小説むすび | 2022年5月2日発売

2022年5月2日発売

夢伝い夢伝い

出版社

集英社

発売日

2022年5月2日 発売

孤独を愛する人気作家が突然の断筆宣言。担当編集者は作家の住む地方へひとり、向かった。作家を脅かすものを探しにーー(「夢伝い」)。地球に近づいてきた惑星、現れた女遍路ーー。四国に戻って来た私は、40年前の午後を思い出していた(「送り遍路」)。自らの胎内で卵を孵すセグロウミヘビ。海洋生物マニアの男は「彼女」を手に入れてから生活が一変し……(「卵胎生」)。未知のウイルス性感染症が蔓延した後、「新しい世界」の幕が開けた。男は都心から自然豊かな土地に移住を決め、恋人とはリモートで関係を深めていたが……(「果て無き世界の果て」)など、昭和から現代までを舞台に、日常に潜む怪異や心理の歪みから生まれる怪奇を描いた全11話を収録。 宇佐美まこと(うさみ・まこと) 1957年、愛媛県生まれ。2006年「るんびにの子供」で第一回『幽』怪談文学賞〈短編部門〉大賞を受賞。17年『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。『ボニン浄土』で第23回大藪春彦賞候補に。『展望台のラプンツェル』で第33回山本周五郎賞候補に。他の著書に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『月の光の届く距離』など多数。

運命論者ジャックとその主人[新装版]運命論者ジャックとその主人[新装版]

破格の世界文学  ラブレー、セルバンテス、スターンといったヨーロッパ文学の異形の系譜につらなり、シュレーゲルらドイツ・ロマン派の思考を刺激した後、現代においても『ブーローニュの森の貴婦人たち』のブレッソン、『ジャックとその主人』のクンデラといった芸術家たちを魅了しつづけてきた、ディドロ最晩年の傑作。フランス18世紀小説の白眉が、新たな訳でよみがえる。  うわべは「主人」とその従者「ジャック」のあてど知れない遍歴譚だ。旅する二人と出会う人びと、散りばめられたエロティックな小噺、首を突っ込む語り手らによる快活、怒涛の会話活劇が繰り広げられるが、とはいえその内実は、破天荒なストーリー展開、逸脱につぐ逸脱……主人はいつになったら、ジャックの恋の話を聞けるのか。「物語性」の決定的な欠如そのものが物語たりえていること、それこそがこの小説の身上だ。  運命論者ーーだとしても、人は誰しも筋書きのわからない、次の瞬間にはどちらに転ぶとも知れない曖昧な日常を生きている。ある意味ではこの酷薄きわまりない世界を、一片の悲哀を混じえることなくひたすら快活な笑いをもって描ききったこの傑作。装画はよしながふみ。

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