2022年12月14日発売
第1回警察小説新人賞受賞作! 付け火の真相を追ったまま、行方知れずになっている岡っ引きの父・利助を探す娘のおまき。 おまきを手助けする材木問屋の息子・亀吉、目の見えない少年・要、そして臨時廻り同心の飯倉。 手がかりは漆で塗られた謎の蓋のみ。器の身はどこにあるのか? いったいどんな器なのか? もつれた糸がほどけずに四人が焦るある日、大川に若い男の土左衛門が上がったという。 袂から見つかったのは漆塗りの毬香炉。だが、妙なことに蓋と身が取り違えられていた。 身元は薬種問屋相模屋の跡取り息子・藤一郎で、のちに利助の遺した蓋と藤一郎が遺した毬香炉は一対だったと判る。 利助と藤一郎とを繋ぐ毬香炉は果たして誰のものなのか? おまきと三人は新たな手がかりを元に利助を探し出せるのか? 【編集担当からのおすすめ情報】 選考委員満場一致の受賞作だけあって、とても新人とは思えない筆力に驚かされます。捕物を愉しめるのはもちろん、江戸情緒もたっぷり描写されていて、特にヒロインの探索を手助けする、少年ふたりにかかわる人情の機微が読みどころとなっています。 選考委員をしてくださった各先生のコメントもどうぞ。 *** 相場英雄氏 「流れるような文体、各キャラクターの視点、そこから広がる江戸の風景描写が俊逸」 月村了衛氏 「堂に入った書きぶりで、江戸情緒、人物描写ともに立派なものです」 長岡弘樹氏 「この文章はすでにプロ級であり、読み手は安心して作品世界に身を委ねていられる」 東山彰良氏 「細部にまで目端が行き届いていて、登場人物を過不足なく使い切っているところが見事でした」
「約束は守った…伝えてほしい…」それが、無差別通り魔事件の被害者となった飯山晃弘の最期の言葉だった。自らも重傷を負った明香里だったが、彼女を助け、身代わりとなって死んでしまった飯山の言葉を伝えるために、彼の人生を辿り始める。この言葉は誰に向けたものだったのか、約束とは何なのか。決して交わるはずのなかった人生が交錯した時、慟哭の真実が明らかになる。
先に尽きるのは家康の寿命か、豊臣家の命脈か。 まったく新しい「家康像」を描き出した本格歴史小説! 時は「大坂の陣」の数年前ーー。いまだ盤石でない徳川幕府を案じる老齢の家康は、二代将軍である息子・秀忠を揺るぎない天下人にするための体制づくりを急いでいた。一方、豊臣家の威信凋落を肌身で感じる淀殿は、愛息・秀頼の復権に向けた効果的な打開策を見つけられず、焦燥感を募らせていた。宿命と因縁に翻弄され、矜持と野心の狭間で揺れ動く二人は、やがて雌雄を決する最期の戦いに、それぞれ活路を見出そうとするが……。 父であるが故の、母であるが故の苦悩と喜び。親が子に寄せる想いが時代を動かすーー。 己の「死」の先に見出そうとした「希望」とはいったい何だったのか?
パリの街外れに生まれ、父がルーツを持つカリブ海のグアドループ島とは肌色と休暇時の記憶のみでしか接点を持たない若い女性である「姪」が、家族のルーツを求めて自身の父と父方の伯母たちに話を聞きながら一族の歴史を掘り起こし、自らの混血としてのアイデンティティを練り上げていくー。カリブ海/全=世界カルベ賞などを受賞し、各所で好評を博した著者デビュー小説。
セネガル人の若き文学教員はある日、ネット上で拡散されていたとある動画を目にする。そこに映っていたのは、死んだ男性の墓を人々が暴いている様子だった。同性愛をめぐる問題には無関心な彼だったが、思いがけずこの事件を取り巻く騒動に巻きこまれていくうちに、墓を暴かれた人物について興味が湧き始める。さまざまな人に話を聞くうちに、彼が直面した真実、そして選択とはー。