2020年7月28日発売
人口20万人の港町オラン。突如として始まったネズミの大量死を不審に思う医師リウーの身の回りで、異常な熱病が相次いで発生する。それは市民を死の恐怖に陥れたペストの嵐の始まりだった!封鎖された街の中で、人々は何を思い、どう振る舞うのかー。突然の不条理がもたらす戸惑い、現実逃避、正義の衝突、政治への不満、互いへの不信感、無力感、心理的分断…。カミュ『ペスト』が教える人間の真の姿。ノーベル賞作家の傑作小説が1時間でわかる!
山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニケーションをとったり、先輩医師に怒られることもしばしば。そして、ある出来事を機に、山川の頭の中に一つの考えが芽生えはじめる。
東京は桜が美しかったが、秘書のハナに眺める余裕はなかった。泣きながらCEOのアントニオとキスをし、ベッドをともにして、彼女の人生は一変したー赤ちゃんができたのだ。気づいたとき、ハナは妊娠したとアントニオに告げていた。会社にとって、重大な商談の直前に。しかし、プレイボーイの大富豪は身勝手な暴君でもあった。ハナを即座に解雇し、顔をそむけてビルの中へと消えたのだ。彼女はすべてを失った。愛する男性も、生きがいだった仕事も。心が凍えていたのは、降り出した雨のせいではなかった。
妹の結婚式のためにシチリアを訪れたオーラは、新郎の付添人にでくわした瞬間、凍りついた。やっぱり、彼だわ…息子の父親のトニオに間違いない。4年前、オーラは旅先で彼と出会って恋に落ち、純潔を捧げた。だがトニオに婚約者がいると知って、泣く泣く身を引いたのだ。その後すぐ妊娠に気づいたが、不運にも事故で怪我をし、今の今までトニオの美しい顔以外、すべての記憶を失っていた。動揺するオーラと傍らの幼子を見るや、彼の目が怒りに燃えた。「僕の子なんだな?性悪女め、4年も僕を欺いていたとは!」
母が家政婦をする家の主の援助で、ギリシア人の少年テオは、貧しい生い立ちを蔑まれながらも名門校で勉学に励んでいた。ある日、入学してきた可憐な少女ソフィアと恋におち、夢の時を過ごすが、半年後、突如彼女は姿を消したー。10年後。ソフィアは花婿候補と会うため仮面舞踏会を訪れた。だが2人めの花婿候補にも落胆したとき、現れた白い仮面の男性に磁力で引き寄せられるように誘われ、ダンスを踊りだす。仮面越しに見える茶色の目。まさか…テオ?あなたなの?今や富豪となった彼の瞳にはしかし、怒りの炎が宿っていた。
母の手術費を工面するため、ある夫妻の代理母になったポリー。しかし妊娠してまもなく、手術の甲斐なく母は亡くなり、失意の中、依頼主夫妻が手配した屋敷で出産を待つことに。そして、近くの森でひとり泣きくれていたとき、黒髪の洗練された年上の富豪、ラウル・ザフォルテサに出会い、彼の魅力の虜となる。だがやがて、彼こそが代理母の依頼主で、夫妻というのは作り話だったと知るーお腹の子の父親は、結婚せずに子供だけ欲しいと望む、身勝手な独身貴族なのだと。騙されたショックに、ポリーは逃げるように姿を消すが…。
初めて会った日からずっと、天才外科医マックスに憧れてきたエヴィ。彼が1年間の海外任務に赴く直前に想いが通じ、結ばれた。マックスの出発後、妊娠したことがわかると同時に持病が悪化し、エヴィは闘病をつづけながら命がけで女の子を産んだ。だが体調が急激に悪くなり、とうとう手術を受けることに。そんなときマックスが帰ってきたが、娘の存在を告げられずにいた。彼の両親に、息子の仕事に差し障ると、口止めされているから…。けれども、手術の前に弱気になったエヴィは彼の励ましに胸を打たれ、ついに娘のことを打ち明けたーすると、マックスは豹変し、エヴィをなじった。「きみはわざと妊娠し、ぼくを罠にかけたのか?」
