2020年2月26日発売
第32回小説すばる新人賞受賞作。 選考委員・村山由佳氏 絶賛! 「遠い時代を生きる主人公たちの運命に、こんなにも胸かきむしられるとは。 新人離れした豪腕」 海沿いの地にある鎌倉幕府。 美しい景色とうらはらに、そこには陰謀、嫉妬、憎しみが渦巻いていた。 そんな中、若き三代将軍・源実朝のもとに、摂関家の姫・信子が嫁いでくる。 突然の縁談と異国の地に不安を覚える信子だったが、実朝の優しさと生まれて初めての海の匂いに包まれ、次第に心をゆるしていく。 一方の実朝も、信子が教えてくれた和歌の魅力に触れ、武の力ではなく言の葉の力で世を治めたいと願うようになる。 しかし、殺戮さえいとわない醜い権力争いが、ふたりを否応なく悲しみの渦に巻き込んでいくーー。 新世代の作家が描く、何度も心を揺さぶられる歴史恋愛小説。 【著者略歴】 佐藤 雫(さとう・しずく) 1988年、香川県生まれ。2019年、「言の葉は、残りて」で第32回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。
人を天国へと導く幻獣「しゃもぬま」が、ある日、私の家のドアをノックしたーー。 待木祐(まちきたすく)は、「夏みかん」の栽培と、「しゃもぬま」という馬のような動物がいるこの島で生まれた。しゃもぬまは死後必ず天国に行くことから、神聖視されている。しゃもぬまは死期が近づくと、島の人間を一緒に天国に連れて行ってくれることがある。そこから、島の人間で誰かが死ねば、しゃもぬまを葬式に呼び、反対にしゃもぬまから「お迎え」がきたら、誰か一人を死なせる慣習が生まれ、永く島では守られている。今の祐の仕事は、風俗情報誌の編集。ある日、睡眠障害に悩まされ、心身ともに疲弊した祐のアパートに、しゃもぬまがやってきた。困惑しながらも、しゃもぬまを受け入れ、死との共同生活が続くうち、祐は奇妙な白昼夢を見るようになる。また、島にいたころの親友・紫織が家に押しかけてきたのを皮切りに、島の人間も不穏な動きを見せ始める。夢の中に現れる女性の正体、そしてしゃもぬまが迎えにきた人間とは。 人を天国へと導く幻獣「しゃもぬま」が住む島。美しい少女たちの記憶と、呪われた家系の秘密。あの世へと誘われるのは、いったい誰なのか。幻想と現実を切り裂く、衝撃のデビュー作。第32回 小説すばる新人賞受賞作。 (著者略歴) 上畠 菜緒(うえはた なお) 1993年、岡山県生まれ。島根大学法文学部言語文化学科卒業。本作により第32回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
小間物屋の倅が、夜な夜な怨霊を祀る神社へ通っている。相談を受けた浮雲は、別の心霊事件との接点を見出し…-(御霊の理)。想い人の伊織が武家へ嫁ぐことになり、複雑な思いを抱く八十八。さらに伊織が雀の群れに襲われる心霊現象に悩まされるようになる。-(コトリの理)。遊女を襲い、その血で絵を描こうとしたという絵師。常軌を逸した男が次に狙うのは!?-(血縁の理)。死者の霊を見つめる赤眼が、江戸の心霊を祓う!シリーズ第6弾!!
