2025年5月27日発売
首相暗殺テロが相次いだあの頃、インターネット上にもう一つの爆弾が落とされていた。ブログに突如書き込まれた【宣戦布告】。そこでは、SNSで誹謗中傷をくり返す人々の名前や年齢、住所、職場、学校……あらゆる個人情報が晒された。 ひっそりと、音を立てずに爆発したその爆弾は時を経るごとに威力を増し、やがて83人の人生を次々と壊していった。 言葉が異次元の暴力になるこの時代。不倫を報じられ、SNSで苛烈な誹謗中傷にあったお笑い芸人・天童ショージは自ら死を選んだ。ほんの少し時を遡れば、伝説の歌姫・奥田美月は週刊誌のデタラメに踊らされ、人前から姿を消した。 彼らを追いつめたもの、それはーー。 * * * ■宣戦布告■ よく聞け、匿名性で武装した卑怯者ども。 SNSなんてなくなればいいのにな。えっ、ダメ? 余計なこと言うなって? そうだよなぁ。やっとおまえら権力者になれたもんな。炎上させて誰かが何かを諦めたときに、社会を変えてやったと実感できるもんな。そうやって表面的な正義感で研いだナイフで、悪意の塊でつくった毒で世直ししてるもんな。 やっぱり俺は週刊誌とおまえたちを赦せない。 だからやってやるよ。俺には俺の、ケジメのつけ方ってもんがあるんだよ。 これから重罪認定した八十三人の氏名、年齢、住所、会社、学校、判明した個人情報の全てを公開していく。 八十三なんて数字は氷山の一角に過ぎない。だが、図に乗ってると、次はおまえの番になるから肝に銘じておけ。 明日にはおまえたちの人生はめちゃくちゃになっている。 奥田美月や天童ショージのように。 せめて今日を楽しめ。あばよ。
少女小説の黎明期に、『少女画報』を舞台に数々の傑作を残した作家ーー伊澤みゆき。 その名と作品は長らく埋もれていたが、伊澤の作品が少女小説に与えた影響は大きく、吉屋信子は、「みんなが伊澤みゆきの作品がいいと思うように、自分の作品もそう思われたい」と語り、後に代表作となる『花物語』の第一編を『少女画報』に投稿したという。今あらためて、その文学的価値と独自の世界観が見直されている。 伊澤の作品には、甘く優しいだけではない、どこか影を帯びた「闇のオーラ」を放つ友愛小説が多く見られる。嫉妬や執着、ルッキズムーー少女たちの内面に潜む痛みや陰りが、丁寧に、そして烈しく描かれ、百年前の少女たちの叫びは、今もなお私たちの心に鮮烈な衝撃をもたらす。 本書は、伊澤みゆき初の作品集であり、『少女画報』に掲載された全60篇を収録。テーマごとに5章に分け、彼女の多彩な作風を存分に味わえる構成とした。また、女性研究者たちによる詳細な解説も収録し、文学史的な視点からも伊澤の作品を掘り下げる一冊となっている。 【目次】 1「いっそあの方が死んで下すったなら──少女同士の愛」 2「若く美しくお亡くなりに──追憶の人」 3「余計なお世話よ──愛ちゃんのスケッチ」 4「どうせわたしも捨てられた身だ──家庭の話」 5「我は少女(おとめ )!──少女であること」 解說:永渕朋枝(神戸女子大准教授) /久米依子(日本大学文理学部特任教授) 装幀:アルビレオ 装画:Ashley YK Yeo 1「いっそあの方が死んで下すったなら──少女同士の愛」 2「若く美しくお亡くなりに──追憶の人」 3「余計なお世話よ──愛ちゃんのスケッチ」 4「どうせわたしも捨てられた身だ──家庭の話」 5「我は少女(おとめ )!──少女であること」 解說:永渕朋枝(神戸女子大准教授) /久米依子(日本大学文理学部特任教授)
高2の女の子・蛍は修学旅行の途中、交通事故に遭い、命を落としてしまう。そして、案内人・クロが現れ、この世に残した未練を3つ解消しなければ、成仏できないと蛍に告げる。蛍は、未練のひとつが5年間片想いしている蓮に告白することだと気づいていた。だが、蓮を前にしてどうしても想いを伝えられない…。蛍の決心の先にあった秘密とは?予想外のラストに、温かい涙が流れるーー。3万字増の加筆修正と、書き下ろし番外編を加えた完全版!
