1993年7月15日発売
『社内局』経由で配付した会議用資料を回収することになったかれ。ところが『社内局』とはいったい何なのか、どこにあるのか、だれも知らない。たった一人、会社という迷宮をさまよう羽目におちいった困惑の一日ー。一九八九年度の野間文芸新人賞受賞の表題作と芥川賞候補作『パパの伝説』を収録。
70年代に作られたという“幻の映画”が、蒸発した夫の部屋から出てきたので見てくれないかと、人妻から誘われたぼくは、一夜を共にしてしまった。それが彼女との最後になった。ぼくは幻のフィルムを作った男たちを、女子大生・初美と共にバイクを駆って探し回り、一人の美女を巡る深い疑惑の渕に飛び込んだ。
人間は空を飛べるはずだ、と日頃主張していた幻想画家が、四階にあるアトリエから奇声と共に姿を消した。そして四日目、彼は地上二十メートルの電線上で死体となっていた。しかも黒い背広姿、両腕を大きく拡げ、正に空飛ぶポーズで。画家に何が起きたのか?名探偵御手洗潔が奇想の中で躍動する快作集。
「魔女狩り」と恐れられたマッカーシズムの嵐の中、政府高官だった父は無実の罪で投獄された。その裏にはCIA幹部さえ未知の恐ろしい陰謀があったのだ。そしてその秘密が新生ロシアの管理体制を脅かしー。KGBが、GRUが、「神の館」が、「古の信者たち」が牙を剥く迫力満点大波瀾ストーリー。
地下室に人工的に造られた“孤島”の扉が再び開かれるのは72時間後。参加者はミステリー講座を主催する推理作家を含め、若い教え子七人。密室状態になった初日の夜、推理作家は死体となって発見された。異常な心理状態に追い込まれる参加者たち。しかし、それは次々と起こる事件の幕開きにすぎなかった。
毒殺されたと噂される革命の父レーニンはもう一通の遺書を書いていた。事情を知った者は今日も次々と殺されてゆく。若きCIAエージェント・チャーリーに、密命が下された。別れた美しい妻、大富豪レーマン、謎の女ソーニャ、豪華絢爛たる登場人物が事件に巻き込まれー。手に汗握る国際謀略小説。
〈EX=3333〉の船長ヴィヴィアー・ボンテイナーは、結婚したてのアルサリとともに南太平洋で休暇を楽しんでいた。ふたりは、テラの富豪ノエル・ミント=キシランのパーティに招かれ、深海ヨット《ポセイドン》による海底探検にさそわれる。発見されたばかりの古レムール人の遺跡を調査しようというのだ。だが、深海に向かったボンテイナーたちを待ち受けていたのは、二次制約者とアコン人による地球破壊の陰謀だった。
君のことを愛してはいないー。男と女の間にはこうして始まる恋もある。練達の楽器職人ステファンが美貌の新進ヴァイオリニスト、カミーユと出会ったのは、ヴァイオリン工房の共同経営者マクシムを介してだった。ステファンはマクシムの恋人カミーユから目が離せなかった。カミーユはその強い視線に愛を感じた…。二人の男性の間で心がゆらぎはじめた彼女は、自分の気持ちに素直になってステファンに愛を告白するが。
大坂夏の陣が終結して一年後の元和二年-。かつて伊賀一と忍びの技をたたえられた滝野右近のもとに、さる大名の使者が訪ねて来た。使者は右近の腕を見込み、徳川家康が所持している名物茶器初霜肩衝を奪って欲しいと頼む。そのころ、茶器は家康の亡骸とともに柩におさめられ、久能山の仮殿に安置されていた。徳川家に忠誠を尽くす服部一族との死闘の末、右近はついに家康の柩をさぐり当てる。だが、棺の蓋をあけた右近がそこに見たものは…。
化粧品メーカーに勤務する魚住晋一は、立山で遭難しかけ、若い女性に助けられた。だが、女性は翌朝、忽然と姿を消した。後日、見合い結婚した魚住は、新妻・夕紀子がその時の女性ではないかと思い、妻の過去を探り始めた。その魚住の行動は、周囲に波紋を投げかけ、思いもかけずそれぞれの隠蔽されていた忌まわしい過去を白日のもとにさらけだすことになった…。
札幌の陸上自衛隊北部方面総監部が、ソ連極東戦域軍の動きに北海道侵攻の意図ありとの情報を入手。首相官邸に呼び出された防衛研修所の柳瀬の元へ、時を同じくして石狩湾にF級ソ連潜水艦が強行突入し坐礁との報告が入る。いやが上にも緊張が増す中、柳瀬達はこれらが極東戦域軍によるクーデターの一連の動きと分析するが、米国はその動きを黙認する。これは脅しか、それとも最高度の政治的謀叛戦略なのか?
北アルプス常念岳の山中で、丸めた新聞紙だけを詰めたザックを持って死亡した登山者が発見された。荷物の中身が古新聞だけという前代未聞のケースに疑問を持った豊科署の名刑事・道原伝吉は、男が持っていた手書きの地図を手掛りに雪解けを待って捜査を開始。その地図に明示された印の地点から、死後数年を経た白骨遺体と空のジュラルミン製トランクが出てきたことから事件は意外な方向に展開を見せ始めた。