2024年5月発売
それはローナが新たな人生に踏み出した矢先の交通事故だった。子宮外妊娠で第一子を失い、すれ違いから夫ジェイムズとも別れて以来、いつか大切な命を産みたいと、おなかの痛みにも耐えてきた。10年が過ぎた今、ようやく子供をあきらめて手術を受ける決心をし、故郷を離れてロンドンで暮らそうとしていたところだったのだ。病院に運ばれ、病室で意識を取り戻した彼女の耳に懐かしい声が届く。「ローナ…」ああ、なんてこと。ここはジェイムズの病院!思わぬ再会後、やがて快復したローナは、彼と一緒に働くことになる。その前に過去のわだかまりを解くように、二人は一夜を共にした。ローナは彼の腕の中で、じきに手術で子を望めなくなる切なさに震えた。
派遣看護師のコンスタンシアは仕事先のオランダで、イエルン・ファン・デル・ヒーセンという医師と出会った。年上のドクターは優しく穏やかで、笑顔がすてきな男性だ。一緒にいると心が安らぎ、いつしか彼女は恋に落ちていた。人づてに聞いた話では、彼は決して裕福ではないようだけれど、コンスタンシアはむしろそのほうがいいと思っていた。これまでに会ったお金持ちは皆、心が貧しく不幸な人ばかりだった。お金なんてなくていい。ささやかな幸せのほうが大切なのだから、と。しかし、コンスタンシアはまだ知らなかった。まさかドクターが本当は、お金持ちの男爵だったとは…。
ジェイコブズビルの大企業で役員秘書の仕事を得たレスリー。人に言えない悲劇的な過去から逃れたくて、心機一転この町へ来たのに、大富豪社長マット・コールドウェルが彼女の前に立ちはだかる。前評判によると、気さくで感じがいいと言われていたマットはしかし、初対面から傲慢で、レスリーにつらく当たってばかり。ああ、彼は私の過去を知っているのかもしれない…。彼女は内心怯えるが、あるパーティでマットからダンスに誘われる。不思議なことにふたりの息はぴったりで、男性恐怖症にもかかわらずレスリーは彼と楽しく踊ることができたー過去の悲劇のせいで後遺症がある脚が、痛みに耐えられなくなるまでは。
『一夜の波紋』ティナはギリシア大富豪ニック・レアンドロスの妻になった。事故死した彼の異母弟の子を宿している彼女は、おなかの子にレアンドロス姓と安定した生活を与えるべきだと主張するニックに説得され、偽装結婚に踏みきったのだ。だがティナは苦しんでいた。決して愛されない名目だけの妻なのに、彼を愛してしまったことに気づいて。『プリンスにさらわれて』ある晩、帰宅した英語教師のプルーはハンサムな侵入者に遭遇する。彼の正体は、さる国の王位継承者カリム。プルーの教え子である妹が行方不明になり、手がかりを求めて彼女に会いに来たのだった。突然のことに困惑するプルーを、カリムは王になる者らしい尊大な口調で脅した。「一緒に来なければ、君は後悔することになる」『結婚はナポリで』母が死に際に詳細を明かした実の父に会うため、キャサリンはイタリアへ飛んだ。そこで出逢ったのは、父の若き友人でダビデ像のように美しい大富豪アレッサンドロ。彼は妻に先立たれて男手一つで息子を育て、もう結婚はしないつもりだった。そうとは知らない彼女は、父を待つ間、親切にしてくれる彼になす術なく惹かれていく。
『恋はあせらず』家政婦のケイトはいつか自分の店を開きたくて、雇い主のわがままや薄給に耐え、こつこつとお金を貯めていた。ある日、雇い主の甥で高名な医師ミスター・テイト=ブーヴァリと出逢い、ハンサムな彼に恋心を抱く。こんな人と結婚できたら…。叶うはずもない大それた願いをそっと胸の奥にしまった彼女に、思いもよらぬ不幸が起こる。不良集団に大事な給金を盗まれてしまったのだ!悲嘆に暮れるケイトを、ミスター・テイト=ブーヴァリが優しく慰めるが、彼女にはわかっていたーこれは単なる同情で、愛ゆえではないと。『独りぼっちのシンデレラ』両親を早くに亡くしたケルシーは夢をあきらめ、家事代行業で3人の弟を育てあげた。これからは自由を満喫し、自分らしく生きていくつもりだ。そこへ、悪名高きプレイボーイ大富豪のルークが仕事を頼んできた。男らしい魅力を放つ彼に、ケルシーはどぎまぎした。しかも、夢を書き連ねたリストを偶然彼に見られてしまうー“熱烈な情事を経験したい”と記したものを。ルークは目を輝かせてリゾートにケルシーを誘った。「熱烈なひとときなら、この僕にまかせてくれ」ケルシーにはとてもあらがえない、魅力的な提案だった。
空から吊り下げられた観音菩薩、死を看取る砂の凹み、崖の下に落っこちた名前、浴槽に横たわる見知らぬ女、落魄した天才詩人の告白、頭にこびりついて離れないメッセージ、在りし日の自分との邂逅…世界の無意識に出会うシュルレアリスム小説集。
自分の名前も覚えていない状況で、気付けば小さな妖精に転生していた『私』。記憶もあいまいで状況もよくわからないけれど、「ま、いっか」の一言で全てを受け入れた『私』は、成り行きで助けた王女さまについて行って大きな街“王都”にたどり着く。さっそく王都観光をしていると…。近くにいた人の傷が勝手に治っちゃったり、王宮のお風呂で泳いでいたらお湯が聖水に変わっちゃったり、ノリで下水を汚染していた原因を浄化しちゃったり、王女さまのペット?になっちゃったり。自由に活動しているだけなのに、王都の問題が次々と解決!?超ポジティブ思考の妖精さんがおくる、無自覚救国ファンタジー!!
