小説むすび | 2024年7月5日発売

2024年7月5日発売

四つの白昼夢四つの白昼夢

発売日

2024年7月5日 発売

コロナ禍がはじまり、終息に向かった。これは目眩? 日常の隣にある別世界。分別盛りの人々の抱えた困惑と不安をユーモアと活力あふれる文章で描く四つの日常奇譚集。妻は売れっ子イラストレーター、夫は音楽家。30代の夫婦が不動産屋の仲介で移り住んだ理想の家。しかし夫が出張中のある夜、天井から異様な物音が……。気のせい? 事故物件? それとも……。そしてある日、夫婦は隣家の秘密を知ることになる。(「屋根裏の散歩者」)酔い潰れ、夜更けの電車内でヴァイオリンを抱いて眠る老人。慌てて下りていった彼の忘れ物は、なんと遺骨。「才女好き」と噂された男の、四十年に及ぶ家庭生活に、秘められたものはいったい何だったのか。(「妻をめとらば才たけて」)亡き父の後を継いだレストラン経営がコロナ禍で破綻に瀕している。家庭がきしみ始め、しっかり者の母が倒れ、妻は子供を連れて出て行く。負の連鎖の中でどん底の男が、はまったのは、因縁付きの謎の植物。完璧なフォルム、葉の緑のグラデーション。マニアの世界は地獄より深かった。(「多肉」)認知症の義母が亡くなった。ようやく見つけた葬儀用の遺影。しかしその肩先には人の手が写っている。そして切り取られた半分には見知らぬ男が。背景からすると、近くの動物園で撮影されたようだ。慎ましく物静かで、実の娘息子にも本音を語ることのなかった人の心の内にあったものは?(「遺影」)現実と非現実の裂け目から見えた、普通の人々の暮らしと日常の裏側。『鏡の背面』(集英社文庫、吉川英治文学賞受賞作)や『冬の光』(文春文庫)の流れにつながる、人の心の不思議と腑に落ちる人生のリアリティにあふれる力作。

日月潭の朱い花日月潭の朱い花

著者

青波杏

出版社

集英社

発売日

2024年7月5日 発売

【第35回小説すばる新人賞受賞後第一作】 デビュー作『楊花の歌』 Apple Books 2023年ベストデビュー作 (歴史フィクション) 第12回歴史時代作家協会賞新人賞部門候補 第3回本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞候補 【東山彰良さん推薦!】 本当の自分への逃走はこんなにも輝かしい 25歳のサチコは、不条理な派遣労働から逃れるように亜熱帯の台湾に渡り、偶然再会した在日コリアンのジュリと、台北の迪化街で暮らしていた。 誕生日の晩、サチコが古物商の革のトランクのなかに日本統治時代の台湾を生きた女学生の日記をみつけたことから、ふたりの生活は一変する。 普段は引きこもっていたジュリだったが、その日記を書いた女学生の行方調査に夢中になり、やがて大きな謎につきあたった。 それは、70年以上前、深山に囲まれた日月潭という湖で起こった、ある少女の失踪事件だった。 遠い昔に姿を消した少女を探す旅は、いつしかふたりのアイデンティティを求める旅につながってゆくーー。 【著者略歴】 青波杏 (あおなみ・あん) 1976年、東京都国立市出身。近代の遊廓の女性たちによる労働問題を専門とする女性史研究者。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。22年『楊花の歌』で第35回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。

今夜、喫茶マチカネで今夜、喫茶マチカネで

著者

増山実

出版社

集英社

発売日

2024年7月5日 発売

「実は、私には、今まで誰にも話してこなかった、秘密があります」 昭和29年に大阪の待兼山駅前で父と母が始めた書店と喫茶店。 1階の書店を兄が、2階の喫茶店を弟が継いだが、時代の流れもあり、65年続いた店の歴史の幕を閉じることに。 残された数ヶ月間、月に一度開かれる「夜会」で、街にゆかりの人々が語る とっておきの思いがけない体験、生涯最高の思い出とは……。心あたたまる連作短編集。 (第一話:待兼山ヘンジ/第二話:ロッキー・ラクーン/第三話:銭湯のピアニスト/第四話:ジェイクとあんかけうどん/第五話:恋するマチカネワニ/第六話:風をあつめて/第七話:青い橋) 【著者略歴】 増山 実 (ますやま・みのる) 1958年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。2012年に「いつの日か来た道」で第19回松本清張賞最終候補となり、それを改題した『勇者たちへの伝言』で2013年にデビュー。同作は2016年に第4回大阪ほんま本大賞を受賞した。他の著書に『空の走者たち』『風よ 僕らに海の歌を』『波の上のキネマ』『甘夏とオリオン』『ジュリーの世界』(第10回京都本大賞受賞作)『百年の藍』がある。

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