2021年3月発売
西洋化の波が押し寄せる明治の世。小説家を志す十七歳の宮島冬子は、当代一の文学者・尾形柳後雄のもとで女中をしながら執筆に励む。しかし、男社会の文檀では相手にされず、さらには望まぬ子を身籠もり窮地に立たされる。そんな冬子に「共謀しないか」と結婚を提案したのは、尾形の弟子・春明だった。新鋭作家として名を掲げる春明には、どうやら企みがあるようでー。その伴侶は心優しき理解者か、創作に憑かれた鬼か。切なくも衝撃的な結末が待つ異色の夫婦の物語。
その日、丸川亮太がいつものように中学の制服に着替えて朝食をとっていると、テレビから「二つ隣の県の刑務所から女性が脱走した」という、少し前から話題になっているニュースが流れた。その逃亡犯は亮太の家の方に向かっているらしいとのことで、亮太の父親が住宅地を見張ろうと言い出した。そんな丸川家の向かいにある矢島家。小学生の姉妹と祖母・母親の四人で暮らしているが母親は留守がちで、姉のみづきが妹の面倒をみていたのだった。そしてその隣の真下家では…。
広告・イベント制作会社で働く小島佑は社長に僻地の離島・小鬼ヶ島へ行くよう命じられる。この島はちょっと変わった離島で、住民が東と西で対立。村長選挙や村議会議員選挙のたびにガチンコの争いになる。佑は島の居酒屋に働きにきた絶世の美女・るいるいさんと一緒に島の問題を解決するため、とっておきの作戦を実行する。
藤原秀郷は、平将門の乱を鎮圧し、東北支配にあたる鎮守府将軍に任命され、のちに源頼朝をはじめとする鎌倉武士から「武芸の開祖」として仰がれた下野(現栃木県)の武将です。俵藤太(たわらのとうた)の名で、大ムカデを退治したという伝説でも知られています。本書は、その藤太時代の少年期から将門を討つまでの死闘を綴った大河ドラマです。
男子校出身で女子に不慣れな大学2年生の星野は、写真部の新入生勧誘で、カメラを首から下げた女子と出会い一瞬で心を掴まれた。その1年生・花宮まいは、ある理由で高校に行けなくなった過去がある。男性が苦手なものも、その「傷」のせいだ。少しずつ仲良くなってゆくふたりは、やがてお互いへの恋心を自覚しつきあいはじめる。それぞれはじめての「彼氏」「彼女」だ。ある日、星野はいい雰囲気のままつい花宮を押し倒してしまう。その瞬間、彼女の身体は固まってしまい…。好きだから、相手をちゃんと大切にして、触れ合いたい。不器用な二人のゆくえは…!?
竹の中で育まれ、不老不死をもたらすと伝わる真珠にも似た秘宝「竹の石」。古来、天下人への献上品とされてきたが、一つだけ村の庄屋が秘匿していた。それは昔、万病に効く薬を探求していたゼンの師・カシュウが村を訪れた際、竹の中から見つけたものだという。その存在が何故か漏れた。正体不明の賊が、強奪計画を立てていると知った庄屋の娘は、ゼンに警護をして欲しいと依頼する。折しも村は祭り。賊の来襲には、好機といえた。
宮中を悩ませた妖怪・鵺を退治、獅子王と呼ばれる刀を拝領したほどの武勇を誇り、和歌にも秀でていた源頼政。従三位を賜り、満たされていたはずの晩年、なぜ彼は挙兵したのか。その墓である頼政塚は、どうして祟りをなすと伝承されるのか。京都・亀岡の頼政塚に放置された惨殺死体、壇ノ浦で碇のオブジェに繋がれた遺体の連続殺人を軸に、桑原崇が源平合戦の真実を解き明かす。QEDシリーズ長編!
歴代最強の勇者と呼ばれた、少年レイン。彼はある日、任務の途中で魔王軍の女幹部エレノアと対峙する。物心がついた頃から休みなく人類のために戦わされ、報酬も貰えない。そんなレインの境遇を見かねた彼女は、手を差し伸べ言うー。「一緒に来てください。必ず幸せにしてみせますから…!」これは、『ブラック』な人類から離脱して、魔王軍で『ホワイト』な生活を送る勇者のお話。
有料老人ホームに勤務する川上雄太は小説家を夢見る27歳。入居者の絹さんこと田中絹江になぜか気に入られ事あるごとに身の上話に付き合わされていた。初めのうちはぼんやりと聞いていただけだったのだが、いつしか絹さんの明るく前向きな姿や言葉、そしてその魅力に惹きつけられ人の「幸せ」について思いを巡らせていくことにー。真に豊かな国のあり方を問う社会派小説。
その事故は“狙われた”ものだった。母として、教師として、被害者として。どんなに絶望的な事件に巻き込まれようとも、真摯に向き合い闘い続けるー。繊細な心に映るありのままの世界を深く丁寧に描いた“リアル”な私小説。
人語を話す猫、蛾に話しかける妹、殺人ウイルス、繰り返される映像規制。人間が「食文化」で分断された世界。日本は肉食主義者と菜食主義者が対立する国になっていた。惑星srijpから日本に帰国して初めて状況を知ったなおゆきは戸惑い、次第に周囲とのズレを覚え始める。そんなある日、なおゆきはふとしたきっかけで「ベジタリアンの集い」に参加することになる。享受する側と、虐げられる側。この狂騒の果てに待ち受けているものとは。
幕末にタイムスリップ!?一人の男が巻き起こす、吉原の大革命。現代ではあたりまえでも、江戸時代なら“大発明”。次々生まれる新たな品に魅了される人々。しかし、事態は思わぬ方向へと転がっていきー。ノンストップ、エンターテインメント時代小説。
原因不明の病に苦しむ真治。だが、病室から見えるオオイヌノフグリの花に“幸福の種”が隠されていたー。表題作ほか、四季の移ろいや自然の美しさを豊かな筆致で表現しながら日々の大切さを描いた13の短編童話集。
心から人を好きになったことがない内気な大学1年生・川本多希に本当の恋を教えてくれたのは、浪人経験者で2歳年上の同級生・柴田彬。何度も重ねた夜の学内デートは、「二人だけの宇宙」のような時間だった。そして一緒に暮らした部屋には、二人で作った青い森のジグソーパズルがあったー。
怪盗マゼランを名乗る人物から届いた『祭の夜 金塊を頂く』という予告状。しかし、その夜起こったのは密室殺人だった!空飛ぶ舟や湖の巨大生物などの目撃情報が上がる金延村で、いったい何が起こっているのか?金塊を祭る村で起きた事件を描いた表題作をはじめ、音野たちの友人が持ち込んだ、髪が伸びるという人形の謎を推理する「人形の村」など、書き下ろしを含む4編を収録。世界一気弱な名探偵がいやいやながらも謎を解決する大人気シリーズ、第三の事件簿。
「あたし…」が綴る11の患者エピソード。再診、再診、再診という、時の流れ。病気がない、治らない、納得しない、患者たち。医師という職能の果てにある明察とd´ecadence。語りつくせば、その「現実」は「寓話」となる。