2022年発売
猫をソファに上げないこと、床を汚さないこと・・・・・・。 完璧主義の友人宅の留守番を引き受けた ぼくの悪夢のような八日間 恐ろしくもおかしいカフカ的不条理! ベティ・トラスク受賞作 神経質で完璧主義の友人の留守宅をまかされた男。フローリングを汚さないことと、ストラヴィンスキーにちなんだストラヴィとショスタコービッチにちなんだショシイという二匹の猫の世話をすることだけを約束させられて。なんということもなさそうな、気楽な留守番のはずが、悪夢のような展開を見せることに……。そこここに、置かれる友人の細かい注意書き。カフカ的怖さとおかしさが同居する奇妙で独創的な傑作小説。
輪郭は強烈な輝きを放っているのに、 彼の中心は闇に沈み、謎めいたままーー ひったくりの犯人を突きとめた。 事件はそれで終わらなかった。 私たちは、ある男が歩んだ道を 辿り直すことになる。 〈犯罪と私たち〉を真摯に描く、実力派作家、渾身の新境地。 知人の老女がひったくりに遭う瞬間を目にした大学生の春風は、その場に居合わせた高校生の錬とともに咄嗟に犯人を追ったが、間一髪で取り逃がす。犯人の落とし物に心当たりがあった春風は、ひとりで犯人捜しをしようとするが、錬に押し切られて二日間だけの探偵コンビを組むことに。かくして大学で犯人の正体を突き止め、ここですべては終わるはずだったがーー。《本の雑誌》が選ぶ2020年度文庫ベスト10第1位『パラ・スター』の著者が贈る、〈犯罪と私たち〉を描いた壮大なミステリ。
日本にもたらされた中国の漢詩文、それを承けて平安朝の文人たちがつくりあげた日本の漢詩文、一方で万葉以来展開してきた和歌、これらが享受されていく歴史の交差点に成立したのが『和漢朗詠集』である。 本書は『和漢朗詠集』の成立と享受を論じることにより、和の世界が有していた流れと漢の世界からもたらされた流れが交錯し、新しい流れが生み出されていく我が国の文化の創造の過程で現れた、一つの典型的な現象を明らかにしていく。 増補・改訂により待望の復刊。 序文 伊藤正義 増訂版の刊行にあたって 序 『和漢朗詠集』研究史の沿革と本書 第1篇 『和漢朗詠集』の構成 一 『和漢朗詠集』全般の構成ー『古今集』をはじめとする勅撰和歌集との関連においてー 二 『和漢朗詠集』上巻四季部の構成ー先行詞華集との関連においてー 三 『和漢朗詠集』下巻雑部の構成ー先行詞華集との関連においてー 四 『和漢朗詠集』八月十五夜・月部の構成ー都の月・他郷の月ー 五 『和漢朗詠集』の部立「白」に関する考察ー『朗詠集』の構成と周辺の資料からー 六 『和漢朗詠集』帝王・親王・丞相部の所収和歌をめぐってー『古今集』序、同序古注(公任注)とのかかわりを視野においてー 第2篇 『和漢朗詠集』の本文 一 『和漢朗詠集』の享受と諸写本の本文形態の相違 二 『和漢朗詠集』古写本における佳句本文の改変をめぐって 三 『和漢朗詠集』古写本における和歌本文の異同と部立の配列ー春部末の「藤」「躑躅」「款冬」の部立を中心にー 四 『和漢朗詠集』博士家写本の解読ー学的情報としての注記の「読み取り」- 第3篇 『和漢朗詠集』の享受と古注釈 一 院政期における和漢朗詠集注釈の展開ー『朗詠江注』から『和漢朗詠集私注』へー 二 『和漢朗詠集私注』の方法 三 『和漢朗詠集私注』の変貌ー平安末期から室町期にかけての『和漢朗詠集』写本の動向と関連してー 四 鎌倉前期における和漢朗詠集注釈の展開ー『和漢朗詠集私注』から『和漢朗詠集永済注』『和漢朗詠註抄』へー 五 朗詠注における説話 附篇 一 『千載佳句』の部門の構成に関する考察ー冒頭の四時部を対象としてー 二 『和漢朗詠集』所引唐人賦句雑考ー出処と享受の問題を中心にー 索引 事項・書名・人名・題目・詩句・和歌
