小説むすび | ジャンル : SF・ホラー

ジャンル : SF・ホラー

探索者探索者

すべては、若き古美術商アレックス・ベネディクトと、その相棒の美人宇宙船パイロット、チェイス・コルパスのところに持ちこまれた、ひとつのカップから始まった。一見したところありふれたカップだったが、コンピュータの解析によれば、およそ9000年前に造られたものと判明したのだ。しかもそこに描かれている古代文字から、抑圧的だった当時の地球を脱出してユートピアを築くべく出発したものの、その後消息を絶ち、いまでは伝説と化している宇宙船“探索者”の備品であることが確定したのである!もし、いまも銀河のどこかを漂っているこの宇宙船を発見できれば、巨万の富は約束されたようなものだ。しかも“探索者”が見つかれば、彼らが移住したといわれる植民星マーゴリアも発見できる可能性はきわめて高い。そうなれば、史上空前の大発見だ!かくて調査を開始したアレックスは、かすかな手掛かりから次々に新事実を手繰りだしてゆく。そしてアレックスの指示のもと、チェイスは愛機“ベルマリー”を駆ってリムウェイを飛び出し、テレパシー能力を持つアシユール人の惑星や、人類の故郷である地球にまで赴いて調査を続けるが…!?2007年ネビュラ賞最優秀長篇部門受賞作。

残虐行為記録保管所残虐行為記録保管所

数学者チューリングが基礎を築いた数学的魔術により、平行宇宙から魔物じみた異生物が侵入してくる怖れがあることが判明した。この魔術的災厄の防止を目的として、英国政府が設立した組織が“ランドリー”である。ボブ・ハワードはこの秘密組織の新米エージェント。初の現場任務は、アメリカからの帰国を希望する大学教授との接触だった。哲学教授で赤毛美人のモーは、自分では気づかぬうちにオカルト的国防にかかわる研究をしていたため、アメリカ政府から帰国を許されなかったのだ。たんなる調整だけの初級任務のはずだったが、中東系テログループに彼女が誘拐されたことから事態は一変する。SWATチームの突入により彼女は無事奪還されたが、テログループの目的は謎だった。リーダーらしき人物がドイツ語を話していたことから、背後にナチス・ドイツの魔術研究機関アーネンエルベとの関連も推測された。真相究明のため、ボブとモーの二人は、アーネンエルベの資料があるアムステルダムの残虐行為記録保管所へと向かうが…!?表題作「残虐行為記録保管所」と、その続篇で2005年ヒューゴー賞ノヴェラ部門受賞作の「コンクリート・ジャングル」の2篇を収録したSF+クトゥルー+スパイスリラー。

擬態擬態

2019年、海洋工学の専門家ラッセルは、海軍提督ハリバートンから奇妙な仕事を依頼された。太平洋の深海で発見された謎の人工物を、軍や政府と関わることなく密かに調査したいというのだ。ラッセルは百万年以上も海底にあったと推測される卵形の物体を、サモア島に引き上げることに成功する。だがそれは、これまでに発見されたどんな物質よりも重い謎の金属でできており、いかなるドリルやレーザーを使っても、構造を調べるどころか、傷ひとつつけることができなかった…。やがて、謎の人工物発見のニュースは、ある人物をサモア島へと引き寄せることになった-どんなものにも自在にその姿を変えることができる異星人「変わり子」を。百万年前、ただひとりM22星団から地球へとやってきた「変わり子」は、これまでさまざまな海洋生物に変身して過ごしてきたが、1931年、はじめて陸にあがり、人間として生活を始めていたのだ。この物体が、曖昧になっている記憶を呼び覚まし、自らの出自を知る手がかりになると直感した「変わり子」は、若い女性に変身し、ラッセルの調査チームに入りこむ。だが地球にはもう一体、異星生命体-「カメレオン」が存在した。「彼」もまた、この人工物を自らのものにすべく…。2006年ネビュラ賞、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞に輝く、ノンストップSFアドヴェンチャー。

オリュンポス(上)オリュンポス(上)

