2019年5月発売
一番弱いのに、一番楽しくサッカーをやれる「牧原スワンズ」の四年生チーム。公式戦では一勝はおろか、まだ一点も取ったことがない市内屈指の弱さを誇っている。今年最後の公式戦となる市大会に挑む子どもたち。しかし、チームの活動を手伝う父親たちは、それぞれに悩みを抱えていた。八組の家族のありようとその成長を描き、すべての頑張るお父さんと子どもたちへあたたかなエールを贈る物語。
神様、ぼくはどうして生まれてきたんですかー。霊山・御嶽の麓の町で、悲惨極まりない人生を送ってきた少年、潤。生きることの意味を問うために、神の棲まう山、御嶽へ向かう。悪天候のなか、強力の孝は、書き置きを残し山に入った潤を捜索することに。神を求め、信じる潤。長く山で暮らしながら、神を信じぬ孝。大自然の猛威に翻弄されながら、二人が命の炎を熱く燃やす。哀哭の山岳ノワール。
東京生まれの箱入り娘・華子は、結婚を焦ってお見合いを重ね、ついにハンサムな弁護士「青木幸一郎」と出会う。一方、地方生まれの上京組・美紀は、猛勉強の末に慶應大学に入るも金欠で中退。現在はIT企業に勤めながら、腐れ縁の「幸一郎」との関係に悩み中。境遇の全く違う二人が、やがて同じ男をきっかけに巡り会いー。“上流階級”を舞台に、アラサー女子たちの葛藤と解放を描く傑作長編。
人気弁護士の彩と義理の弟の克己は、本当の肉親以上に信頼し合っていた。ある夜、彩と不倫関係にあった男性が、彼女の職場で突然死する。スキャンダルを恐れた彩に助けを求められた克己は、事故死に偽装する。だが、夫の死を不審に思う妻が彩の事務所に相談しにやってくる。彩は克己の反対を押し切り、彼女の依頼を引き受けるが…。コンプレックスやトラウマなど、心の闇を抉り出す衝撃作。
高須藩の六男に生まれ、会津松平家の養子となった容保。初代藩主保科正之が定めた会津藩家訓による徳川将軍家への絶対随順を、精神に叩き込まれる。幕末の動乱期、家老たちの反対を押し切って京都守護職を拝命。京都の治安に尽くし孝明天皇の信を得る。だが、戊辰戦争で朝敵の汚名を着せられ…。信じた正義のために潔白を明かそうと、信念を貫いた武士の誇り高き人生を描く書き下ろし歴史小説。
帝に舞を披露したことで注目され、突然「モテ期」が到来した宗孝。女房たちから何通もの恋文をもらうが、和歌が苦手で返事に悩む中、中将宣能は、筆跡から書き手の感情が読み解ける妹の初草に、文の鑑定をしてもらおうと言い出し…。一方、九の姉が振り付けた桜の舞で大成功をおさめた稲荷社の専女衆は、次の演目として「藤の舞」を計画していた。手伝いをすることになった宗孝だが…?
中学生の樹が亡き祖父から受け継いだハート形の水晶。その石精である雫は、樹の心を癒し、鉱物の魅力を伝えてくれた。他の石精も見ることができる樹は、カリスマコレクターの抱える人知れぬ苦悩を知り、骨董屋のおじさんの桜石にまつわる思い出に触れる。そして、翡翠の産地である糸魚川へとー。地球の生んだ芸術品・鉱物の魅力に溢れたセンシティブな物語。著者による鉱物エッセイも収録。
理想の獣医師像を追い求め、大学院への進学を選んだ狛村風香。しかし、彼女が配属されたのは牛マニアとして有名な牛沢秋尾准教授によって新設された「獣医ミステリー科」であった!?動物業界で起きる謎を、獣医の知識で解き明かす?牛沢からの突然の提案に戸惑う狛村だが…。最初の課題、原因不明の火災を起こす『狸の祟り』の調査を進めるにつれ、解決すべき本当の問題が見えてくる…。新米獣医師狛村風香挑んでいきます!