不朽の名作『魔法医師ニコラ』が明治の初翻訳で甦える。 実話怪談やら心霊やらが羞恥なく跋扈する偽りの無神世界に、この謎の医師の物語は、真の幽明と神秘に支えられた時代の愉しさを現代の読者に伝えてくれるだろう。 菊地秀行氏 列強が割拠する19世紀末中国に展開する大伝奇ロマンを、のちにシャーロック・ホームズを手がける南陽外史が主人公を日本人に変えて翻案した『魔法医者』が、読みやすい表記で復刊! 上海で孤独をかこつ日本人・三芳野文吾(みよしの・ぶんご)は、魔法医者としておそれられるドイツ人博士ニコラに招かれ、西蔵(チベット)を目指す旅に同行することになる。 狙いは、総本山に眠る大秘密。しかし、博士の妖術に、同行する中国人集団の暗躍が三芳野を惑わす。果たして、一行を待つものは……? 菊地秀行氏推薦の伝奇冒険小説の歴史的傑作! 原作を超える大冒険を語りつくす明治の名調子をそのままに、かな遣い等をあらため、現代でも読みやすい形で復刻。【電子・PODオリジナル版】
文学で読む、戦後女性の労働史 女中という仕事は、大正後期から昭和線前期にかけて最盛期をむかえ、1970年以降、高度経済成長期に姿をけした。 本書は、一般家庭に住み込みで働いていた「ねえや」、若い独身女性たちが登場する小説作品をあつめた、「女中文学」アンソロジーである。 小説に描かれた女中像に、戦後の女性の労働のあり方や、高度経済成長をささえた若い女性たちの姿を読むことができる。 由起しげ子「女中ッ子」 志賀直哉 「佐々木の場合 亡き夏目先生に捧ぐ」 太宰治「黄金風景」 李泰俊「ねえやさん」 大岡昇平「女中の子」 三島由紀夫「離宮の松」 林房雄「女中の青春」 深沢七郎「女中ボンジョン」 水上勉「ボコイの浜なす」 小島政二郎「焼鳥屋」 解説 阪本博志「小説に描かれた女中像を読み解く」
アウグスト賞受賞のスウェーデンの巨匠がおくる、北欧版『森の生活』。 リス、ミツバチ、キツネ、ワタリドリ、アナグマ… 詩人のコテージには、さまざまな動物たちとの出会いがあふれています。 著者はその出会いに触発され、その生き物たちの「言葉」を、 詩人の感性で受け取り、自然と生命への思索を広げてゆきます。 抒情豊かな文体で紡がれる、文学とサイエンスの新たな交差点。 「スウェーデン語で『アルファベット』を意味するbokstavは、 ブナ(bok)材に文字を刻んだことに由来する…… 書くことの目的は、未来へ向けて生命の本質を伝えることではないだろうか」(本文より)
●発売前重版決定!! めくるめく出会いの中で、「性」と「生」を赤裸々に描く、力強くも繊細な短編集。 恋、仕事、友人、家族……。淡々と生きてきたつもりが、導かれるように出会い、巻き込まれていくーー。ほのかに揺れる心と理不尽で理解の追いつかない状況を、冷静にも芳醇に切り取る女性「コスモ・オナン」の18の物語。 Web連載で大反響の作品に加え、書き下ろし一篇を収録。 16万部突破の『読みたいことを、書けばいい。』の著者・田中泰延がSNSで発掘した小説家、稲田万里のデビュー作! ●はじめから、この物語にはファンがいる。 「この小説を世に出すために、出版社をひとつ、つくりました。」田中泰延 株式投資型クラウドファンディングにてわずか27分で目標満額の4千万円を達成。個人投資家と合わせて358名から1億8千万円の出資を受けた出版社「ひろのぶと株式会社」からの、創業1冊目! プロローグ:新年一発 第一章 性欲 パイパン事件 坂道 下味 予習復習 第二章 恋心 夜のコール 前髪 立場 保険 忘年会 第三章 流転 サンドウィッチ 福袋 影響 金 第四章 上京 揺れ 誕生日おめでとう ずっと先まで歩こう 第五章 幼少 じゃがいも 第六章 一周 一周 エピローグ:だから書くことにした
美とおののきの短編アンソロジー。怖れと闇と懐かしさ。ムラタワールドの「短編愛」。短編はコロコロと手の上で転がしながら考える。うまく芽がでてすくすく伸びるとやがてひとつの「話」がひらく。
「君と結婚するという神託が降りた」 容姿端麗だが仕事人間と名高い宰相閣下・ガウナーが突然職場を訪れ、ロアに告げてきた。魔術式構築家として仕事一辺倒で、何の魅力もない自分にーー? 疑問に思いつつ、しかし合理的にロアは結婚を承諾する。すぐにガウナーの家での同居生活が始まるが、仮面夫婦のように過ごすと思っていたガウナーは、意外にもきちんと夫婦関係を構築しようと歩み寄ってくる。恋なんて縁がないものと思っていたのに、何故か心は彼の反応にいちいち揺れ動いて…!?