絶世の美女ヘレネをめぐって始まったトロイア戦争を戦っていたギリシア神話の英雄たちは、圧倒的な力をふるう神々に対してついに叛旗をひるがえした…これまで、地球化された火星のオリュンポス山の神殿に住む神々は、トロイア側あるいはギリシア側につき、英雄たちとともに戦争をしていた。その戦いは、まさにホメーロスの書いた『イーリアス』そのままの展開だった。だが、神々にナノテクで復活させられ、戦争の経過を観察させられていた学師ホッケンベリーの行動が、トロイア戦争を英雄たちの神々への挑戦に変えてしまったのだ。木星の衛星系に住む半生物機械モラヴェックたちは、地球化された火星近傍での量子活動異常の真相を探るべく、調査隊を送りこんだ。やがて、調査隊の一員だったエウロパ属のマーンムートとイオのオルフの活躍で、大挙して火星に到着したモラヴェックの援軍が、英雄たちと手を組み、ともに神々との戦いに挑んでいく。圧倒的な力を持つ神々と戦争をはじめたギリシア神話の英雄たちとモラヴェックの運命は…ローカス賞を受賞した『イリアム』に続く、待望の完結篇。

オリュンポス(下)オリュンポス(下)

はるか未来の地球で、数千年にわたり、仕事も学問もせず、衣食住のあらゆることを自動機械の下僕たちに任せ、パーティーに明け暮れていた人類の生き方は、ある日、突然襲ってきた大流星雨とともに、大きく変わった。世界の謎を探るべく旅に出たハーマンとディーマンの冒険で、地球をめぐっていた小惑星が落ち、世界中の送電が停止され、自動機械の下僕は動かなくなり、これまで忠実な召使いとして働いていたヴォイニックスたちが人間を殺しはじめたのである。女主人アーダの住むアーディス・ホールに集う人々は、そこに滞在していたオデュッセウスの指導のもと、大きく変貌した世界の状況に対処すべく、独自の活動をはじめていた。だが、そこにも恐るべき敵が近づいてきつつあった…“ハイペリオン”シリーズで人気のシモンズが、ギリシア神話をめぐる物語をはじめ、シェイクスピア、シェリー、ブレイク、ブラウニングなどの戯曲や詩を織りこみつつ描く、トロイア戦争をめぐる壮大なSF巨篇。

火星ノンストップ火星ノンストップ

突如地球を襲った大災害!途方もない嵐が世界各地で発生、熱帯地方では大雪が降り、津波による死者は数十万人におよんだ。原因は火星から地球へと伸びる力場チューブだった。火星へと飛来した謎の物体が、火星から地球の大気を盗んでいるらしい。この未曾有の危機に、一人の男が立ち上がった。男の名はカーター・リー-世界的に名高い冒険家だ。プロペラ機による両極間無着陸飛行の途上、南極でこの恐ろしい事件に遭遇した彼は、愛機フェニックス号を駆って大竜巻-力場チューブのなかに飛びこむと、一路火星へと向かったが…表題作「火星ノンストップ」をはじめ、パラレル・ワールドの概念を世界で最初に提示した傑作「時の脇道」、待望の野田昌宏訳による「シャンブロウ」、凍てついた大地にアンモニアの吹雪が吹きすさび、空にナトリウムの爆発がひらめく木星を舞台にした「わが名はジョー」など、全7篇を収録。SF作家としてまた「と学会」会長として知られる編者が、センス・オブ・ワンダーに満ちた珠玉の名作を厳選したテーマ別SFアンソロジー決定版。

くらやみの速さはどれくらいくらやみの速さはどれくらい

近未来、医学の進歩によって自閉症は幼児のうちに治療すればなおるようになっていた。35歳のルウ・アレンデイルは、治療法が確立される前に大人になってしまった最後の世代の自閉症者だ。それでも、ルウの生活は順調だった。触感やにおいや光に敏感すぎたり、ひとの表情が読みとれなかったり、苦労は絶えなかったけれど、自閉症者のグループを雇っている製薬会社に勤め、趣味のフェンシングを楽しんでいた。だが、新任の上司クレンショウが、新しい自閉症治療の実験台になれと自閉症の社員たちに言ってきた。ルウは、治療が成功してふつうになったら、いまの自分が自分ではなくなってしまうのではないかと悩む。ルウの決断のときは迫っていた…光がどんなに速く進んでもその先にはかならず闇がある。だから、暗闇のほうが光よりも速く進むはず。そう信じているルウの運命は?自閉症者ルウの視点から見た世界の光と闇を鮮やかに描き、21世紀版『アルジャーノンに花束を』と評され、2004年ネビュラ賞を受賞した感動の長篇。

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