孤独で辛くて怖いのは、この世で自分だけだと思っていた。 東京生まれの秀才・佳乃と、完璧な笑顔を持つ美少女・叶。 北海道の中高一貫の女子校を舞台に、やりきれない思春期の焦燥や少女たちの成長を描く、渾身の書き下ろし青春長編。 北海道に新設されたばかりの中高一貫の女子校・築山学園。進学校として全国から一期生を募り、東京生まれの宮田佳乃は東京からトップの成績で入学した。同じクラスには地元生まれの成績優秀者・奥沢叶がいた。奥沢はパッと目を引く美少女で、そつのない優等生。宮田はその笑顔の裏に隠された強烈なプライドを、初対面のときからかぎ取っていたーー。 【著者略歴】 安壇 美緒(あだん みお) 1986年北海道生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。2017年、『天龍院亜希子の日記』で第30回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。本作は2作目の著書。
あなたは使い捨てられてはなりませぬ。私のようにーー 栄華をきわめつつある主の藤原道長から、物語の女房を命じられ、華麗な「源氏物語」を書き継いできたが……宮中に渦巻く陰謀に、物語が切り結ぶとき。 第11回日経小説大賞受賞!(選考委員:辻原登・高樹のぶ子・伊集院静) 『源氏物語』を書いた紫式部の一代記。「紫式部日記」が実在の作品であるだけに、あえて「新」とタイトルにつけフィクションを紡ぎ上げたところに、作者の周到な企みがうかがえる。 本作には最新の源氏物語研究の成果が活かされている。紫式部の生涯や、『源氏物語』誕生秘話を描いた著作は、専門家によるとそれほど珍しくはない。しかし、本作は、平安時代においては、物語を書く行為そのものが政治性をおびていたことを明らかにするところが新しい。 「日記文学の傑作、しかも『源氏物語』の作者の日記に新たな日記を捏ち上げ、ぶつけるという、これほどの大胆不敵はない。パロディならともかく、真正面からオーソドックスに、とはハードルが高過ぎる。しかし、作者は鮮やかにそのハードルを跳び越え、極上の宮廷物語を物した。『源氏』を構成の中心に据え、それを下支えする本物の「紫式部日記」、それに被せるように架空の「日記」、そしてもう一つの物語『伊勢物語』を、有機的に、歯車のように嚙み合わせ、重層的な展開が可能になった。『源氏物語』そのものが、一層の輝きを放って読者に迫って来るという功徳も齎された」(辻原登氏選評より)
「一気に街が更新されるチャンスなんて、そうそうないんだよ」 建築に携わるぼくを焚きつける芸術家の兄。五輪を間近に控えた首都のざわめきの中で、ぼくは自分の仕事に対する確信を持った。 第11回日経小説大賞受賞!(選考委員:辻原登・高樹のぶ子・伊集院静) TOKYO2020、と書かれたまっしろな紙を目にして、かあっと頭に血がのぼった人と、そうでない人がいる。ぼくはともかく、業界的にぼくの勤めている会社は圧倒的に前者でできている。関東大震災からほぼ100年、表皮の入れ替わり続ける街でぼくは何をすべきなのかーー 第11回日経小説大賞を受賞した本作は、五輪を目前に控えて新たな施設の建設・再開発ラッシュに湧く東京で、地道に建築設計に携わる若者が、陶芸作品が現代アートとして海外で高く評価されている破天荒な芸術家の兄に振り回されながら、自身のアイデンティティを見いだしていくタイムリーなお仕事小説。 「日本はまだ普請中」。兄の創作活動に欠かせないパートナーの女性との奇妙な関係もあいまって、登場人物のスリリングな会話が読む者の胸にグサグサ刺さってきます。テンポ良く、しかしどこに転がっていくのかわからない会話の端々には、現在の東京、日本へのかわいたまなざしが、最新トレンドと現代風俗を絶妙にからませながら顔をのぞかせます。五輪を目前にした今こそ読んで欲しい、知的エンターテイメント小説です。
