2023年11月9日発売
奥多摩から埼玉、長野の県境を歩いて山梨の北杜市へ。製薬会社勤務六年目、何より理屈を愛する男・山田が思い立った登山は、完璧な計画通りに遂行されるはず、だったー。山中で出会った博士風の奇怪な男の一言を発端に、山田はいつしか思いもよらない異常事態に迷い込む。理屈が通らない混沌の先、山田を待ち受けていた運命はー?
デビュー作「ブルジョア」を含む初期の作品集。父が天理教に入信し、叔父夫婦に育てられた芹沢光治良。帝国大学卒業後、農商務省に入省したが、経済の研究を志してパリに留学するもそこで結核に感染し、フランス、スイスで療養生活を経験する。そんな体験から書かれたデビュー作品集である。雑誌「改造」の懸賞創作で1等に入選した「ブルジョア」は、結核患者が集まる町を舞台に、病に侵された夫と妻、多国籍の入院患者らの懊悩を描いた作品。「結核患者」「昼寝している夫」「椅子を探す」は、杉夫妻を主人公に、結核に倒れた夫が心身ともに復活していく様子を描写し、「橋の手前」「風迹」は、共産主義に対する市井の人々のとらえ方を描出している。
人間の欲を浮き彫りにする社会派ミステリー。「工場はおそろしい水銀の水を流している。魚は獲ってはいけない。獲った魚を喰えば死の病いにとりつかれる。そうだ、この海…この暗い海の底から、目に見えない何ものかが牙をむいて迫っている」。不知火海沿岸で発生した奇病“猫踊り”。魚や貝を食べると、猫はもちろん、人間までも狂死する恐ろしい病気だ。その実態を調べるために東京の保健所から調査に来た男が行方不明になる。警察医・木田民平は勢良警部補とともに、工場や投宿した旅館などを探るが、男はやがて鴉についばまれた死体で発見される。男はなぜ殺されなければならなかったのか。そこには、さまざまな“欲”が、複雑に絡み合っていたー。日本中を震撼させた水俣病を題材にし、直木賞候補にもなった衝撃作。
アリオとユリオ、幼馴染の深雪は、天才的な頭脳に恵まれながらも、自分の中に潜むある欲望に苦しみつつ成長する。ユリオの自殺、連続する殺人事件をきっかけに、驚愕の真相が明らかになっていくのだが…出生前から仕組まれていた壮大な計画の果てに、待ち受ける禁忌の真相とは?雑誌「文藝」での同名短編小説発表から4年。青春小説の旗手が到達した、生きる意味を問う衝撃のストーリー!
六本木のセレブ妻という設定で、SNSにマンガ“保護犬さくら、港区女子になる”を投稿している梨沙。ある日、出版社の編集者から書籍化のオファーが。動画サイトで人気になれば億単位の収入も夢ではないという。年収一億円を夢見る梨沙は大胆な行動に出るが、想定外の“事件”に巻き込まれ…。事件解決のカギは「犬」。殺人者は誰か、嘘をついているのは誰なのかー?
ポラリスーそこは夜中に途方に暮れる人たちの道標。子供の入院に付き添う日々を送るシングルマザーの美和。子供の病気のこと、自分の仕事のこと、厳しい経済状況ー立ち向かわないといけないことは沢山あるのに、疲れ果てて動けなくなりそうになる。そんな時、一軒の小さなカフェが彼女をそっと導き入れてー(夜更けのぬくもり)。「夜更けのぬくもり」他4編を収録。先が見えなくて立ち尽くしそうな時、深夜営業の小さなカフェがあなたに静かに寄り添う。夜闇をやさしく照らす珠玉の短編集。
虚空の闇に浮かぶ魔法使い養成学校“スコロマンス”。学園生活最大のサバイバル試練となる卒業式を生き抜いたガラドリエル(エル)らだったが、学校と怪物たちを葬り去った虚空には、エルの最愛の友人・オリオンが自らの意志で“目玉さらい”とともに残ってしまった。一方、エルが戻った現実世界では、次々と世界各地の魔法自治領が破壊されていた。果たして、エルはオリオンを、そして世界を救うことができるのか?