小説むすび | 2022年1月発売

2022年1月発売

青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集

〈 じつに、ウルフ的、もっとも、実験的。〉 イマジズムの詩のような「青と緑」、姪のために書かれたファンタジー「乳母ラグトンのカーテン」、園を行き交う人たちの意識の流れを描いた「キュー植物園」、レズビアニズムを感じさせる「外から見たある女子学寮」など。 短篇は一つ一つが小さな絵のよう。 言葉によって、時間や意識や目の前に現れる事象を点描していく。 21世紀になってますます評価が高まるウルフ短篇小説の珠玉のコレクション。 ーーウルフは自在に表現世界を遊んでいる。 ウルフの短篇小説が読者に伝えるものは緊密さや美や難解さだけではない。おそらくこれまでウルフになかったとされているものもここにはある。 たぶんユーモアが、そして浄福感が、そして生への力強い意志でさえもここにはあるかもしれない。(「解説 ヴァージニア・ウルフについて 」より) ___________________ 《ブックスならんですわる》 20世紀の初頭、繊細にしてオリジナルな小品をコツコツと書きためた作家たちがいます。前の時代に生まれた人たちですが、ふっと気づくと、私たちの隣に腰掛け、いっしょに前を見ています。 やさしくて気高い横顔を眺めていると、自分も先にいくことができる、そんな気がします。 いつも傍に置いて、1篇1篇を味わってみてください。 ■ラピンとラピノヴァ……Lappin and Lapinova ■青と緑……Blue & Green ■堅固な対象……Solid Objects ■乳母ラグトンのカーテン……Nurse Lugton's Curtain ■サーチライト……The Searchlight ■外から見たある女子学寮……A Woman's College from Outside ■同情……Sympathy ■ボンド通りのダロウェイ夫人……Mrs Dalloway in Bond Street ■幸福……Happiness ■憑かれた家……A Haunted House ■弦楽四重奏団……The String Quartet ■月曜日あるいは火曜日……Monday or Tuesday ■キュー植物園……Kew Gardens ■池の魅力……The Fascination of the Pool ■徴……The Symbol ■壁の染み……The Mark on the Wall ■水辺……The Watering Place ■ミス・Vの不思議な一件……The Mysterious Case of Miss V. ■書かれなかった長篇小説……An Unwritten Novel ■スケッチ  ・電話……The Telephone  ・ホルボーン陸橋……Holborn Viaduct  ・イングランドの発育期……English Youth ■解説 ヴァージニア・ウルフについてーー西崎憲 ■年表

枳殻家の末娘枳殻家の末娘

出版社

青志社

発売日

2022年1月20日 発売

発見された未刊小説。 ポルノ小説?これは発酵した性愛、身を焦がす純愛小説だ 故山口瞳さんが褒めた官能文芸作品を単行本化! 編集部より 人気絶頂のロックシンガー小諸初の死からしばらくして、フリーライターの小暮京一郎に仕事の依頼が舞い込んだ。小諸初の最後の恋人キリコが告白する小諸初とのセックスだけに特化した手記を三日間の取材で作ってほしいというものだった。取材を重ねていくうちに29歳の京一郎は神秘的な美しさを秘めた18歳のキリコの不思議な肉体の魅力に引き込まれていき、ついに一線を越えて耽溺の世界に沈む。若さや美しさに隠れて、彼女にはとんでもない近親憎悪の性の秘密があった。 芥川賞作家がはじめて挑んだ激愛エンターテイメント官能小説。作家の山口瞳氏賞賛、西村賢太氏絶賛!! 高橋三千綱 故山口瞳さんにほめられた。 お礼状を出したら折り返し山口瞳さんから葉書が届いた。 〈お手紙拝見。小説(注・『カラタチ家の末娘』・未刊行)は、やはり違うなあと思って愛読しました。「ポルノを書いてはいけないなんてことはない」この点では珍しく五木寛之さんと意見が一致します。貴方の書くものは力感に溢れ、すがすがしい感じもあると常に思っています。(略)〉 『枳殻家の末娘』に寄せて より 小説家 西村賢太  本作を「サンケイスポーツ」紙に連載時の氏は、四十五歳。円熟の壮年であり、また小説家としてもデビュー二十周年を間近に控えた、まさに脂の乗りきった時期である。  それかあらぬか、後年の病を得てからの繊細で巧緻な短篇群に比し、ともすれば溢れる気力と体力とで良くも悪くも文章を押しきっている部分も見受けられるが、けれど文句なしに面白いエンターテインメントである。  かような佳品が没後に再び陽の目を見ること自体を、一読者として大いに喜びたい。  氏は、その死の間際まで書き続けた。  悪化した肝硬変と糖尿病以外にも、他者が安直に挙げ述べるのは気が引ける程の種々の疾病をかかえながら、それでも飲んで、そして書き続けていた。  満身創痍で、尚も書くーー言うは易いが、こんなのはなかなか実践できることではない。実際に、健康時には古武士よろしくそうした大言壮語を述べつつ、イザ病に倒れて余命宣告を受けたら途端にガックリし、再びペンをとる気力も失いそれっきりとなった書き手を何人か知っている。  だが、三千綱氏は違った。  本当の満身創痍で、本当に最後の最後まで書き続けた。それでいて自身にも病にも気負うことなく、標榜する“楽天家”の流儀を徹底的に貫いた。  稀有の晩年を闘い抜いた、真物(ほんもの)の小説家であったと思う。

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