2019年5月31日発売
あなたは我が子のために帰ってきた。 わたしを愛していたからではなく……。 ベスとカラムは平凡ながらも幸せな夫婦……のはずだった。 けれど彼女にはなかなか赤ん坊ができず、不妊治療も失敗が続いた。 そんな妻に愛想を尽かしたように、カラムは離婚を切り出し、 仕事と言って遠い異国へ旅立ってしまう。 ところがその後、ベスは自分が妊娠していることに気づいた。 やっと苦労が報われた。これでカラムとわたしは親になれる……。 だが喜びは続かず、ベスが書いた手紙に彼からの返事はなかった。 捨てられた失意の中、彼女は待ち望んだ赤ん坊を出産して育て始める。 だから1年後、突然カラムが戻ってきても、ベスの気持ちは複雑だった。 心は親子で拒絶された悲しみと、今もつのる彼への愛に引き裂かれていた。 2017年、惜しくもこの世を去った名作家J・テイラー。今作は彼女が闘病中に執筆した一作です。元夫婦のあいだに生まれた、未来の象徴である小さな女の子に、作家がどんな思いを託していたか……。愛と命を紡ぐ温かな涙流れる物語を、どうぞお読みのがしなく!
引きとめてほしいのは、 秘書ではなく、女として。 「突然ですが、ぼくは婚約しました。相手は秘書のアデレードです」 ボスで富豪のデンプシーに公の場で宣言され、アデレードは呆然とした。 彼にないがしろにされ、仕事を辞めたいと申し出た矢先なのに? だがそれは、有能な秘書に退職を思いとどまらせるために、 彼女のお人好しな性格を利用した、デンプシーの巧妙な手口だった。 さらに、ひと月だけでも婚約者を装って、彼の下で働くよう命じられる。 貧民街に暮らしていた少女時代からずっと、デンプシーが好きだった。 これが愛ある本物の婚約だったなら、どれだけ幸せなことだろう……。 そんなアデレードの純情も知らず、我が道を行くデンプシーは、 これから彼の屋敷で寝泊まりしろと告げ、彼女の身も心も翻弄するーー アデレードの長年の片想いを軸に描かれる、ボスと秘書のもどかしくも甘やかな恋物語。愛を信じられない大富豪デンプシーが演じる偽りの婚約は、いったいどんな展開に……? スター作家、キャサリン・マン作『富豪が残したあの夜の証』(D-1751)の関連作。
終わりなき記憶の闇のなか、 愛だけが光をくれたのに……。 病室で目覚めたとき、クレアはいっさいの記憶を失っていた。 手首の名札で自分の名前だけはわかったものの、 夫と名乗る実業家マットの顔を見ても、何も思い出せない。 強盗に襲われて頭にけがをしたのが原因のようだが、 マットの広大な屋敷に移って看護を受けるうち、順調に快復していった。 魅力的な夫に、快適な生活。けれど、なぜか不安がぬぐえないーー 彼の発言や態度につじつまが合わないところがあるのだ。 それでもクレアはやがて、自分がマットを愛していることに気づく。 正直に愛を告げた彼女に、マットは重い口調で残酷な事実を告げた。 「結婚生活はとっくに破綻して、僕たちは別居していたんだ」 じつは家族を知らずに施設で育ったクレアですが、その記憶さえも失った今、すべてを知るのは夫であるマットだけで……。作者自身、ヒロインと似た境遇の少女時代を過ごしてきただけあって、その分物語に深みが与えられています。切ないすれ違いに涙する大傑作!
