著者 : 谷津矢車
おいは、古か人間でごわす。自由という新しか言葉、何か大事なものを誤魔化しておらんか。戊辰戦争、鳥羽伏見の戦い。わずか5000の兵で3倍の勢力の幕府軍を撃破した“類稀なる軍略家”伊地知正治。薩摩人の誇りを胸に常勝を続けた伊地知が新時代に目にしたのは、荒廃した土地で貧困に喘ぐ民の姿…。大久保利通、西郷隆盛と並び称される勤王の志士の胸に、最後に去来するものとは。
松前家中の少年、春山伸輔は家名を復権させるべく、新政府の遊軍隊と合流。榎本軍への反乱活動を行っていた。一方、新撰組の土方歳三は、かつて近藤勇らと夢見た国盗りを、箱館政府によって実現させようとしていた。相反する二人の運命の出会いを圧倒的スケールで描く歴史小説の登場!
てめえらは、何度俺から奪えばそれで気が済むんだ。軽井沢の有名旅籠の次男として育った理吉。裕福な環境で恵まれた生活を送っていたものの、なぜか家族との距離を感じ、心はいつも満たされずにいた。そうした心の飢えを埋めるかのように兄・新吉のものをくすねては、新吉と喧嘩になる毎日。やがて新吉は侠の世界に飛び出すが、理吉は家業の手伝いをするのみ。旅籠の下働きの定丸に誘われるままに、博打を覚えたがために家を追われ、西海屋に流れ着く。番頭の慶蔵のもとで頭角を現すが…業と欲に呑まれ、因縁に絡み取られていくー因果と侠の中で揺れる、流転と転落の男の物語。
戦国時代末期、母とともに寺で住み込みで働く又兵衛は、生来の吃音が原因でままならぬ日常を送っていた。そんな中、ひとりの絵師と出会った又兵衛は、絵を描く喜びを知る。しかしある日、母が何者かに殺されたー。
雑賀孫市は三人いた!?最強の鉄砲傭兵集団「雑賀衆」が対峙するのは、戦国の梟雄・織田信長ー。戦国末期、織田・浅井・三好といった大大名らが生み出す歴史のうねりの中で、孫市の名を負った三兄弟の運命はすこしずつ狂い始める。たちこめる硝煙に隠された切ない悲劇を、気鋭の歴史作家が描き出す!
「天下の陣借り武者、島左近、死ぬまで治部殿の陣に陣借り仕る」-筒井順慶の重臣だった島左近は、順慶亡き後、筒井家とうまくいかず出奔。武名高き左近には仕官の話が数多く舞い込むが、もう主君に仕えるのはこりごりだと、陣借り(雇われ)という形で、豊臣秀長、蒲生氏郷、そして運命の石田三成の客将となる。大戦に魅入られた猛将は、天下を二分する関ヶ原の戦いでその実力を発揮する!従来の「義の人」のイメージを塗り替えた新たな島左近。期待の歴史作家による渾身の作品、待望の文庫化。
都市で漂流を続ける少女たちにとって、衣食住をめぐんでくれる“神様”とは?自殺の名所で発見された女子高校生の死因を探る「僕」に協力者が現れた。河川敷で死体を発見した若者。だが彼には通報をためらうだけの理由が。事件のショックで記憶を失ってしまった被害者。催眠療法で記憶を戻すと…。儲け命の札差に五両を借りに来た御家人と、辻斬り事件に関係はあるのか。五編のどんでん返しをご賞味あれ。
狂言作者・河竹黙阿弥のために台本のネタを探す編集人の幾次郎は、古本屋の店主から五篇の戯作を渡される。“人気者の先生”のお眼鏡にかなう作品はこの中にあるのか?注目の歴史作家、初の短編集。
「予の天下を描け」。将軍足利義輝からの依頼に狩野源四郎は苦悩していた。織田信長が勢力を伸ばし虎視耽々と京を狙う中、将軍はどのような天下を思い描いているのかー。手本を写すだけの修業に疑問を抱き、狩野派の枠を超えるべく研鑽を積んできた源四郎は、己のすべてをかけて、この難題に挑む!国宝「洛中洛外図屏風」はいかにして描かれたのか。狩野永徳の闘いに迫る傑作絵師小説。
「貴様はどうも面白うないぞ!」生真面目な池田恒興は、不満げな主君・織田信長から秘伝書を渡される。そこには、戦や政において彼が感得したことが記されていた。本能寺の変にて信長亡き後、喪失感にさいなまれる恒興。なぜなら、乳兄弟でもあり、最も古い家臣の一人として彼の背中だけを見つめてきたのだ。遺された秘伝書は、苦境の度に恒興の危難を払ってくれる。長久手の戦いの絶体絶命の窮地にも、それが救ってくれると信じていたが…。時代小説の若き新星が、戦国の世のトップに仕えた男の苦悩と葛藤を描く、書下ろし長編!