2023年1月24日発売
寂れた住宅が並ぶニードレス通り。その奥の暗い森に面した家に、テッド・バナーマンという男が娘のローレンや猫のオリヴィアと暮らしていた。家の周囲で起きた不審な事態に落ち着かない彼は、テープに声を記録していく…十一年前、幼い妹が森の湖畔で行方不明になって以来、ディーの家庭は崩壊した。今なお事件に囚われているディーは、かつて容疑者であったテッドを犯人だと怪しむ。彼女はニードレス通りに引っ越して、テッドの家を窺うが…テッドの家に住む猫オリヴィアは、この通りでの暮らしとテッドを深く愛していた。聖書の言葉を胸に、(主)の思し召しに従って日々を送るオリヴィアだったが、頭に響き渡る「音」に、この家に潜む「何か」に、しだいに脅かされ…折り重なる異様な「語り」が紡ぎ出す、恐るべきホラー小説。
ミッツィ・アイヴズは音響効果技師だ。彼女が作り出す恐怖の映画音声は、まるで本当に人間を拷問しているかのような迫力を持っている。ゲイツ・フォスターは行方不明になった娘を探す父親だ。手がかりを求めてダークウェブをめぐり、児童ポルノへの憎悪をたぎらせている。二人の物語が交錯するとき、ハリウッドに史上最悪の惨事が訪れるー『ファイト・クラブ』のパラニュークが二〇二〇年代の世界へ捧げる傑作。
ダストという毒物の蔓延により動植物が死に絶える大厄災から、ようやく復興を遂げて六十年。生態学者のアヨンは、謎の蔓草モスバナの異常繁殖を調査しているとき、その地で青い光が見えたという噂に心惹かれた。アヨンはモスバナの秘密を知る者を探すうち、この世界を復興させたとされる女性の一人ナオミにたどり着く。彼女はアヨンに、自らの過去を語りだすー。それは、食料をめぐり殺し合う時代を生き抜いた幼い姉妹アマラとナオミの物語、そして、今や歴史に埋もれる謎の女性ジスとレイチェルの物語だった…。
わたしの父親はフランス人で、母親が韓国人。韓国で生まれ育ち、父親とは一度も会ったことがない。フランスに行ったこともない。今は北朝鮮国境近くの町、ソクチョの小さな旅館で働いている。ある日、旅館にフランス人のバンド・デシネ作家がやって来る。わたしは作家の世話をするうち、何を描いているのかに興味を持ち、スケッチブックを覗き見るー。自らもフランス人の父と韓国人の母をもち、スイスで執筆する著者による、全米図書賞翻訳部門受賞作。
5人の少女たちは各々が謎や難問や敵に挑んできたー頭脳明晰学問好きのちせ、弟の身代わりに男装して生きる浅茅、阿蘭陀人との間に生まれたアフネス、お家騒動から逃れた喜火姫、そして武芸百般を修めた最強の武芸者・野風。5人の少女たちが、江戸を、いや日ノ本を守るために偶然集結した!?徳川12代将軍・家慶が治める時代、少女たちは大いなる陰謀に対峙することに。歪んだ思想のもとに“奇巌城”を一夜にして築き、世を転覆させんとする巨悪が暗躍していたのだ。5人は悪の根城に敢然と飛び込む。が、正体を暴かれ絶体絶命!はたして敵を倒し、脱出することはかなうのか…!?
