2023年1月24日発売
「書く」ことが、絶望を超越した かつては誤解に基づく激しい差別と偏見に晒されていたハンセン病。青年・北條民雄は、その病に罹患し、同病者だけが共同生活を送る療養所に入る。社会から隔絶された絶望的な状況の中で、北條が生きる希望を見出したのは「書く」ことを通してだった。書簡を通じて私淑した川端康成の支えもあり、芥川賞の候補にもなった代表作「いのちの初夜」。この作品を読んで衝撃を受け、大学で北條民雄について研究したという俳優・作家の中江有里さんを講師に迎え、現在のコロナ禍で改めて顕在化した差別や偏見というテーマについても考えながら、みずみずしくも巧みに練られた物語の中に、絶望の底にあってもなお折れない「生きる」意志を読みとく。
暗い森の家に住む男。過去に囚われた女。レコーダーに吹き込まれた声の主。様々な語りが反響する物語は、秘密が明かされる度にその相貌を変え、恐るべき真相へ至る。巨匠S・キングらが激賞。異常な展開が読者を打ちのめす、英国幻想文学大賞受賞の傑作ホラー
「全世界の人々が同時に発する悲鳴」の録音を目指すハリウッドの音響技師ミッツィ、児童ポルノサイトで行方不明の娘を探し続けるフォスター。2人の狂妄が陰謀の国アメリカに最悪の事件を起こすーー『ファイト・クラブ』の著者が2020年代の世界へと捧げる爆弾
謎の蔓草モスバナの異常繁殖地を調査する植物学者のアヨンは、そこで青い光が見えたという噂に心惹かれる。幼い日に不思議な老婆の温室で見た記憶と一致したからだ。アヨンはモスバナの正体を追ううち、かつての世界的大厄災時代を生き抜いた女性の存在を知る
冬になると旅行客がほとんどやって来ない避暑地、ソクチョの小さな旅館でわたしは働いている。ある日、フランス人のバンドデシネ作家が旅館にやって来る。彼の中に、わたしは未だ見ぬフランス人の父と父の国への憧憬を重ねるがーー。男女の一期一会を描く長篇
5人の少女たちは各々が謎や難問や敵に挑んできたー頭脳明晰学問好きのちせ、弟の身代わりに男装して生きる浅茅、阿蘭陀人との間に生まれたアフネス、お家騒動から逃れた喜火姫、そして武芸百般を修めた最強の武芸者・野風。5人の少女たちが、江戸を、いや日ノ本を守るために偶然集結した!?徳川12代将軍・家慶が治める時代、少女たちは大いなる陰謀に対峙することに。歪んだ思想のもとに“奇巌城”を一夜にして築き、世を転覆させんとする巨悪が暗躍していたのだ。5人は悪の根城に敢然と飛び込む。が、正体を暴かれ絶体絶命!はたして敵を倒し、脱出することはかなうのか…!?
西暦80万2700年。人類滅亡後、その文化を研究するため、高等知的生命体「玲伎種」に再生された作家たちは、収容施設(終古の人籃)で永遠に小説を執筆し続けていた。史上最も多くの小説を創作した作家、吸血鬼・人造人間・狼男の全てを産み出した作家、生涯を通じて美と苦悩について探求し続けた作家ー彼らに与えられた報酬は不老不死の肉体と、願いを一つだけ叶えること。自己の作風と才能を他者と混淆させながら共著する作家たちに対して、巡稿者メアリ・カヴァンは、ささやかな、しかし重大な反逆を試みたー「やめませんか?あなたひとりで書いたほうが、良いものができると思います」
ヴィクトリア朝ロンドンで暮らすメアリ・ジキルら、特異な能力をもつ"モンスター娘"こと〈アテナ・クラブ〉の令嬢たちに、ヴァン・ヘルシング教授の娘ルシンダから救助を求める手紙が届く。彼女たちは一路ウィーンへ! 大陸で繰り広げられる華麗な大冒険
大学生の伏見は、旧友の大石と共に、久しぶりに母校を訪ねた。思い出すのは、在学中に起こった特別支援学級の生徒に対するいじめ事件。当時、傍観者だった伏見は、正義感も熱も持てない自分に欠落を感じていた。一方、現在高一の敦子は、知的障害のある兄を持ち、自身もカウンセリングに通いながらなんとか世界に自分をつなぎとめている。彼女は「何食わぬ顔」をするOBの存在が許せなくてー。
史上まれにみる出世街道を突き進んだ戦国武将・豊臣秀吉の魅力あふれる物語。織田信長の美濃攻めが始まる。斎藤龍興領の要衝、墨俣に一夜にして城をつくり、敵はおろか信長の度肝を抜いた藤吉郎の奇想天外な策略の数々とは?そして、いつもその傍には野心家の兄を支える弟、小一郎の姿があった。次々に加わる仲間たちと藤吉郎一家が、力を合わせて乱世を生き抜いてゆく!のっけから大興奮!歴史に新たな息吹を。異能の時代小説家、渾身の書下ろし!
