2020年9月24日発売
厚生労働省で働く若手官僚の鷹野は、激務の中で仕事への理想も失い無力な自分に思い悩んでいた。ある日、陳情に来たNPO団体から、非正規雇用が原因で自死したとされる人々のリストを持ち込まれ、自分と同じ25歳の青年に関心を抱き、その死の理由を調べ始めるー。一方、30代後半に差し掛かり夫との関係性や将来への不安を抱える切り絵作家の女性、幼なじみを助けたことでいじめの標的になった中学2年生の学級委員長の男子は、それぞれのフィールドで精いっぱい日々を送っていた…。現代社会をもがき生きる苦難と希望を描く、人生讃歌の物語。夭折の歌人が唯一遺した短歌集原作の映画を完全小説化。
夢を叶えようと夢に支配されてはいけない。手相に運命を左右されてはいけない。人生の起伏をこそ楽しもうー昭和10年代、青森の大家族で育った主人公の学生時代から教師の職を得て自立するまでを追ったビルドゥングスロマン。戦争を乗り越えて、稀有な“フツウの手相”をもつ彼女がつかんだものとは。
1972年、中国・北京。元海軍将校である徳間は、偶然にも中国の要人の命を助けたことから、ある任務に巻き込まれる。その任務は、失敗すれば中国・日本の歴史を大きく歪めてしまうものだった。娘・幸子の運命までも狂わせていく中で迎える衝撃のラストとは。欲望、親子愛、宿命ー。そのすべてが描かれたノンストップ・サスペンス。
十年前と現在の大学紛争を結び付ける因縁をたどった「魔性の女闘士」、大分の国東半島の自然豊かな海辺を舞台に、多感な少女が巻き込まれる首無し死体事件を追った「秘密の草城」、立山登山から戻らぬ愛人の知らない顔を見ることとなる「くろこまのペンダント」。あの時間はなんだったのか。自分はどのような存在だったのかー登場人物たちの自問はあなたも思わず呟くことになる。男と女を主軸に運命の不測の展開に驚愕するサスペンス三篇。
「世界を股にかける商人になる」青年は三万両の身代を捨て、東京へ乗り出した。ほぼ無資産で旗揚げした三井物産を大商社にのし上げ、ヱビスビールを日本一に育てた“負けずの恭やん”。大日本麦酒の創立者・馬越恭平のあまりに破天荒な生涯を描く、壮大なる大河小説。
1980年、記号学者・哲学者のロラン・バルトが交通事故で死亡。事故は当時の大統領候補ミッテランとの会食の直後だった。そして彼の手許からは持っていたはずの文書が消えていた。これは事故ではない!誰がバルトを殺したのか?捜査にあたるのは、ジャック・バイヤール警視と若き記号学者シモン・エルゾグ。この二人以外の主要登場人物は、ほぼすべてが実在の人物。フーコー、デリダ、エーコ、クリステヴァ、ソレルス、アンチュセール、サール、ドゥルーズ、ガタリ、ギベール、ミッテラン、ジスカール・デスタン、ラング…綺羅星のごとき人々。そして舞台はパリから、ボローニャ、イサカ、ヴェネツィア、ナポリへと…。「言語の七番目の機能」とはいったい何か?そして秘密組織“ロゴス・クラブ”とは?『HHhH-プラハ、1942年』の著者による、驚愕の記号学的ミステリ。アンテラリエ賞・Fnac小説大賞受賞作。
埼玉県警の何森稔は、昔気質の一匹狼の刑事である。有能だが、組織に迎合しない態度を疎まれ、所轄署をたらいまわしにされていた。久喜署に所属していた二〇〇七年のある日、何森は深夜に発生した殺人事件の捜査に加わる。障害のある娘と二人暮らしの母親が、二階の部屋で何者かに殺害された事件だ。二階へ上がれない娘は大きな物音を聞いて怖くなり、ケースワーカーを呼んで通報してもらったのだという。県内で多発している窃盗事件と同一犯だろうという捜査本部の方針に疑問を持った何森は、ひとり独自の捜査を始めるー。“デフ・ヴォイス”シリーズ随一の人気キャラクター・何森刑事が活躍する連作ミステリ。著者の新たな代表シリーズ開幕!
暴君であると同時に、偉大な国家建設者。実在した天皇とされる21代雄略の御代は、形のないものが、形あるものに変わった時代。私たち日本人の心性は、このころ始まった。『古事記』現代語訳から6年、待望の小説が紡がれた。