オレは死んだ、22歳の春に。中世ファンタジー風の世界で目覚めた主人公トーリは、どこか様子がおかしいことに気づく。噂に聞く異世界転生かと思いきや、巷でよく聞くテンプレート化された異世界とは何かが違っていた。アヴニール王国で生きる人々はすべからく現代日本で死せる者達だったのだ。人はそこを第二世界と呼んでいたー。これはオレ達が体験した、異世界だと思っていたものが実はそうではなかったことを知るまでの、異世界転生アンチテーゼ。
キャシーは突然勤務先に現れた国王イオルゴスの手で、強引に宮殿へと連れていかれた。結婚を控えた彼の妹とキャシーの兄が駆け落ちしたとわかり、裏で手引きしたと疑われているのだ。わたしは何も知らないわ!揉み合いになった拍子にイオルゴスの唇が彼女の唇に重なり、キャシーの全身を初めての熱い衝撃が貫いた。ようやく容疑が晴れたあと、醜聞から君を守るためだと言って王室の別荘に強引に連れてこられたキャシーは身を震わせた。今すぐに逃げだしたい。でも…彼のことをもっと知りたい。
リアは、数週間ぶりに恋人ジャコと会えた喜びに胸躍らせていた。世界を飛び回る富裕な実業家の彼が、帰宅早々、仕事の電話があると寝室に引き揚げてしまっても、幸福に満たされていた。赤ちゃんができたのーそう告げたら、彼は喜んでくれるかしら?待ちきれず寝室へ向かったリアはしかし、ドアの前で凍りついた。「愛してるよ、フランチェスカ」私の知らない女性の名を、甘く囁く彼。リアは絶望し、黙って彼の前から姿を消した…。1年後、生後まもない息子とリアの侘び住まいに、侵入者がー。
22歳のエルヴィは父の死後、継母と異母弟を支えて生きてきた。手芸用品店で働く身では、男性との出会いはほとんどないが、何度か見かけた継母の雇い主の富豪ザンダーに密かに憧れている。ある日、彼の所有する骨董品を盗んだかどで継母が訴えられた。何より家族を大事にしてきたエルヴィは彼に懇願の手紙を書く。すると、自ら情け知らずと豪語するザンダーはエルヴィを呼び出し、魅惑的な曲線を描く彼女の体を見回してから平然と言ってのけた。「君の体を僕に捧げてくれれば、訴えは取りさげてやろう」これは脅迫よ!即座に拒んだエルヴィだが、心は乱れて…。
最愛の祖母を失い、シャーロットは悲しみに暮れていた。英国貴族カーライル男爵の名をかたる詐欺師に騙された祖母ベティは、心労がたたり、愛犬たちをシャーロットに託して急死したのだ。さらに愛犬のうちの1匹、フロッシーが逃げだしてしまい、愕然とする。だが捜し疲れた彼女の前に、見知らぬ美男がフロッシーを連れて現れた。ようやく安堵したのもつかのま、悪天候で立ち往生した彼、ブリンを家に泊めることになり、シャーロットはたちまち緊張した。ああ、こんなにすてきな人と、ひとつ屋根の下で夜を明かすなんて…。ところが、真夜中になり、雷鳴に叩き起こされた彼女と犬たちは、恐怖のあまり、別室で寝ていたブリンのベッドの中に飛び込んだ!まさか彼こそが本物の、第12代カーライル男爵とも知らずに。
2年前、スニータは公国のプリンス、フレデリックと半月ほど交際し、ただ一度だけ夜をともにした結果、彼の子を身ごもった。しかし、それを誰にも知らせず、亡き母の故郷に帰ったのは、妊娠して捨てられた母と同じ道を辿るのではという恐怖にかられたから。そして生まれた子どもは、王家の者として奪われると考えたからだ。しかも彼は兄と父王を相次いで亡くし、今や公国の君主となっていた。そのフレデリックが、ある日突然、スニータの前に姿を現した。さまざまな手を尽くして彼女の居場所を突きとめたらしい。彼女が隠してきた息子も見つけ、世継ぎの母として妃になれと言うー愛は与えないが、結婚後はさらに子を望む、と彼女を翻弄しながら。
憧れの仕事につけて、ミランディは意気揚々と張り切っていた。ところが、CEOがかつての恋人ジョーと知って仰天する。十代のわたしのすべてだった男性。でも、彼にとっては遊びだった。ジョーはミランディと再会すると、何事もなかったように近づいてきた。そして彼の秘書として、南仏への出張に随行するように命じた。ジョーは、わたしがまだ言いなりになるものと思っている。家族がみな心から喜んでくれた、この転職をふいにしたくはないけれど、彼に誘惑されたあげく、また捨てられたら、わたしは壊れてしまう。それに10年間、ジョーには言えなかった秘密がある。彼の子を妊娠していたのに、その後亡くしてしまったのだと…。
グレンナとブロデリックは恋に落ち、親密な時間を共有したが、犬猿の仲の一族同士で将来の約束もできず、泣く泣く別れを選んだ。歳月は流れ、いまグレンナは彼と望まぬ再会を果たしていたーブロデリックの元恋人が置き去りにした、小さな赤ちゃんを前にして。驚いたことに、この子の父親はグレンナの亡夫の可能性もあるという。彼女は言葉を失った。何度も流産を繰り返し、結局子供を望めない体になったわたしを陰で裏切っていたなんて。いまや石油王となったブロデリックも動揺していたが、やがて意を決したようにこう告げた。「この子を一緒に育てないか」彼の思いがけない言葉に、グレンナの心は千々に乱れて…。
イスラエル諜報機関と英国MI6の極秘作戦がリークされたー。西側の貴重な情報源だったロシア人工作員が英国へ亡命直前、暗殺されたのだ。組織内部に潜むロシアの二重スパイ“モグラ”をめぐり、MI6上層部にまで疑惑の目が向けられるなか、やがてガブリエルは敵の真の狙いに気づくが…。同じ頃、アンダルシアでは“赤い女”と呼ばれる老女が事件の鍵となる回想録を綴っていた。
“赤い女”の存在に行き着いたガブリエルはついに裏切り者の正体を知る。思いもよらぬ人物の後継者がロシアのスパイとして、西側情報機関の中枢に潜入していたのだ。冷戦時代の悪夢が蘇る危機的状況にMI6長官から事態収束を託されたガブリエルは、その背後にいる狡猾な敵を欺くべく、決死の一手を繰り出すー。クレムリン最深部で、ひそかに育まれた世紀を超えた策謀とは!?
ヴィッキーは父親代わりにかわいがってくれた叔父の会社を救うため、ギリシアの敏腕実業家テオと、名ばかりの期限つき契約結婚をした。離婚の際には多額の金を支払うというテオの言葉を信じて。だがある夜、テオの妖しい瞳に惑わされるように、彼と結ばれてしまう。自分の行いに動揺して、ヴィッキーが思わず屋敷から逃げ出すと、怒り狂ったテオは一方的に彼女を離縁し、そのまま2年の月日が流れた。今、ヴィッキーは勇気を振り絞り、テオに会いにやってきた。恵まれない子供の慈善事業のため、どうしても約束のお金が必要なのだ。しかし、テオの無慈悲な要求が、彼女をうろたえさせる。「金が欲しければ、ぼくのベッドまで一緒に来るのが条件だ」