姉を亡くして1年余り、ナタリーは遺された甥を引き取ることにした。だが姉は未婚のまま産んだ幼子の父親が誰か明かしてくれず、ナタリーは甥にいつか教えるためにも、まず父親捜しから始める。わずかな手がかりをもとに、彼女は由緒ある公爵領を訪れた。ここの葡萄園で働く誰かが、甥の父親の可能性があるのだ。臨時の仕事に応募したナタリーは、面接官のドミニクを見て息をのんだ!深みのある黒い瞳と黒髪が、怖いほど甥に似ている。まさか…。でも、この公爵家出身の大富豪には、風貌のよく似た兄といとこがいて、姉が恋におちた男性が3人のうちの誰であってもおかしくなかった。ドミニクでありませんように。ナタリーはいつしか、そう願っていた。
雷雨の中、帰宅を急ぐサラは道に飛び出し、車に轢かれそうになった。運転していたのは町の名士で実業家のジェイク・ホーガンで、彼からお詫びの花束が届き、翌日にはわざわざ様子を見に来てくれた。紳士的なジェイクに、サラは生まれて初めて胸のときめきを覚えた。でも、私のような、幼い娘を育てている女に、彼は興味なんてないはず。それに、私には誰にも言えない秘密が、男性と親密になったら打ち明けないわけにはいかない秘密がある…。恋心を止めたいサラだったが、会うごとにジェイクに惹かれ、雷鳴に怯えていたある夜、彼になだめられるうちに一線を越えてしまう。そして、露見したー彼女がまだ、純潔の身だったということが!
テンパーは恋多き母のせいで、上流階級の口さがない人々から、どうせ娘も同類だろうと、いわれなき噂を立てられていた。男性に対してトラウマのある彼女は、母とは違うのに。ある日、テンパーは父に強いられて社交界デビューが決まり、兄の親友で伯爵家子息のギフが護衛を務めることになった。手が触れただけで甘い衝撃の走る彼が、そばにいるなんて…。戸惑うテンパーだったが、舞踏会が開かれた屋敷の寝室で、期せずしてギフと二人きりでいるところを他人に目撃され、大騒動に。テンパーの評判を守るため、ギフはやむなく彼女に求婚した。夫婦の契りを結ばない、白い結婚ならとテンパーは答えるがー
一生、一人の女に首枷をはめられるなんてごめんだー伯爵家に生まれた騎士ロビンは、次々と結婚する兄弟を見て毒づいた。あの強靭だった兄たちは今、妻の尻に敷かれ、まるで腰抜けじゃないか。一族にかけられた“結婚の呪い”なのか…。ロビンは身震いした。呪縛を解いてくれる人物を求め、たどり着いたのは女子修道院だった。すると突如、不穏な叫び声が響き、颯爽と駆けつけたロビンは、思わぬ言葉に迎えられる。「私たちを殺すつもりで、戻ってきたのね!」声の主は、透き通るような白い肌に瑞々しい唇の見習い修道女シビル。彼女の姿を目にした瞬間、ロビンは息をのみ、めまいに襲われた。この娘こそ、私を虜にし、破滅させる女…。そうはさせるか!
母親をとうの昔に亡くしているロージーは、短い間に相次いで父と祖父を失い、窮地に立たされた。祖父の遺言で、3カ月以内にロージーが結婚しなければ、400年の歴史を誇る屋敷は貪欲な親戚の手に渡ってしまうのだ。形だけの結婚相手には最高だと弁護士が白羽の矢を立てたのは、この界隈随一の富豪で、幼なじみのガードだった。何かにつけ子供扱いしてくる傲慢な彼と結婚なんてしたくない。でも、ほかに頼れる人もいない。ロージーは心を決め、ガードにプロポーズをするが…。