魔法都市を後にしたレウス一行は、大陸の東側ー東方を目指すことに。道中、砂賊に襲われた王国を助けるなど、寄り道をしながら東方最大の国へたどり着く。そこは、カラクリと呼ばれる機械が普及し、かつてレウスが訪れたときから急激に発展を遂げていた。そんな中、レウス一行は爆乳サムライ少女・カレンと出会う。武者修行で都会に出てきたカレンは、些細な出来事がきっかけでレウスと行動を共にするが、彼女には何か深い事情があるようでー。
時忘れの都にゴーレムの大群が襲来。ノールとシャウザが協力して撃退するが、砂嵐の中から現れたのは、かつて戦った最強の敵だった……。
ガイド役の天使を殴り倒したリンネは、隠しイベント“魔神バビロン降臨”を引き当てる。魔神より授かったのは、ユニークジョブ『死霊術師』。固有スキルでレアモンスターを仲間にし、サクサクと強化&進化。気づいたら世界を脅かすほどの最強パーティに!?裏イベントを次々に発見し、敵は圧倒的チームプレイで蹂躙する!無自覚に最前線を切り拓く災害級新人、爆誕!!WEB連載時より圧倒的人気を誇るトリップ・ファンタジー巨編、待望の書籍化。
住居兼店舗の準備が終わり、クウ・マイヤはついに自分のお店を持つことができた。 アクセサリーから単なるぬいぐるみまで、いろんなものを売ることにしたが一向にお客さんは増えない。 そんな中、精霊に会うために旅をするというエルフや、闇の大精霊を名乗る女の子まで現れ、てんやわんやで──。
港町・ネメシリアに別れを告げ、旅立ったトウヤたち。神の使いとして次に目指すのは北方の迷宮都市・ダンジョール。険しい山道の途中、一行はS級冒険者パーティ『飛竜』と遭遇する。しかも、旅の仲間であるカトラとは何やら面識があるようで…?そして、山を越え眼前に広がるのは一面の銀世界!雪山に麓に所狭しと並ぶレンガ造りの家々と巨大な冒険者ギルド。この街の名物は未知なる魔物や宝が眠る“ダンジョン”。まだ見ぬ出会いを求め、トウヤたちも探索に乗り出すのだが…のんびり気ままな異世界旅行、雪降る迷宮都市・ダンジョール編!
わがまま侯爵令嬢ローザ・クロイツァーは、初恋の王子アレックスと観劇の帰り、馬に蹴られてしまう。 そのおかげで、おでこに大きな傷が! だが、それより重大なことに彼女は気付いてしまう。 「ここは前世で私が読んでいた漫画の世界。そして私は第一章で毒殺される脇役な悪役令嬢!」 前世は社畜で過労死。今世は超お金持ちの侯爵令嬢で毒殺予定。 冗談じゃないわ。散財して長生きしてやる! そんなローザの奮闘記。
格安で異世界の山を買い、山暮らしを始めた望月五月。モフモフ従魔や古龍と、獣人の子供たちの面倒をみながら騒がしくも楽しい日々を過ごしていた。「夏だ!軽トラでおでかけだ!」すっかり田舎の夏休み気分な五月たち。燻製肉を焼いたり、世界樹を植えたり、養蜂箱を設置したり、山でやること、まだまだいっぱい!手入れした土地も五月の領地になり、大開拓が進みます。ドッグランにはホワイトウルフ一家もおおはしゃぎ!!さらに、獣人の村まで作ることになって!?(遠い目) ただいま、モフモフたちと山暮らし。スローライフな異世界生活、第三弾。書籍限定書き下ろし、二本収録!
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したことに気づいた八歳のペトラ・ハクスリー公爵令嬢は、ヒロインである異母妹をいじめてしまう前に、公爵家から逃げ出すことにした。ペトラは持ち前の治癒能力を鍛えるべく、貧民街でたくさんの人々を助けた結果、九歳にして見習い聖女となり、大神殿で暮らすことになる。新たな環境での生活を始めた矢先、ペトラは大神殿の庭園で同い年の美少女ベリーと出会う。ベリーは無気力無感動、ちっともしゃべらない、人形のような子でー。「第3回一二三書房WEB小説大賞」“金賞”受賞作!!
リアルにファンタジーが溶け出し、新たな世界へと導く山野辺太郎の真骨頂! やわらかい言葉と適度なペーソスで、作者は奇想を真実に変える。「恐竜時代」とは、人を信じるための胸のくぼみに積み重ねられた、記憶の帯だ。私たちの心の地層の底にもそれは眠っていて、あなたに掘り起こされる日を静かに待っている。 ーー堀江敏幸 「恐竜時代の出来事のお話をぜひ聞かせていただきたい」。 ある日「世界オーラルヒストリー学会」から届いた一通の手紙には、こう記されていた。 少年時代に行方をくらました父が、かつてわたしに伝えた恐竜時代の記憶。語り継ぐ相手のいないまま中年となったわたしは、心のうちにしまい込んだ恐竜たちの物語ーー草食恐竜の男の子と肉食恐竜の男の子との間に芽生えた切ない感情の行方を、聴衆の前で語りはじめる。 食う者と食われる者、遺す者と遺される者のリレーのなかで繰り返される命の循環と記憶の伝承を描く長編小説。 表題作ほか、書き下ろし作品「最後のドッジボール」を収録。