経営課題も難事件もサクッと解決! 弟子と一緒に金級冒険者へ昇格!! 《ホテル事業も立て直す!? 書き下ろしエピソードつき!》 ライノルドとこれまでの経緯や実家の現状を話しあったリアナは、さらなる功績を挙げ貴族の後ろ盾を得てから、家族に正面から決別を告げようと気持ちを新たにした。 しかし、立ち上げたばかりの人工魔石事業は、従業員の育成がうまくいかず供給が需要に追い付かないという大きな課題に直面する。 しかも、魔石の作り方を盗もうと犯罪組織に狙われてしまい、──リアナは仲間と協力しながら解決を目指す。 一方、ついにリアナの居場所をつきとめた家族が、面会を要求してきて……。 いよいよ、因縁の家族と相対する第三幕!
貧乏脱却のため公爵令嬢は“ドラゴン便”の就航に動き出す!ドラゴンたちを飛ばして王国中の商品を運ぶドラゴン便。アンジェリクが温めていたそのアイディアがようやく動き始めようとした矢先、ドラゴン使いのポリーヌが謎の黒いドラゴンの襲撃を受けて事故を起こしてしまう。お金も人手も足りないし、長女ルイーズの乳母は次々と辞めてしまうしと、いきなり問題山積みなアンジェリク&セルジュ夫妻。それでも何とかドラゴン便を就航させたものの、度重なる街道上の事故に加えて、王都でアヤしいビジネスを勧めてくる色物姉妹も現れ、事態は二転三転!貧乏伯爵夫婦の新事業が大空にはばたく領地経営ストーリー待望の第2巻!!
病弱な高校生、樹生は食べ物への未練を残したまま神に召された。次に目覚めたのは異世界で、姿はエルフ幼女だった! メルと名付けられた樹生は戸惑いつつもメジエール村に順応していく。健康体で食べるご馳走の数々にうなりながら、自分でも料理を作り始めるメル。花丸ポイントという、メルにしか使えない謎のシステムを駆使し、日本の食材や調理器具を手に入れ、気ままに作られるメルの料理に村の人々も魅了され……
夏の終わりに父さんを病気で亡くした小学校2年生の春海(はるみ)と美波(みなみ)はお母さんの故郷のまちにやってきた。その町は海辺の町で、春海のじいちゃんは昔船乗りで世界中を渡り歩いていたが、船から降りた後はばあちゃんと一緒に民宿を開いていた。春海は船乗りだったじいちゃんが大好きで、じいちゃんの冒険話を聞くのが大好きだった。 でも、そのじいちゃんに異変が・・・。 そして、大好きなじいちゃんから記憶を奪い取る「思い出泥棒」と春海の戦いが始まる。 海辺の町で 僕たちの名前と海での約束 異変 立ちこめる霧 ジョナサン 霧の中へ ジョナサンの話 宣戦布告 旅立ち それから 再びあの地へ 世界のどこかで
「眠れば、死ぬ」 東京から父の地元に引っ越してきて以来、悪夢に悩まされていた「僕」は、現実でもお腹に痣ができていることに気づく。 僕だけでなく、父親の友人の子供たちもみな現実に干渉する悪夢に苦しめられていた。 やがて、そのうちひとりが謎の死を遂げる。 夢に殺されたのか。次に死ぬのは誰か。なぜ、悪夢を見るのか。 理由を探る中でオカルトライターの野崎と真琴からお守りをもらい、僕らの苦悩はいったん静まったかのように思われた。 しかし、今度は不気味な黒ずくめの女に襲われる悪夢を見るようになる。 「比嘉琴子」と名乗るその女は、夢の中で僕を殺そうとしてきて──。
警視庁を退職して満洲・大連警察署特務巡査となった河村修平は、初勤務早々、殺人事件の捜査に携わる。被害者男性の首には頸動脈を狙ったような傷があり、修平は東京で起こった殺人事件との類似に気づく。一方、新進画家の中村小夜は街で偶然出会った青年ルカへの想いを深めてゆくが、彼には一族にまつわる秘密があった。やがて小夜は警察が事件の容疑者としてルカを追っていることを知る。 ただならぬ予感に満ちた圧巻のサスペンス×ロマンス長篇。
江戸川乱歩をはじめとする文学、怪奇、幻想をテーマとした音楽性で注目され続ける人気ロックバンド「人間椅子」。国内外から高い評価を受ける彼らの楽曲を題材に、大槻ケンヂら各ジャンルから集結したトガり切った執筆陣が小説を執筆! 土俗ホラー、ディストピアSF、異形の青春ーー音楽と文芸の融合が奏でる、暗く、熱く、激しいビートがあなたを包み込む。 装画:沙村広明 収録作 大槻ケンヂ 「地獄のアロハ」 地獄から蘇る異形たちの愛と青春。 伊東潤 「なまはげ」 絶望の淵で出会ったマレビト。彼らの正体とは。 空木春宵 「超自然現象」 子供たちが作り上げた似非教団の隆盛と暴走。 長嶋有 「遺言状放送」 屈折しきった魂の叫びが電波に乗って放たれた。 和嶋慎治 「暗い日曜日」 永遠の惰眠か、平穏な日常か。選択の時が迫る。