2023年12月13日発売
蝶が恋しい。蝶のことだけを考えながら生きていきたい。蝶の目に映る世界を欲した私は、ある日天啓を受ける。あの美しい少年たちは蝶なのだ。その輝きは標本になっても色あせることはない。五体目の標本が完成した時には大きな達成感を得たが、再び飢餓感が膨れ上がる。今こそ最高傑作を完成させるべきだ。果たしてそれは誰の標本か。--幼い時からその成長を目に焼き付けてきた息子の姿もまた、蝶として私の目に映ったのだった。イヤミスの女王、さらなる覚醒。15周年記念書下ろし作品。 人間標本
『ミカゲ食品は「スマイルコンプライアンス」の精神で、信頼回復に努めてまいります』 異物混入騒動への社長の発言が炎上した翌日、35歳の多治見勇吉は、〈スマイルコンプライアンス準備室〉に異動となる。実体不明の社長の言葉を形にしろというのだ。 社長に忖度する役員の無茶ブリ、会議のための会議、終わらぬ資料作り。趣味のバンド活動が最優先だった勇吉も、仕事漬けの毎日に。そんな中、バンド仲間が余命宣告を受ける。 「自分はどうして、こんなに働いているのだろう」 よりよく働ける職場を目指し、勇吉の奮闘が始まる。 プロローグ 第一章 デコレーション資料フェスティバル 第二章 定義し難きものを定義せよ 第三章 クソして寝て、起きて働いて飯を食え 第四章 古き良き時代を検証せよ 第五章 よりよく変身できますように 第六章 どのみちウチら、集った仲間だから 第七章 半径五メートルに思いを馳せろ エピローグ
小説の向こうに絵が見える! 美しき水墨画の世界を描いた物語 水墨画とは、筆先から生み出される「線」の芸術。 描くのは「命」。 20万部を超えたメフィスト賞受賞作『線は、僕を描く』に続く、水墨画エンターテイメント第二弾! 主人公・青山霜介が、ライバル・千瑛と湖山賞を競い合った展覧会から2年が経った。 大学3年生になった霜介は水墨画家として成長を遂げる一方、進路に悩んでいた。 卒業後、水墨の世界で生きるのか、それとも別の生き方を見つけるのか。 優柔不断な霜介とは対照的に、千瑛は「水墨画界の若き至宝」として活躍を続けていた。 千瑛を横目に、次の一歩が踏み出せず、新たな表現も見つけられない現状に焦りを募らせていく霜介。 そんな折、体調不良の兄弟子・西濱湖峰に代わり、霜介が小学一年生を相手に水墨画を教えることになる。 子供たちとの出会いを通じて、向き合う自分の過去と未来。 そして、師匠・篠田湖山が霜介に託した「あるもの」とはーー。 墨一色に無限の色彩を映し出す水墨画を通して、霜介の葛藤と成長を描く、感動必至の青春小説!
子どもは救いであり希望。母でいることは罰。 函館にある医療刑務所分院に勤める矯正医官・金子由衣(かねこゆい)は、不摂生の塊のような妊婦・敏江を受け持つことになった。難産の末、重い障害を抱えた女児を出産した敏江はその数日後に死亡する。リスクだらけの身体なので、何が起きてもおかしくはなく、司法検視の結果も問題はなかった。しかし、その2週間後、「死にたい」が口癖の緑内障の受刑者・明美が死亡した。死因が敏江と似ていることから、院内に緊張が走る。自殺なのか? 敏江の死と関係はあるのか?
