったが捕まえることができず、捜査は打ち切りに。そして42年の時を超え、下山は突然、東京に戻って来たーかつての仲間を助け、過去にケジメを付けるために!あの日、下山はなぜ逃げたのか?ケジメの先に彼が知った衝撃の真実とは?極上のエンターテインメント!
年上なのに頼りないバツイチ夫のノブ君と、しっかり者の若オクサン・杳子の二人きりの楽しい生活。時には前の奥さんとの思い出を間違えて口にして暗雲立ち込めたり、突然お義姉さんが訪ねてきたり…二人にとってはドタバタだけど、そこには、暗い夜道にポッと浮かんだ我が家の明かりのようなあたたかさが溢れているー。幸せな笑いに満ちた、木皿泉の初期傑作コメディ!
狭心症を発症し、突然倒れてしまった珈琲店“タレーラン”のオーナー・藻川又次。すっかり弱気になった彼は、バリスタである又姪の切間美星にとある依頼をする。四年前に亡くなった愛する妻・千恵が、生前一週間も家出するほど激怒した理由を突き止めてほしいと。美星は常連客のアオヤマとともに、大叔父の願いを聞き届けるべく調査を開始したが…。千恵の行動を追い、舞台は天橋立に!