幼いころから触れた人の余命が見える高2の瑞季。そんな彼は、人との関わりを極力避けていた。ある日、席替えで近くなった花純に「よろしく」と無理やり握手させられ、彼女の余命が少ないことが見えてしまう。数日後、彼女と体がぶつかってしまい、再び浮かびあがった数字に瑞季は驚く。なんと最初にぶつかったときより、さらに余命が1年減っていたのだったーー。瑞季がその理由を問うと彼女からある秘密を明かされる。彼女に生きてほしいと奔走する瑞季と運命に真っすぐ向き合う花純の青春純愛物語。書き下ろし番外編を加えた単行本で再登場。
海外の怪奇幻想小説から、傑作を選りすぐり、一流の翻訳で、ホラー愛好者に贈るナイトランド叢書。 第5期第1回配本! アメリカン・ホラーの巨匠、マンリー・ウェイド・ウェルマンが贈る幻の連作、遂に邦訳! 魔人、ヴードゥーの精霊、異形の存在〈ショノキン〉…… 得体の知れない魔物に、論理と魔術と肉体の力で挑む ハードボイルド探偵、登場! 人ならざるものの恐怖に向き合う 珠玉の8編! ================= 暗い部屋が泳いだ──文字通りに。 サンストーンの頭の上のどこかから、生あたたかい水しぶきが降ってきた。 透過性のある、蛇の群れを思わせるものが現れた。 身を守るため、サンストーンは本能的に両手を挙げた。 右手にはパイプがあり、パイプはまだ煙をあげていた。 水は火を制す!──しかし、本当の水ではなく、水の感触だけだった。 そこにサンストーンの付け入る隙があった。 〈ショノキン〉の魔術から抜け出す隙だ。 捻じくれ、のたうつ触手が迫る中、サンストーンはパイプを咥え、煙を吹かした。 部屋が祓われた。 何事もなかったかのようになった。 サンストーンはパイプから灰を落とし、煙草を詰めてから、火を点けた。 ================= 「いいや、まだ先がある」ノービエは反論すると、読み進めた。 「ここを見てほしい。第六節が始まるところを。 『ここにひとりの人があって、神からつかわされていた。 その名をヨハネ(John)と言った……』」 ジョン(John)・サンストーンは手を伸ばすと、聖書を閉じた。 「私はずっと、自分の名に恥じぬように努めてきた」 彼の言葉は優しかった。 「いつか、この志を果たせるかもしれない。多少なりとも、ね」 ================= ーーーーーーーーー ◎目次 「ヴードゥーの踊り子イリュリア」 「ジョン・サンストーンが遺贈されたもの」 「死人の手」 「魔人ロウリー・ソーンふたたび」 「〈ショノキン〉ども」 「きわめつけの困難」 「〈ショノキン〉の街」 「ダ・ヴィンチの円盾」 コラム=〈ショノキン〉とジョン・サンストーン/渡辺健一郎 解説=ハードボイルド心霊探偵ジョン・サンストーン、ここに見参!/岡和田晃 ーーーーーーーーー 「ヴードゥーの踊り子イリュリア」 「ジョン・サンストーンが遺贈されたもの」 「死人の手」 「魔人ロウリー・ソーンふたたび」 「〈ショノキン〉ども」 「きわめつけの困難」 「〈ショノキン〉の街」 「ダ・ヴィンチの円盾」 コラム=〈ショノキン〉とジョン・サンストーン/渡辺健一郎 解説=ハードボイルド心霊探偵ジョン・サンストーン、ここに見参!/岡和田晃
韓国のベストセラー童話作家・権正生(クォン・ジョンセン)最後の作品。500年後の地球を見まもる「ランラン星」からやってきたテテロンの物語。500年前と500年後の社会を同時に描いた、地球と宇宙の子どもが交流するファンタジー。 ◆主な目次 ランラン星はほんとうにあるの 紙ひこうき 日記帳 みんななかよくランラン星へ 500年前の子ども、ポータル おしっこしてつかまっちゃった テテロンのさいごのプレゼント