小説むすび | 2023年10月3日発売

2023年10月3日発売

きつねきつね

ノイシュタット国際文学賞受賞者であり、ロシア・アヴァンギャルドの研究者としても知られるクロアチア語作家ウグレシッチ。惜しくも最後の長篇となった本作は、いわゆるオートフィクションに分類されうるもので、作者を思わせる語り手は、1920年代から現代まで、ロシアからイタリア、クロアチア、イギリス、アメリカ、そして日本まで、トリックスターとしてのきつねさながらに、テクストの中を自在に駆けていく。作家とはだれか、物語とはなにか、事実と虚構、記憶、女性、戦争、越境、ナショナリティ……、あらゆる文学的主題を語る糸口となるのは、ボリス・ピリニャークの日本を扱った短篇「物語がどのように生まれるかの物語」だ。実在する文学作品や作家のみならず、存在しない文学作品や作家をめぐって縦横に展開するその語りのなかで、さまざまな周縁的存在の声が回復されていく。文学が物語を伝播する媒体なのだしたら、人間の生もまた「物語」というウィルスに冒されたテクストなのかもしれない。だが文学は同時に、物語に抗わんとするだろう。文学への愛とアイロニーに満ちた、語り手の鋭くも誠実な思考の軌跡をともに辿るかのような体験をぜひ。

私書箱110号の郵便物私書箱110号の郵便物

韓国で43万部のベストセラー。 約20年愛され続けるマスターピース小説。古家正亨氏、推薦。 【韓国らしい、でも韓国ドラマ的ではない、主人公たち】 舞台はラジオ局。ヒロインは31歳の人見知りの構成作家。 担当番組の新ディレクターがちょっと風変わりな人物で……。 秋のソウルで不器用な恋が色づき始める。 『天気が良ければ訪ねて行きます』のイ・ドウ、邦訳第2弾。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー コン・ジンソルはFMラジオ局で働く構成作家。改編にともない、番組の新ディレクターとなったイ・ゴンと仕事をすることに。局内での評判は悪くないが、初顔合わせの段階からペースを狂わされ、人付き合いの苦手な彼女は当惑する……。丁寧な情景描写、人物の内面を繊細に描く文体で「ゆっくり大切に読みたい本」と韓国で評されるイ・ドウの処女作、ついに刊行。ソウルの地名が多数登場し、読むと街を散歩したくなる小説でもある。 ★古家正亨氏、推薦 (ふるや・まさゆき MC/DJ/韓国大衆文化ジャーナリスト) 「懐かしいソウルの風景。自然と思い浮かぶ、慌ただしいスタジオでのやりとり。“30代の大人”が繰り返される日常に求めたもの。ラジオ局を舞台に“言葉”の担い手が不器用に、静かに紡ぐ、セピア色にときめくラブストーリーに胸打たれた」 著者イ・ドウ書き下ろし「日本語版に寄せて」収録

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