2022年1月27日発売
郊外の瀟洒な住宅街で、19年前に起きた一家失踪。謎の解明の前に立ちはだかったのは…忖度、同調圧力、自己保身、理由のわからない排除。そして時を隔てて、事件は連鎖していく。一人一人に問いを突きつけるサスペンス!江戸川乱歩賞受賞第一作。
ソウルの大学への就職話というのもそれほど悪いものではないかもしれない。なにしろ自分はこの2年というもの、横文字ばかり読んできて、すっかり頭が欧米向きになってしまった。フランス語も英語も存在しない、この不思議な文字の連なりからなる国に足を向けるというのも、考えようによっては面白いに違いない。焼肉もキムチも好きだ。焼肉は食べ放題だっていうではないか。きっとこれは真の意味で冒険となるだろう。何しろまったく予備知識のない社会に、白紙同然の状態で行こうとするのだからな。となれば、ぐずぐずはしていられない。今すぐパスポートを申請し、ヴィザの発給を受け、この文字に少しでも親しんでおくことだ。わたしはそう決意した。わたしはパスポートを受け取ると、その足で南麻布にある大韓民国大使館に向かった。 1970年代に日本人が韓国を訪問するには、理由と期間の如何を問わず、ヴィザの発給を受ける必要があった。とりわけわたしの場合には、観光や就学のヴィザではない。一年間を外国人教師として過ごすには労働ヴィザを取得しておかねばならない。それは極めて稀なことだったのである。…… 「ところで皆さん、韓国に行ったことはありますか。」宴会のなかで梁さんの発したひと言が「わたし」の運命を大きく変えた。20代前半の「わたし」は日本語教師として、ソウルの大学に赴任し、そこで朴正煕大統領暗殺、戒厳令の施行に遭遇する。『ソウルの風景』(岩波新書)の著者による渾身作。 第1章 出発まで 第2章 到着直後 第3章 城市ソウル 第4章 日本人と僑胞 第5章 残滓と模倣 第6章 全羅南道への旅 第7章 里門洞 第8章 大蛸来韓 第9章 アジョシの還暦 第10章 夭折の映画監督 第11章 戒厳令発動 エピローグ
八年ぶりに因縁のある旅人と再会した料理人の話、飢饉に苦しむ国を救った商人の話、不思議なナイフで自らの“影”を切り離した男の話。一見関係が無さそうな三つのエピソードが並行して語られ、終盤でひとつになるとき、驚愕の真相が浮かび上がる!大胆な仕掛けと巧みに張り巡らされた伏線で、本格ミステリの謎解きを紡いだ、第七回ミステリーズ!新人賞佳作「商人の空誓文」。どんな賭けにも負けない力を得た少女、あらゆる傷を跡形なく消し去る名医…。この世の理に背く力に人生を狂わされる者たちの五つの物語と、その背後で進行する、国の存亡に関わる陰謀。架空の異国を舞台に、本格ミステリの興趣を巧みに織り込んだ、異色のミステリ連作集。
ひとつ手紙を開くたびに、 心は地上のはるか彼方に飛ばされる。 手紙を受け取るということは、 もうそれだけで旅なんだ。--岸本佐知子(翻訳家) 三人の作家がそれぞれ架空の土地をめぐる旅に出た。 旅先から送り合う、手紙、スケッチ、写真ーー27の幻想旅情リレー書簡。 「この国にはいわゆる“お金”がありません。貨幣の代わりに踊りを踊ります。」「たぶん、翌朝にはチェックアウトできるでしょう。チェックインをしなかったような気もするので心配ではありますが。」「われわれ乗客は無言で顔を見合わせました。すでに『われわれ』と呼んでさしつかえないような連帯感が生まれていました。」三人の作家が架空の土地を旅してまわり、文章や写真、スケッチを送りあう、幻想旅情リレー書簡集。
「お前に一目惚れした。オレの恋人になれ」「はあ?お断りです」類稀なる美貌と王者の風格。そんなアルファ性の第一王子アークに告白されてしまった伯爵令嬢のサラ。ベータ性として平凡で穏やかな結婚を望んでいたのに、何故!?あろうことか恋人宣言までされてしまい、学園でも何かと絡んできて振り回されっぱなし。彼と結婚なんてありえないしまっぴらごめんーなのに目を離せない。こうなったら自分で恋人を見つけてやる!と決意するが!?
古の慣習のため、聖女のレーアは魔族の国に生け贄として差し出されることに。現れたのは凜々しい美貌の若き魔王エリク。レーアを優しくもてなし、その両親は可愛い娘が欲しかった! と大はしゃぎ。アレ? 思っていたのと違う? なんと魔族の国では聖女を代々魔王の妻として娶っていたのだ。婚約者となったエリクと次第に近付く距離にドキドキしっぱなし。ついに一目惚れだったと告げられて!?