著者 : 白石一郎
「同世代と会うと、つい病気自慢大会になっちゃう」そんなお父さん。「風邪くらいで休めないのは私も同じよ!」とお母さん。「眠剤効かねえマジ病む」と娘さん。それぞれ事情もおありでしょうが、皆さんいったん落ち着いて、この本読んでみて。元医師による本格的な医療ものから、短編の名手による不条理ものまで、本当に面白いですから。えっ症状は良くならない?それは病院に行ってください。
福岡黒田藩の要職を歴任し、いまは隠居の身の十時半睡だが、藩の生き字引として人望と尊敬を集め、藩士たちのさまざまなもめ事の相談が持ち込まれる。珍貴な刀の鐔収集に狂奔する武士たち、酒乱夫と“人形妻”の騒動など、泰平の武士の人間くさい珍事雑事を半睡が見事に裁く。大いなる共感を呼ぶ時代小説の傑作。
戦国時代終盤、対馬。海と船へのあこがれを抱いて育った少年・笛太郎は航海中に村上水軍の海賊衆に捕えられ、以後は水軍と行動をともにするようになる。そしていつしか笛太郎は比類なき「海の狼」へ成長していったー。海に生きる男たちの夢とロマンを描いた海洋冒険時代小説の最高傑作。第97回直木賞受賞作。
オランダの東洋探検船団の一隻リーフデ号に乗り込んだウイリアム・アダムスは、1600年4月19日、豊後水道の臼杵に漂着した。足掛け3年の過酷な航海の果て、同船の乗組員110人は24人の生存者を数えるのみであった。航海長アダムスは天下統一をめざす家康に目をかけられ、艦載の大砲を関ヶ原へと運ぶ。海洋歴史小説の金字塔。
「人生意気に感じるのもよいが、ほどほどにしておけ」-義侠心にあつく悪には情容赦ない岡っ引の衣笠卯之助。柔術は渋川流、剣術は直心影流の達人だが、女には滅法弱い。そんな卯之助が、維新前夜、開港まもない横浜を舞台に、与力の塩田正五郎と力を合わせて、難事件をつぎつぎに解決してゆく痛快熱血事件帖。
21歳のイギリス商社員トマス・グラバーは、アヘンの蔓延する魔都・上海で密航中の岡藩の元武士山村大二郎と出会う。二人は西洋帆船で東シナ海を越え、開港まもない新天地・長崎のオランダ出島に降り立った。…薩摩藩の五代才助の信用を得たグラバーに、艦船取引の商談が舞い込む。
慶長15(1610)年、駿府で生れ育った伊勢山田の神主・山田仁左衛門長政は御朱印船で長崎を出港、高山国(台湾)から黄金の都シャム(タイ)のアユタヤに渡った。シャムの女性と結婚し、国王の親衛隊として頭角をあらわし、やがて日本人でありながら、シャムの王族にまで登りつめた一代の快男児・山田長政の波瀾の生涯を描く。
シャムに渡ってアユタヤの日本人町の頭領となった山田長政は内戦の鎮圧が国王に認められて、宮廷の武将としての頂点に立った。寛永6(1629)年、リゴール国王となったが、翌年、毒薬で非業の死を遂げる。江戸時代、海を渡って異国で41年の生涯を終えた日本人山田長政の夢と冒険を描いた渾身の歴史長篇。
織田信長が天下一統を志して伊勢、志摩の平定に乗り出したとき、志摩の土豪から身を起こした九鬼嘉隆は真っ先に信長の麾下に馳せ参じた。信長の知遇を得て、九鬼の運命がひらけた。文禄の役で織田水軍の総大将として海戦に明け暮れた戦国大名の数奇な人生を聞く長篇時代小説。第5回柴田錬三郎賞受賞作。
海と船への憧れを抱いて対馬で育った笛太郎は、海賊船黄丸の船大将となつてシャムを舞台に活躍する。バンコクは明国の海賊マゴーチの本拠地。マゴーチは笛太郎の実父だが、笛太郎が異母弟を殺したことから、親子の宿命的な対決となる。海に生きる男たちの夢とロマンを描いた直木賞受賞作『海狼説』の続篇。
再建された西洋帆船の完成が間近に迫り、田沼意知は太陽丸と命名した。意次の意をくみ、船はロシアとの通商に使うことが決まった。この太陽丸を位内周助と鷹白らが襲撃した。なんとか焼失を免れた太陽丸は西廻りで蝦夷へ向かったが、途中またしても黒子の戦士・烏羽丸に襲われる。黒潮を血で染める戦闘が続く一方、白鬼の保護者・宙斎は黒子の於宇女に魅せられ、意知から離脱しつつあった。快調第四弾。
多々良一学は慶長元和の戦国豪傑の気風を色濃く宿す武辺者であった。しかし、ようやく平和の風に慣れた寛永のいま、この男は、周囲に、はなはだめいわくな男であった。“反時代”の悲しみを描く絶品の表題作ほか7編。