奉納仕合いに奇妙な噂。 選ばれた剣士に下る、恐るべき使命とは…? かつて祖父ら三人が受けた御上からの密命が今再び!? その祖父の消息が判明した。 魔界白神山地の谺仙之助に津軽藩が刺客を放った! 十五歳の寒九郎が江戸へ逃れて三年。 津軽藩士の父は切腹、母は後追いの寒九郎は、叔母が嫁いだ旗本武田作之介の後見で文武の修行に励んでいた。 一月十六日の奉納仕合いを前に奇妙な噂が流れた。 勝ち抜いた剣士に御上から恐るべき密命が下されるという。かつて寒九郎の祖父らへの密命と同様に…。 その祖父は今、津軽藩からの刺客を逃れて魔界白神山地に隠れていると判明。 ◆ 著者について 森 詠 もり・えい 栃木県旧大田原町出身。那須地方に育つ。 東京外国語大学卒。主な著作に『振り返れば、風』『燃える波濤』『雨はいつまで降り続く』『夏の旅人』『冬の翼』、戦争小説『日本朝鮮戦争』、 警察小説『横浜狼犬』『清算』、青春小説『オサムの朝』『少年記オサム14歳』『那珂川青春記』『日に新たなり』『はるか青春』『パートナー』等がある。 歴史時代小説『七人の弁慶』や『坂東三国志』も書いている。 本書は既刊の「忘れ草秘剣帖シリーズ」「剣客相談人シリーズ」(全23巻)とは趣きを新たにした、第3シリーズの第2弾。 ◆ 好評既刊 剣客相談人 全 23 巻 忘れ草秘剣帖 全 4 巻 ( いずれも二見時代小説文庫 )
2020年度、連続テレビ小説『エール』で、主人公のモデルとなった国民的作曲家、古関裕而と妻・金子(きんこ)。 ふたりは文通のみで恋愛し、ひとたび会った時には、たちまち結婚に至るという、希有な純愛で結ばれた。 当初は、オペラ歌手を目指していた金子の、裕而へのさりげないファンレターで始まった文通は、やがて熱烈なラブレターへと変わっていく。 手紙による恋愛、結婚という純愛物語は、現代ではもはやおとぎ話。ふたりの愛の往復書簡は、逆に新鮮に心に響くに違いない。 なおこの作品は、長男である正裕氏が、父と母が残したラブレターを整理し、丹念に読み解き、10年の月日をかけて、ふたりの熱情と名曲誕生秘話を綴った、珠玉の恋愛小説。身内によって書かれた唯一無二の物語である。 [目次] プロローグ 第一楽章 アダージョ カプリッチオーソ ゆったりと きままに 第二楽章 アンダンテ カンタービレ ゆっくりと 歌うように 第三章 アレグロ ドルチェ 速く 甘く 第四章 プレスト アパッショナート とても速く 情熱的に エピローグ 付録(16P) 写真で綴る古関裕而・金子略年表 『エール』をより楽しむために。 【プロフィール】 古関裕而(こせきゆうじ) 誰もが一度は口ずさんだ名曲の数々を作曲 1909年生まれ。昭和を代表する日本の国民的作曲家。その80年の生涯で残した楽曲は、5000曲。 代表曲は、伝説の『東京オリンピック・マーチ』、今でも毎夏演奏される、全国高等学校野球大会の歌『栄冠は君に輝く』、大阪タイガースの歌『六甲おろし』、巨人軍の歌『闘魂こめて』、『高原列車は行く』『君の名は』『長崎の鐘』『鐘の鳴る丘』『モスラの歌』等、みんなで合唱できる歌も多数。 古関正裕(こせきまさひろ) 1946年、古関裕而・金子夫妻の長男として東京都に生まれる。成城学園初等科入学後、ピアノを習い始める。高校在学中にはバンド活動に熱中。 1965年、早稲田大学理工学部に入学。70年日本経済新聞社に入社。98年早期退職後、ピアノを再び習い音楽活動を再開。 2013年より父、古関裕而の楽曲の演奏を中心としたライブ・ユニット「喜多三」(きたさん)を結成しライブ活動継続中。 2009年古関裕而生誕百年記念CD全集の企画・監修で、日本レコード大賞企画賞受賞。著書に『緋色のラプソディー』がある。
衛兵の交代に目を光らす彼の横顔は、司祭の蝶ネクタイをつけ黒いサングラスをかけた髑髏[どくろ]のようだ。 ウナムーノらスペイン〈98年世代〉の作家バリェ゠インクランが 独自の小説技法「エスペルペント」で描き出した、 いびつで歪んだグロテスクな現実世界ーー ガルシア゠マルケス、フエンテスら世界文学者に継承される 〈独裁者小説〉の先駆的作品。本邦初訳。