これまでひたむきに勉学に励んできたキャロラインは、あまりに奥手で、異性にたいして素直にふるまうすべを知らない。そんなキャロラインが、病で倒れた同僚に代わって、男社会ともいえる仕事場に突如放りこまれることになった。そこで彼女を待っていたのは、数々の功績を築き、要求の厳しさで部下から畏れられる上役のジョー・マッケンジー。ジョーのオフィスにおもむいたキャロラインは、彼女の身元調査ファイルを手にした彼の言葉に、耳を疑った。「君は男とつきあったことがない。男ばかりのこの職場ではトラブルのもとになる。連中が手を出せないように、僕のものになれ」
ふとどきで美しい伯爵の、 温かな腕にさらわれて……。 「私の純潔と引きかえに、弟の土地を返していただけないかしら?」 遊び人と名高い伯爵ガブリエルに向かって言葉を絞り出した瞬間、 きまじめな令嬢キャロラインの頬は燃えるように熱くなった。 賭事に負けた父のせいで、愛する弟の未来が奪われるなんて耐えられない。 そして私も、悲惨な結婚をさせられる前に一夜だけでも夢を見たい……。 「話はわかった。だが僕も、処女を金で買うほど落ちぶれてはいない」 軽くあしらわれて追い返されたキャロラインだったが、 残忍で醜い中年男との結婚は刻一刻と迫ってくる。 すべてを諦めかけたある日、父が道楽で雇った僧衣の詩人が現れた。 キャロラインだけはすぐに気づいたーー彼がガブリエルであることに。 ガブリエルに導かれて父の手を逃れ、地味な家政婦に変装して田舎の屋敷に隠れたキャロライン。平穏な日々もつかの間、ふたりでいるところを父に見つかり、ガブリエルは大混乱のさなかに愛なき結婚を申し出て……。甘く儚い愛の夢、〈不肖の四貴族〉最終話です。
乙女の尊いまでの純真さが、 冷淡な伯爵の本気を揺り起こすーー 美しき黒髪の伯爵アレックスは名うての放蕩者だが、 不貞をかさねて父を苦しめた母のせいで、女性には冷淡だった。 そんな彼のもとに、ある日、敬愛する伯父が若い娘を伴い現れた。 宝石のような瞳を持つそのアンジェリーナという名の娘は、 かつて伯父との結婚を反対され大陸へ渡った、昔の恋人の忘れ形見らしい。 貧困にあえいできた彼女に、礼儀や作法はこれから学ばせるという。 アレックスは、伯父が財産をだまし取られるのではないかと疑い、 この娘を早いところ誰かに嫁がせて、厄介払いしようと考える。 ところがアンジェリーナは言い切った。「結婚なんてしたくありません」 面白い。ならば生意気な小娘を、このわたしが誘惑してやろう。 結婚など跡継ぎのためだけと割り切る女嫌いの伯爵と、絶対に結婚などしないと決めている男嫌いの乙女。互いに心の傷がもとで異性を信じられなくなった二人の、恋の火花が深い愛に昇華するまでを描いた劇的シンデレラ・リージェンシーをぜひご堪能ください。
イタリア富豪ジャンニ・デルッカとの政略結婚か、勘当かーキーリンは苦しい選択を迫られていた。傾きかけた父の会社を救うには、ほかに道はない。でも、愛のない結婚なんて、あまりに悲しい…。どうしたら彼のほうから破談にしてもらえるかしら?キーリンは知恵を絞ったすえ、その日からジャンニと会う日だけ、着慣れない挑発的なドレス姿で、彼に嫌われようと努力を重ねた。なのに、いくら富豪の未来の妻にふさわしくない言動をとっても、ジャンニはハンサムな顔に蠱惑の笑みを浮かべるだけだった。そして、ついに結婚式当日を迎える。本当はバージンだと彼に打ち明けられぬまま。
ある雨の朝、ブルックは勤務先の病院で思わぬ人物と再会した。6年前にパーティで出会い、お互い名前さえ知ることなく、熱い一夜をともにして別れた男性…。どうして彼がここに?上司によれば、彼はジェド・マシューズという優秀な医師で、この病院の診療部長に就任したばかりだという。とっさにブルックは初対面のふりをしたものの、鋭い目に威厳を浮かべたジェドの命令で彼のオフィスに呼び出された。おびえながらジェドの前に立ったとき、彼女は最悪の事態を覚悟した。きっと彼は、自分には5歳の息子がいることを調べ上げ、わたしの手から奪い去るつもりなんだわ!
