2021年9月発売
新元号が発表された日、宣伝部の砂原江見は岐路に立たされていた。長く勤めた老舗映画会社・銀都活劇が大手IT企業に買収されることが決まったのだ。社内には弛緩した雰囲気が漂い、退職者も続出していた。DVD宣伝を手がける江見の部署も、一癖ある部下たちも、この先どうなるかわからない。では銀活の名前が消えるまでに、自分は何がしたいのか。バブル、ロスジェネ、ゆとり、さとり、様々な世代から「働き方」を問いかける。
金持ちで蒐集家のおばに育てられたアントンは十五歳で絵を描き始めた。完成した絵はおばの不興を買うが、屋敷を訪れたローベルトおじは絵の勉強を続けるよう激励する。実はこのローベルトこそ、バルカン半島の某公国を巻き込み、架空の画聖をでっちあげて世界中の美術館や蒐集家を手玉に取った天才詐欺師にして贋作画家だった。十七歳になったアントンはおじの待つ公国へ向かったが…。虚構と現実の境界を軽妙に突く傑作コミックノヴェル。
『風斬り』のフェリックスの倒したエーベルハルトは無事リリーを救出し、今まで通りの日常へと戻っていった。そして、それから三年の月日が経ち、厳しい修行を行っていたエーベルハルトは冒険者の最高位である、Sランク冒険者になっていた。 そんなある日、ギルドでワイバーン討伐の依頼を受けたエーベルハルトは何事もなく依頼を完遂。しかし、ワイバーンの行動に疑問を持ち調査を開始する。すると、調査を行っている最中に謎の男と遭遇し戦闘することにーー。 だが、お互いに誤解していたようで話をしてみると、その男は皇国三大師団の一つ特魔師団の団長ジェットと判明。その後、エーベルハルトは再会したジェットにスカウトされ特魔師団へ入ることに!?
『剣聖』へと至った冒険者イオスは、年に一度の激レアモンスター『氷の衛士ラルゴリン』や、それを狙うA級の冒険者パーティー『宵闇の光刃』の噂を聞く。 背中が弱点のラルゴリンを倒すため、背後からの攻撃が得意な斥候に転職してスキル集めや炎の武器作りを始めるイオス。そこへ新たなる強者ーー『商会』の冷酷な双子が姿を現す。 一方、いまだイオスの成り上がりに気づいていない元仲間のグレイルもまた、己の方が格上だと勘違いしたままラルゴリン戦に挑むーー Web版から2万7000字の加筆でおくる、成り上がりファンタジー第2弾!
国家転覆の危機を救った第五分隊が普段の日常業務にあたっていると、アルマという自身の名前以外の記憶を失った女騎士と遭遇する。行く当てもない彼女をひとまず第五分隊で預かることに。そんななか隣国のソーサラー王国がアスタロトに突如宣戦布告を告げる。攻め入ってきた隣国の兵士たちがアルマを見ると、皆一様に驚愕の顔に。アルマは一体何者なのか、そしてアルマの記憶が蘇るとともにセイラの隠された過去が明らかにーー。「小説家になろう」発王道バトルファンタジー第3弾!
フランス革命の只中、18世紀末のトリノで、世界周游の向こうを張って42日間の室内旅行を敢行、蟄居文学の嚆矢となったグザヴィエ・ド・メーストル「部屋をめぐる旅」--その続編「部屋をめぐる夜の遠征」、および「アオスタ市の癩病者」の小説3篇と、批評家サント゠ブーヴによる小伝を収録。 われわれは、ここに再版する興味深い発見や冒険を行なった人物よりも前に存在した旅行家たちの価値を、貶めるつもりはない。マゼラン、ドレーク、アンソン、クックといった方々は、疑いなく立派な人物である。ただ、もしわれわれの思い違いが過ぎるのでなければ、あえてこう言わねばならない、『部屋をめぐる旅』には先立つ全ての旅をはるかに上回る特別な価値があるのだ、と。 ーージョゼフ・ド・メーストル デカルトは、ナッサウ公マウリッツに仕えていたとき、同じ方法で、ただし比類ない真剣さで、軍隊生活の空白を埋めていた。〔……〕グザヴィエ・ド・メーストルもまた、不安も煩悶もなかったようで、『部屋をめぐる旅』を書きはじめた。独創的な主題であり、何でもないことについて何でも語ることができた。 ーーアナトール・フランス サヴォワ人の筆すさびがわれわれに残した不滅の小著…… ーーホルヘ・ルイス・ボルヘス 彼はそのとき住み慣れて知り切っていると信じた自分の部屋の周游旅行を志すことに依ってこの憂さを消そうと計画したのであった。これは確かによい思いつきだ。憂愁と退屈には旅行は何よりもの慰安である。それに仔細な観察に眼と心とを慣らすということは人の精神に無駄なことではない。で彼は自分の部屋を旅行し、観察し、数々の未知を発見し、これに就てのエキゾチクと云ってよいほどの驚きを記録している。彼の部屋は殆ど一つの世界である。 ーーきだみのる クサヴィエ・ド・メストルは二つの冒険譚を書いた。小説もあるが、それはまあいい。何よりも風変わりな冒険物をいうべきだろう。フランス人が文章においてとりわけたっとぶ「クラルテ」と「レジェルテ」、つまり明晰さと軽妙さとをほどよくそなえ、フランス語散文の好見本にちがいない。 だが、この名前が文学辞典にみつかるかどうか、大いにあやしい。 ーー池内紀
偽善社会をこき下ろし、ディドロに「心臓に毛が生えている」と評された、人相不明の諷刺作家フジュレ・ド・モンブロンーエロティックな妖精物語『深紅のソファー』と遊女の成り上がりの物語『修繕屋マルゴ』、奔放不羈な旅人の紀行文学『コスモポリット(世界市民)』を収録。