西暦80万2700年。人類滅亡後、その文化を研究するため、高等知的生命体「玲伎種」に再生された作家たちは、収容施設(終古の人籃)で永遠に小説を執筆し続けていた。史上最も多くの小説を創作した作家、吸血鬼・人造人間・狼男の全てを産み出した作家、生涯を通じて美と苦悩について探求し続けた作家ー彼らに与えられた報酬は不老不死の肉体と、願いを一つだけ叶えること。自己の作風と才能を他者と混淆させながら共著する作家たちに対して、巡稿者メアリ・カヴァンは、ささやかな、しかし重大な反逆を試みたー「やめませんか?あなたひとりで書いたほうが、良いものができると思います」
ヴィクトリア朝ロンドンで暮らすメアリ・ジキルら“モンスター娘”こと“アテナ・クラブ”の令嬢たちのもとに、ウィーンから手紙が届いた。ルシンダ・ヴァン・ヘルシングと名乗るその差出人は、父親のヴァン・ヘルシング教授が行う実験の被験者にされた自分を救い出してほしいという。背後に、“錬金術師協会”に属する自分たちの父親の陰謀を嗅ぎ取った“アテナ・クラブ”の面々は、メアリの雇い主である探偵シャーロック・ホームズの力も借りながら、ルシンダを救うため一路ウィーンを目指すことに!ヨーロッパ大陸で繰り広げられる大冒険を描く、ローカス賞受賞作続篇にしてシリーズ三部作の第二部前篇。
大学生の伏見は、旧友の大石と共に、久しぶりに母校を訪ねた。思い出すのは、在学中に起こった特別支援学級の生徒に対するいじめ事件。当時、傍観者だった伏見は、正義感も熱も持てない自分に欠落を感じていた。一方、現在高一の敦子は、知的障害のある兄を持ち、自身もカウンセリングに通いながらなんとか世界に自分をつなぎとめている。彼女は「何食わぬ顔」をするOBの存在が許せなくてー。
史上まれにみる出世街道を突き進んだ戦国武将・豊臣秀吉の魅力あふれる物語。織田信長の美濃攻めが始まる。斎藤龍興領の要衝、墨俣に一夜にして城をつくり、敵はおろか信長の度肝を抜いた藤吉郎の奇想天外な策略の数々とは?そして、いつもその傍には野心家の兄を支える弟、小一郎の姿があった。次々に加わる仲間たちと藤吉郎一家が、力を合わせて乱世を生き抜いてゆく!のっけから大興奮!歴史に新たな息吹を。異能の時代小説家、渾身の書下ろし!
10歳年下の彼に溺れるほど本気です!来年50歳を迎える美樹は独身のキャリアウーマン。ある日、10歳年下の男・涼真に交際を申し込まれ、自分の年齢を理由に断るが、押しに負けて付き合うことに…。年下彼氏×中年女性のキュン死必至な歳の差ラブストーリー。
至急、魂を解放せよ!-音楽は人間の喜怒哀楽とは切っても切れない関係にある。楽しい時、哀しい時、人は気持ちを音楽に託す。ジャズももちろんそうである。ジャズは黒人から発生したもので、奴隷の苦しみから逃れていく“自由への讃歌”が音楽にこめられていた。つまり、魂の解放だ。ジャズがニューオーリンズで誕生してから多くのミュージシャンが「魂の解放」の音楽を時代ごとにつくりあげてきたのだ。本書では「魂の解放」「魂の叫び」をテーマとして、人生をジャズに捧げたミュージシャンたちをモデルに12篇の短編推理小説「ジャズメガネの事件簿」を掲載。ジャズ史に隠されたエピソードと謎をジャズ探偵、成瀬涼子が解き明かす。そして、モデルのミュージシャンたちに捧げられたエッセイが各小説ごとに付随されている。それらのテーマはまさにスピノザの名著「エチカ」に通じるものがある。
台湾と日本。歩行と走行。二ヶ国を行きつ戻りつ、足とスケボーを興じ分けつ、そんなササキの日常に浮かび上がる落語家志望の元台湾人留学生。病み上がりの師匠が台湾語落語を完成させれば、消えた学生求めて物語が動き始める。学生は何故に消え、何故そこにいるのか。聞こえて来たのは台湾統一地方選挙の盛り上がり。師弟の二人会は実現するのか?ドタバタでもありながら歴史を汲んで大まじめ。台湾(語も)、落語、スケボー、これらが必然に絡んだ400枚!
ベトナムで孤児であったところを拾われたマンは、育ての母に導かれ、カナダのモントリオールでベトナム料理店を営む男性と結ばれる。子供にも恵まれ、レストランも次第に繁盛して、生活は順風満帆であるように見えるが、マン自身は、常に日陰にひっそりとたたずんでいるように感情を押し殺して、どこか満たされない様子で日々を過ごしていた。しかしそんな最中、レストランの盛況とともに刊行したレシピ本の成功を機に訪れたフランスで一人のシェフと出会い、マンは、内に秘めた感情を少しずつ顕わにしてゆく…