亡き父の借金返済に追われる天涯孤独の秘書、キャロラインはある日、まだ会ったことのない社長グスターフの部屋に呼び出された。そこにいたのは、先日、豪雨の日に助けてくれた、長身でたくましくーでもひどく傲慢でぶしつけだった男性。彼が社長と知っただけでも驚きなのに、借金返済を肩代わりする見返りに期間限定の妻にならないかと持ちかけられ、キャロラインは呆然とするばかりだった。折しも、邪悪な金貸しの男からおどされていたのだ。2週間以内に全額返済できないなら愛人になれ、と。彼女は愛されないのを承知で、グスターフとの結婚にすがるしかなく…。
5年前、ステファニーは弟の危機を救うため、 富も権力もあわせ持つ大富豪ドミニクと愛のない結婚をした。 だが、冷徹な彼は妻を都合のいい愛玩人形として見ているだけ。 抱かれたら感じてしまう自分が許せず、いまは夫と別居している 彼女のもとに、ある日、ドミニクから電話がかかってきた。 “きみが条件さえのめば、正式に離婚してもいい”というのだ。 応じたステファニーは、仲睦まじい夫婦を演じることになるが、 夫と出かけた場で、若い娘がドミニクに恋していると気づき、 頬をこわばらせてしまう。彼との間に愛などないはずなのに……。
家の窮状を救うため、ある投資家の要求を聞いてほしいー会社を危機に陥らせた兄の懇願に、カサンドラはうろたえた。投資家ディエゴは、彼女と4夜を過ごすことを条件に、援助を申し出たのだという。カサンドラの胸はかき乱される。カサンドラにとって、美しいディエゴは目の毒でしかない。ずっと好きだったのだ。見るだけで胸が締めつけられるほどに。しかも、非情と噂される彼にかかわれば傷つくことになるだろう。ためらうカサンドラに、純潔を捧げる初夜が来て…彼の唇は、いともたやすく封印していた恋心を揺さぶり起こした。
垢抜けない、太めのホープにまさかの奇跡が起こり、 ハンサムなギリシア人投資家アンドレアスと、同棲し始めて2年。 交際記念日を指折り数えていたが、友人が心ない言葉を呟いた。 プレイボーイの彼にとって、ホープはただの愛人にすぎないと。 確かに、アンドレアスは何かにつけて冷淡な態度をとるし、 将来を話し合ったこともなければ、家族に紹介されたこともない。 落ち込むホープだったが、家族パーティに招待され有頂天になる。 その日のうちに、絶頂から奈落に突き落とされるとも知らずに。 「君のことは、愛人としか思っていない」と断言されて。
秘書のヘレンは、ギリシア人社長ニックから愛人関係を迫られ、逃げるように故郷に帰るが、そこでも災難が待っていた。よりにもよって親友の夫にしつこく言い寄られ、求愛されたのだ。困り果てていたヘレンの前に、ニックがふたたび現れる。「きみを手に入れるためなら、結婚してやってもいい」という傲慢なニックとの結婚を、ヘレンは親友を傷つけたくない、それだけの理由で受け入れたのだった。ところがニックは、彼女が別の男性と視線を交わすだけで激高する、潔癖な夫だった。だから親友の夫の執着を知られるや、痛烈な嫉妬を浴びせられー
両親を飛行機事故で、そのあと娘と夫も交通事故で喪って、埋めることのできない心の空洞を抱える彼女を、シャーリーと愛称で呼ぶ者は少ない。その数少ない友人マットのフラットに、いま、自宅をぼやで焼かれたシャーリーは間借りしている。そこへある日、友人の知己と称する男アーロンが押し入ってきた。蔑みもあらわにシャーリーを眺めるや、マットの妻が来るから、君が愛人であることを隠さなければ、と言うのだ。邪推のひどさに面食らって、誤解をとこうと顔をあげると、彼はにべもなく言い放った。「すぐに僕の恋人のふりをするんだ」