新宿歌舞伎町のドラッグストアのごみ置き場で切断された右手が見つかった。如月塔子と門脇仁志は捜査に乗り出す。手はホストクラブのナンバー2のものだった。客とのトラブルかとの推測はしかし、超高層ビルのレストラン街でホストとは別人の切断された左手が見つかったことで覆される。同一犯による事件なのか? なんのために? 欲望渦巻く街で、少ない手がかりから犯人を、真相を突き止めることはできるのかーー。
ちょっと不思議、だけど愛おしい。もしも動物たちや花の精霊と話ができたらー。個性あふれる仲間たちとの出会いを描く、ほっこり短編小説集。運転手に化けた狸とのアイロニックな世間話ー「タクシードライバー」。ネズミに鰺の塩焼きを盗まれた哀れな愛猫とのドタバタなリベンジ劇ー「猫とネズミ」。庭に咲くピンクの花に宿る可愛い精霊のささやかな“お仕事”-「捩花の精霊」。ほか15編の物語。
非モテ男性へのエール、誰も予想だにしない展開 ときどき、人間は怖い 非モテで女性経験のない男性が、自分とは絶対に釣り合わない美人ソープ嬢に恋慕。 そのソープ嬢は、人を不幸へと追いやるような性格の持ち主だった。 誰も予想できない展開、衝撃的な結末が待ち受ける物語。
18世紀初め、ロンドン大火後の首都再建計画の一環として市内各所に建設中の7つの教会に、異端の聖堂建築家ニコラス・ダイアーが秘かに仕掛けた企みとは。一方、それから約250年後、現代のロンドンでは教会周辺で少年ばかりを狙った連続殺人が発生、有力な手掛かりもないまま深まる謎に、捜査を指揮するホークスムア警視正は次第に事件の奥に潜む闇に吞み込まれていく。時を超えて反響しあう2つの物語の結末は……。円環する時間と重層する空間を通して魔都ロンドンを彷徨う都市迷宮小説。「『魔の聖堂』は機知に富んだ不気味な想像力の作品であり、複雑なプロットを有し、人類の堕落した本質に対する懸念が繰り返し執拗なまでに描き込まれている」(ジョイス・キャロル・オーツ)。デヴィッド・ボウイが愛読し、アラン・ムーア(『フロム・ヘル』)らに影響を与えた、ウィットブレッド賞、ガーディアン小説賞受賞作。
人と暮らすって不自由で息苦しくて、でも時々たまらなく愛おしい。 塾講師として働いている遙は、友人たちとのルームシェアを解消して気落ちしていた。そこに同僚で恋人の百ちゃんがやって来る。 同棲をスタートしたふたりだが、遙は大好きなはずの百ちゃんとの暮らしに窮屈さを感じ始める。ひとりの空間や時間、娯楽を至上の楽しみとする遙に対して、「何をするかより、誰といるか」を重視する百ちゃん。価値観が根本的に異なるふたりは、少しずつ、しかし確実にすれ違っていきーー。 好きなのに分かり合えない同棲カップルに、 母との喧嘩を機に別居していた父のところに転がり込んだものの、距離感に戸惑う女子中学生。 アパートの隣室に住む人懐っこいおばあさんに友人認定され、交換ノートを始めた女子大生。 暮らしの中で経験してきた悩みも、喜びも、きっとそこにある。 誰かと生きる日々のきらめきを、優しく掬い上げた5篇の連作短編集。 ■著者プロフィール 川上佐都(かわかみ・さと) 1993年生まれ。神奈川県鎌倉市出身。『街に躍ねる』で第11回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞しデビュー。
なぜ生きるのか、なぜ死ぬのか、なぜ愛するのか、なぜ自分は自分なのか…。 生きづらさ当事者として心の病気や死にたい気持ちをそのまま肯定し発信する作家・カウンセラーの咲セリが贈る、4つの問いを紡ぐフィクション短編集(4編収録)。ふがいない自分をただただ肯定する、お守りのような一冊。人生に迷い押しつぶされそうな時に、「生きたい」というひとすじの強烈な希望を見つけられることでしょう。 ・どうして生きているんだろうー。ミノの中でもがく「きみ」と「あなた」の物語 - 『いのちのほとり』、 ・感じることを忘れてしまった「その人」の、人生の終わりにふいに訪れた独りじゃない夜の痛み -『あわいのほとり』、 ・愛する人を突然失い、取り残された日々を生きる「彼女」が抱えていく想い -『さようならのほとり』、 ・”一度でいいから、誰にも所有されない生というものを味わってみたかった。”違う生を望みながら自らの生を終える生きものたちの命の連鎖 -『えいえんのほとり』。 <造本の美しさ> この本は、本来の上製本の造形の美しさを味わってもらうために、カバー無し・帯のみの商品となります。 表紙には手触りの良い紙を使用し、手のひらにそっと乗る、小さくて軽い本になっています(縦160cm×横130cm・厚み1.1cm、重さ174g)。 丁寧に作られたものは、そこにあるだけで人の心を癒すお守りになります。 2色刷で作られた中面には、全144ページ中60点以上の挿絵を掲載。見返し紙としおりひもには、表紙の絵に合わせた水色を使用。 文字を読む元気がない時でも、ただそこにあるだけで持ち主の存在を肯定できるような、お守りになるような美しい本が出来ました。(版元:風鯨社より) <作家より> 「ここにある小さな物語は、私の最初に出会った問いに、不器用な私がみつけた、私なりの答えです。命の数だけ、答えがあると思います。だから、共感してほしいとは望みません。 ただ、こんなふうな見方をした人間もいるのだと、もしこれを読んでいるあなたが苦しんでいるのなら、知ってもらえたら少しだけ嬉しい、そう願い書きました。 」 咲セリ(本文あとがきより) いのちのほとり -なぜ生きるのか あわいのほとり -なぜ死ぬのか さようならのほとり -なぜ愛するのか えいえんのほとり -なぜ自分は自分なのか あなたの物語 あとがき この本を一緒に作ってくれたみなさま