2020年12月18日発売
大坂夏の陣から七十年、“刀は武士の魂”と称されてはいるものの、真剣で戦う機会はほぼ無くなっていた時代。幼少期、「弱虫竹太郎」と呼ばれた赤穂藩の大石良雄は、師・山鹿素行や大叔父・頼母助、祖父・良欽の教えを受け、二十一歳で家老職を継ぐ。勘定方や商人など様々な立場で国を支える人々に出会い、世を統べる武士の信念を抱いてゆく。やがて藩主・浅野内匠頭に再会した良雄はその清らかな心に惹かれながらも、危うさを感じ取るがー。後年、決起を共にする堀部安兵衛との邂逅など「事件」前夜を描く、伊集院静版・新忠臣蔵。
私たちはこんなにも弱くて、脆い。それでも生きることから、逃げられない。音大のピアノ専科に通う真尋は、大学の授業で人の心を癒やすための音楽に出会った。今まで自分が演奏してきたのとは全く違う音楽の世界に興味を持った真尋は、即興演奏をもとに患者の抱えた問題と向き合っていく音楽療法の実習を受けることに。誇れる娘であってほしいと悪意なく邪魔し続ける母親にもめげず、クライエントと音を通じて向き合い続ける真尋だったが、次第に彼女自身が抱えた秘密も明らかになってゆきー。切ない痛みと力強い決意を描いた感動作!
赤穂の田舎侍がー。元禄十四年、赤穂藩主・浅野内匠頭は江戸城・松の廊下で吉良上野介に対し刀傷沙汰を起こし、即日切腹の裁定が下される。赤穂藩士は堀部安兵衛ら急進派が目論む吉良への仇討ちとお家再興の間で揺れ動く。双方の志と痛みを受け止めた家老・大石良雄は全てを擲つ覚悟で、訪れるであろう復讐の時を待っていた。そして明らかになる良雄の周到な計画と、時代を超えた復讐の狙い。良雄の計画を陰で支える四十八番目の志士の正体とは?日本史上最も有名な復讐劇を独自の視点で描き切った歴史長篇、完結!
えんとつ町は煙突だらけ。 そこかしこから煙が上がり、頭の上はモックモク。 黒い煙でモックモク。 えんとつ町に住む人は、青い空を知りません。 輝く星を知りません。 『えんとつ町のプペル』は、こんな独白から始まります。 2005年、西野亮廣が絵を描き始めたあの日から、「テレビのひな壇には出演しない」と言ったあの日から、何年間にもわたるバッシングが始まりました。 『えんとつ町のプペル』を書くキッカケとなった時代です。 えんとつ町は、夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる現代社会そのものです。 ファンタジーなどではありません。私たちの身の回りで実際に起きていることです。 黒い煙に覆われたあのとき、あの場所で、それでも西野が「星の存在」を信じ続けられたのはなぜか。 コロナ禍に多くの人が苦しむ2020年。、映画『えんとつ町のプペル』公開を機に、 今にも灯が消されてしまいそうな人に寄り添い、生き延び方を伝えることを目的として 『えんとつ町のプペル』の裏側に秘められた想いを明かします。
謎の求人、鶏舎での「捕鳥」。警備会社での孤軍奮闘、仲間との絆、裏切り、そして決別…。ろくでなしのオヤジは、なぜ「探偵」になったのか。北の大地を舞台に繰り広げられる、スーパー破天荒な人生の物語。ちょっとだけ平凡をはみ出した男の、実話のような作り話。
私は寧ろ人間よりも人魚の種屬に墮落したい。-「人魚の嘆き」。お前は初めから人間などに生れる必要はなかつたのだ。-「魔術師」。初版刊行以来一〇一年目にして当時の風合いをそのままに美装復刻!!
権力はそんな彼を「囚人」にした。黄〓暎(ファン・ソギョン)は行動する作家として、労働現場、ベトナム戦争、民衆文化運動、韓国民主化・南北統一運動の渦中に身を投じ、そこに生きる人びとの姿を伝えようとした。権力はそんな彼を「囚人」にしたが、本書はその「囚人」の眼を通して、韓国現代史を生き抜いた人びとの真実を描きあげ、韓国民主化の精神を次代につなぐ文学的自伝である。
獄舎から「作家の自由」を求めて。僧侶を志した青年期の放浪、懸命な愛を注いでくれた母への想い、獄舎で出会った不遇な人びとへの共感、戦場での余りに苛酷な運命、妻の献身と不憫な子への悔悟、光州の闘いに敗れた若者への自責、そして何より独裁権力への強い怒りと闘いの日々。韓国現代文学の絢爛たる開花の沃地となった民族の記憶を作家みずからが語る。
潮が香り、砂が鳴く因幡の風が湾から谷へ吹いてくるー舞鶴軍港建設に貧窮脱出を賭けた因幡の部落民。だがそこには差別が残り、酷酷な労働は命を奪う。日本の「近代」は本当に「近代」なのか。水平社を模した八東社の旗が揺れる。