2023年7月24日発売
年間100 冊を読破、無類の読書好きとして知られるニシダがついに小説を執筆。 繊細な観察眼と表現力が光る珠玉の5篇。 【収録作品】 「遺影」 じゃあユウシはアミの遺影を作る担当なーー。中学1年の夏休み、ユウシはクラスでいじめられている女子の遺影を作らなくてはいけなくなった。 貧しい親のもとに生まれてきたアミと僕とは同じタイプの人間なのに……。そう思いながらも、ユウシは遺影を手作りし始める。 「アクアリウム」 僕の所属する生物部の活動は、市販のシラス干しの中からシラス以外の干涸びた生物を探すだけ。 退屈で無駄な作業だと思いつつ、他にやりたいこともない。同級生の波多野を見下すことで、僕はかろうじてプライドを保っている。 だがその夏、海釣りに行った僕と波多野は衝撃的な経験をする。 「焼け石」 アルバイト先のスーパー銭湯で、男性用のサウナの清掃をすることになった。 大学の課題や就職活動で忙しいわたしを社員が気遣って、休憩時間の多いサウナ室担当にしてくれたらしいのだが、新入りのアルバイト・滝くんは、女性にやらせるのはおかしいと直訴したらしい。 裸の男性が嫌でも目に入る職場にはもう慣れた、ありがた迷惑だと思っていたわたしだったがーー。 「テトロドトキシン」 生きる意義も目的も見出せないまま27歳になり、マッチングアプリで経験人数を増やすだけの日々をおくる僕は、虫歯に繁殖した細菌が脳や臓器を冒すと知って、虫歯を治さないという「消極的自死」を選んでいる。 ふと気が向いて参加した高校の同窓会に、趣味で辞書をつくっているという咲子がやってきた。 「濡れ鼠」 12歳年下の恋人・実里に、余裕を持って接していたはずの史学科准教授のわたし。 同じ大学の事務員だった彼女がバーで働き始めてから、なにかがおかしくなってしまった。 ある朝、実里が帰宅していないことに気が付いたわたしは動転してしまう。 遺影 アクアリウム 焼け石 テトロドトキシン 濡れ鼠
『そして、バトンは渡された』『夜明けのすべて』の著者の書下ろし長編 いまを生きる私たちの道標となる物語の誕生! 「明日が怖いものではなく楽しみになったのは、あの日からだよ」 今でもふと思う。あの数年はなんだったのだろうかと。 不自由で息苦しかった毎日。 家で過ごすことが最善だとされていたあの期間。 多くの人から当たり前にあるはずのものを奪っていったであろう時代。 それでも、あの日々が連れてきてくれたもの、与えてくれたものが確かにあったーー。 【著者より】 何かと制限され思いどおりに過ごせない毎日を、大人も子どもも、誰しもが 困難を抱えながら進んできたと思います。 そして、これから、また違う日々に向かわないといけない中で、ほんの少しでも 明るいものを差し出せる物語になれれば。そう思っています。
好き避けだけど、きみを救えますか?ウェブエディターの杉崎健作は、好きすぎて接近できない山田さんを守るため、ハラスメント相談室の相談員になるがー。思わず応援したくなる最弱ヒーロー主人公No.1!?幾重もの謎解きの先に熱い涙がこみ上げる、渾身の青春エンターテインメント!
創立百周年の名門学園が抱える闇とは!?聖なる歌声は、狂気への入口ー由緒あるミッション系学園中等部に転校してきた透花。合唱部に入部したことから、不穏な出来事が頻発し始めた。執拗なイジメ、許されぬ恋愛、自殺、そして猫の惨殺…調査の先に見えてきた学園の裏の顔は?そして、密かに続けられていた禁忌の実態とは?すべての鍵は、教頭だった父の死の真相。クリスマスの合唱祭で、すべての闇が明らかになる!
突然目が見えなくなる「白の闇」事件から4年後、首都の総選挙は土砂降りに見舞われる。午後4時になると人びとは投票所に押し寄せるが、7割以上が白票、再投票では白票が8割を超える。政府は非常事態宣言を発し、首都を封鎖する。政府組織が市外に脱出する一方、首都では市民たちの自治が始まるが、彼らを組織する首謀者は見えず地下鉄中央駅で大規模なテロが発生する。市民たちの平和的なデモ、地下鉄前広場での共同葬儀、権力維持と自己保身に走る閣僚たち…。やがて1通の手紙が大統領に届き、「白の闇」事件でみんなを勇気づけた優しい女性の捜査が始まる。傑作『白の闇』と対をなすノーベル賞作家による警鐘の書。
映画『霧の波止場』の原作として名高い、ニヒルな傑作長編『夜霧の河岸』。久生十蘭が『金狼』の下敷きにした、パリの幻影の夜をめぐる暗黒小説『真夜中の伝統』。港町の娼家が舞台となる珠玉の推理短編『赤線地区』。3編すべてが初訳。本邦初の3冊本選集がついに完結!!
徳川家康から南部藩が拝領し、盛岡城内で飼われていた虎二頭、乱菊丸と牡丹丸が檻から飛び出した。徒目付の米内平四郎は城下町に逃げた乱菊丸を見事に生け捕りするが、牡丹丸は傍若無人の若殿・南部利直に鉄砲で撃ち殺されてしまう。檻の見張りをしていた番人の自刃には不審な点が、さらに檻の中にいるはずの囚人の死体は消えていた!若殿の乱心か、領内のキリシタンの仕業か、それともー!?密命を受けた平四郎が藩を揺るがす大騒動の謎に挑む!
高校2年生のリョウを取り巻く4人の年上女性。彼女らに翻弄されて、自分を見失っていく苦悩と葛藤に彷徨うリョウの行き着く先とは。青春期の挫折と恋愛を鮮烈に書き綴ったデビュー作。
上野の国(現・群馬県伊勢崎市周辺)で領民とともに土地を守り続けた那波氏一族。 長尾景虎(後の上杉謙信)と干戈を交え、武田信玄の許で真田氏とともに闘い、那波無理之介として名を馳せるも、やがて時代の大波に呑まれる悲運の一族……。