2024年5月21日発売
高校生の晴野は部屋を出られない。胸がどきどきして苦しくなるからだ。そのせいで学校にも行けず、ひとけのない夜にだけ外に出る生活。奔放な母親は再婚した義父と暮らしており、連絡は途絶えがちになっている。母親の記憶は、見知らぬ男からの暴力と二重写しだった。ある夜、コンビニからの帰り、晴野は同級生の美夜子と出会う。「悪い人間になりたい」という彼女は、そのわりに、飲酒も喫煙も、万引きも暴力も「犯罪だから駄目だよ」と言う。そして晴野は美夜子と、まるで子供の遊びのような、無邪気な夜の時間を重ねていく。しかし夏のある日、彼は彼女の「秘密」に気づき…。魔法のiらんど大賞2022小説大賞“文芸総合部門”特別賞。
高校三年生の秋。代わり映えしない僕の日々を変えたのは、東京から転校してきたという美しい少女、夏子。謎めいた過去を抱える彼女が僕だけに秘密を打ち明けたことをきっかけに、心の距離が急速に縮まっていく。コスモスが咲く美しい丘で、白銀の雪景色の中で、僕たちは愛を誓った。しかし、どんな困難も乗り越えて幸せになると決意した矢先、それは突然に訪れたー。運命に導かれた二人のかけがえのない時間を描いた、愛おしくも切ない物語。
人生をかけて臨んだ紀夫の「かなしき愛」の物語。広い世界でただ一人の運命の人に出会った紀夫。13歳から9年半、頑ななまでに一途な愛を貫くも、かなわぬ想い。妻であり娘でもある女性の錯乱する精神。二人がもがきながら進んで来た結果の、悲しい定め。分裂する想い。
痛快!天才看護師、ダメな日本の医療をぶった斬る 人気コミック『おたんこナース』の原案者が送る、常識破りなメディカル・ノベル 看護師の橘高朱理(ナイチン)は、"クリミアの天使"ことフローレンス・ナイチンゲールの子孫だった。「看護統計学の始祖」だった先祖の血を受け継ぎ、ハーバード大学医学大学院で最先端の医学と統計を学び首席卒業。比類なき能力で医者たちを大幅に凌駕し、日本の医療の闇に斬り込んでいく。ユニークな仲間たちとともに天才ナースが繰り広げるドラマの連続に目がはなせない痛快メディカル・ノベル 第1話 認知症者が失踪する街 第2話 多剤併用・残薬問題に効く薬 第3話 介護老人保健施設の抗争 第4話 パンダがつなぐ信頼区間 第5話 刺客のマラソンランナー
日系カナダ人4世の著者の手による自伝小説(オートフィクション)。本書の著者であり主人公でもあるレスリー・シモタカハラは、名門ブラウン大学で文学博士号を取得、カナダの田舎の大学で文学を講じている。だが、学生から〈史上最悪の教授〉と揶揄され、転職も恋愛も失敗、精神的にひどく追いつめられてトロントの実家へ帰郷。定年退職した父のために作った「リーディングリスト」=読むべき本リストに添って、日系カナダ人としての両親や祖父母の人生をたどり、自分自身の生と死を見つめる日々を送ることになる。 本書は13章から成りたっており、各章のタイトルがすべて、リストの作品名、つまり英米加の文学作品の名前になっている。たとえば、ソロー『森の生活』、ウォートン『歓楽の家』、ジョイス『ダブリナーズ』、ウルフ『ダロウェイ夫人』、ナボコフ『ロリータ』、ハメット『マルタの鷹』など。この13作品はすべて翻訳が出ていて、日本語で読むことができる。 解説・倉本さおり(書評家) 第一章 ヘンリー・デイヴィッド・ソロー『森の生活』 第二章 イーディス・ウォートン『歓楽の家』 第三章 ジェイムズ・ジョイス『ダブリナーズ』 第四章 ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』 第五章 ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』 第六章 ダシール・ハメット『マルタの鷹』 第七章 ウィリアム・フォークナー『死の床に横たわりて』 第八章 アーネスト・ヘミングウェイ『日はまた昇る』 第九章 ウィラ・キャザー『教授の家』 第十章 マーガレット・アトウッド『浮かびあがる』 第十一章 ラルフ・エリソン『見えない人間』 第十二章 ジョイ・コガワ『失われた祖国』 第十三章 マイケル・オンダーチェ『家族を駆け抜けて』 訳者あとがき 解説 「わたし」の脚注から「あなた」の脚注へ 倉本さおり