2019年12月6日発売
井戸警部の夢の中に、六年前に自殺した身元不明の女性が現れた。その直後に起きた殺人事件の被害者は、夢に出てきた女性にそっくりだった(「死者は瓜二つ」)。直美は、何度も自殺を繰り返すが、偶然に救われていた。そんなとき、彼女の娘がひき逃げに遭い、死亡する。捜査に乗り出した久我山署の刑事たちは…(「死にたがる女」)。長年の経験を活かした刑事たちの推理が冴える傑作五篇。
先手鉄炮組与力・宇佐見伸介は、大川端での火盗改の捕物の首尾が、お忍びの将軍・吉宗の目に留まり、お目見えのうえ業物の鉄砲を拝領する栄誉に浴した。日々のお勤めに戻った伸介は、南町奉行所の笠原彦四郎を通じて秦野諌山という兵学者を知る。立て続けに浪人者が辻斬りに遭った事件と諌山の学塾との関わりが次第に浮かび上がり、不穏な陰謀の影が伸介の前に立ちはだかった。
腕は確かだが難物ばかりが揃う浅草東署。その署で任に当たる新海悟には、二人の親友がいる。テキ屋・瀬川藤太と政治家秘書・坂崎和馬だ。ある日、新海が「三度目の、正直」の言葉と共に撃たれた。犯人を追って奔走する瀬川と坂崎だったが、それぞれにヤクザの跡目、政治家として出馬という人生の選択が訪れる。そして、その選択が友を救う障壁となり…。シリーズ第三弾!書下し。
殺し屋に家族を殺され、独り生き残った少女は復讐を誓う。犯人にたどり着く手がかりはタンゴとシェイクスピア。東京とブエノスアイレスを舞台に、“ロミオ”と“ハムレット”の壮絶な闘いが幕を開ける。アルゼンチン軍事政権時代の暗黒の歴史を絡めた復讐劇はどこへ向かうのか?タンゴのリズムに乗せて破滅へとひた走る、切なく痛ましい殺し屋たちの宿命。圧巻のノンストップ・ノワール。
この世には勝者と敗者しかいない。あらゆる策を弄して自分は勝者になるー幼時に両親を失いアルバイト生活を送る早川吾郎は、新聞・テレビ界を牛耳る“マスコミの帝王”五味大造を叩き潰すことを決意する。手始めに五味の愛娘・奈美子に近付き、背後にうごめく疑惑を探ることに。手を変え品を変えて五味を罠にかける早川、反撃に転じる五味。手に汗握る死闘の行方は!謎とサスペンス満載の傑作長篇!初期代表作!
辻斬りまがいの所業を繰り返している同心がいる!?南町奉行所に投げ文が届いた。笠井半蔵は、旧知の内与力から依頼を受け、真相を探ることに。果たして、同心の目的とは?愛妻の制止を振り切り、事件に深入りする半蔵の前に強敵・三村兄弟が立ちはだかるー。一方、矢部定謙のもとには南町奉行の座を虎視眈々と狙う悪しき影が忍び寄っていた。時代剣戟の好評シリーズ第五弾。
大学で非常勤講師をしている小松は、新幹線で知り合った同い年の女性みどりに恋心を抱いたが、この先どう進めていいか分からない。呑み仲間の敏腕サラリーマン宇佐美のアドバイスで、ふたりは少しずつ距離を詰めていくのだが、そこにみどりの仕事を取り仕切るいかがわしい男、八重樫が現れて…。おっさん二人組の緩やかな友情のなかに、人生の切実さを見つめる傑作。
天才詩人アリス・ウォンが謎の存在“忌字禍”に倒れた。その怪物を滅ぼすために、七十三人を言葉の力で殺害した稀代の殺人者が、いま召還されるー星雲賞を受賞した表題作、同賞受賞の「海の指」他、全七編。最先端の想像力、五感に触れる官能性、現代SFが生んだ最高峰作品集。第38回日本SF大賞受賞。
高校時代に永遠の愛を約束したイフェメルとオビンゼ。アメリカ留学を目指す二人の前に、現実の壁が立ちはだかる。オビンゼと離れてアメリカに渡ったイフェメルを待っていたのは、階級、イデオロギー、人種で色分けされた、想像すらしたことのない世界だった。世界を魅了する物語作家が三つの大陸を舞台に描く傑作長篇。
人種問題を扱う先鋭的なブログの書き手として注目を集めるイフェメル。一方オビンゼは、イギリスからナイジェリアに帰郷し、不動産取引で巨万の富を得て、美しい妻や娘と優雅に暮らしている。別々の道を歩んだかつての恋人たちに、再会の時が訪れる。全米批評家協会賞受賞の長篇代表作、待望の文庫化。