10歳年下の彼に溺れるほど本気です! 来年 50歳を迎える美樹は独身のキャリアウーマン。 ある日、10歳年下の男・涼真に交際を申し込まれ、 自分の年齢を理由に断るが、押しに負けて付き合うことに......。 年下彼氏×中年女性のキュン死必至な歳の差ラブストーリー 【目次】 第一章 カッサカサの女課長と若いお友達 第二章 年下の男性に心が揺らぐ…… 第三章 不安と親友の存在 第四章 運命の出会い 第五章 高山家のサプライズ 第六章 会社退職 第七章 偶然、元カノに出会う 第八章 高山家ダンスパーティー 第九章 通り魔に遭遇 第十章 友人のレストラン開店祝いで涼真さんが…… 第十一章 親友のお祝いと長期出張 第十二章 悲しい、辛い出来事 第十三章 美樹の覚悟 第十四章 突然の再会 第十五章 二度目の婚姻届 第十六章 涼真への陥れ 第十七章 親友の幸せ報告
至急、魂を解放せよ!-音楽は人間の喜怒哀楽とは切っても切れない関係にある。楽しい時、哀しい時、人は気持ちを音楽に託す。ジャズももちろんそうである。ジャズは黒人から発生したもので、奴隷の苦しみから逃れていく“自由への讃歌”が音楽にこめられていた。つまり、魂の解放だ。ジャズがニューオーリンズで誕生してから多くのミュージシャンが「魂の解放」の音楽を時代ごとにつくりあげてきたのだ。本書では「魂の解放」「魂の叫び」をテーマとして、人生をジャズに捧げたミュージシャンたちをモデルに12篇の短編推理小説「ジャズメガネの事件簿」を掲載。ジャズ史に隠されたエピソードと謎をジャズ探偵、成瀬涼子が解き明かす。そして、モデルのミュージシャンたちに捧げられたエッセイが各小説ごとに付随されている。それらのテーマはまさにスピノザの名著「エチカ」に通じるものがある。
台湾と日本。歩行と走行。二ヶ国を行きつ戻りつ、足とスケボーを興じ分けつ、そんなササキの日常に浮かび上がる落語家志望の元台湾人留学生。病み上がりの師匠が台湾語落語を完成させれば、消えた学生求めて物語が動き始める。学生は何故に消え、何故そこにいるのか。聞こえて来たのは台湾統一地方選挙の盛り上がり。師弟の二人会は実現するのか?ドタバタでもありながら歴史を汲んで大まじめ。台湾(語も)、落語、スケボー、これらが必然に絡んだ400枚!
ベトナムで孤児であったところを拾われたマンは、育ての母に導かれ、カナダのモントリオールでベトナム料理店を営む男性と結ばれる。子供にも恵まれ、レストランも次第に繁盛して、生活は順風満帆であるように見えるが、マン自身は、常に日陰にひっそりとたたずんでいるように感情を押し殺して、どこか満たされない様子で日々を過ごしていた。しかしそんな最中、レストランの盛況とともに刊行したレシピ本の成功を機に訪れたフランスで一人のシェフと出会い、マンは、内に秘めた感情を少しずつ顕わにしてゆく…