1998年3月発売
ある夏、コッド岬の小さな村のバス停に、緋色のブラウスを着たひとりの女性が降り立ったーそこから悲劇は始まった。美しい新任教師が同僚を愛してしまったことからやがて起こる“チャタム校事件”。老弁護士が幼き日々への懐旧をこめて回想する恐ろしい冬の真相とは?精緻な美しさで語られる1997年度MWA最優秀長編賞受賞作。
烈風吹き荒ぶ中、死神の肩に乗ってピクニック気分の笑を連れ、カヌエは断崖絶壁を這い登り孤島の特別刑務所へと潜入した。爆弾魔「花屋の岬」を監獄から強奪し、特殊な能力を必要とするために相変わらず人手不足のままのフライング・サーカスへ迎えようというのだ。しかし、そこにいた岬は、女モドキに囲まれ酒池肉林の優雅な生活を送り、二度と外に出たくないとゴネるどうしようもない奴だった。おまけに宿敵クロスロードと博愛の天使がまたもや…。
女性記者レベッカが射殺された。彼女の「婚約者」と「恋人」は容疑者を突き止めるが、その人物は元FBI捜査官だった。狂信的な秘密組織を率い、「自由の砦」に住む男のもとに潜り込んで復讐の機会を狙う「恋人」は、仇の娘を愛し始めるー夢のように美しい大地を舞台に、追憶と哀愁が全篇に漂う傑作サスペンス。
旧独裁者の死をうけ新タシュカルとなった、秘密警察長官ギンコラシュの恐怖政治がタラケで始まった。不穏分子静粛を進めるギンコラシュは、独裁権力確立の鍵を握る巨大ステーション“貯蔵庫”とタシュカル護衛にあたる“家臣”団の存在を知る。両者わがものにすべく、彼は自ら貯蔵庫に赴くが、そこにはローダンたちが閉じこめられていた。そして混乱の中明かされる貯蔵庫の驚くべき正体とは。
ソ連に吹き荒れたユダヤ人迫害の嵐のなか、一人の女性詩人が処刑された。彼女は二人の子供を残した。最初の夫である詩人との間に生まれたアレクサンドル。そして二度目の夫のKGB大佐を父とするジミトリー。だが、兄弟の運命は大きく分かれてしまった。アレクサンドルはアメリカの伯母のもとへ。ジミトリーは孤児院へ。東西に引き裂かれて闘うことになる宿命の兄弟を、息もつがせぬ展開と壮大なスケールで描く傑作巨篇。
アメリカで育ったアレクサンドルはアレックスと呼ばれ、ソ連の研究家になった。一方、ジミトリーはKGBに入り、次第に頭角を現わしていく。しかしパリでめぐりあった二人は、同じ女性を愛したためにお互い激しい増悪に身を焼くことになった。アレックスはCIAに加わり、丁々発止の諜報戦の中で弟との死闘を繰り広げる。そして波瀾万丈の物語は驚愕のクライマックスへ…。巨匠バー=ゾウハーの集大成というべき雄篇。
アル中更生施設で働く青年ジューヴェナルは、触れるだけであらゆる病を癒す“奇蹟”の力の持ち主だった。その力を当て込み、ひと儲けをたくらむ元宗教家が、若い女性リンを手先として更生施設に送り込んできた。ところが、リンは天真爛漫なジューヴェナルにこれまでの男性にない魅力を感じ、たちまち恋におちてしまう。策謀にからめ取られていく二人の恋の行方は?犯罪小説の巨匠レナードが新境地を拓いた傑作恋愛小説。
弘化二年、江ノ島弁財天への御代参に向かう大奥女中の行列の駕籠が四人の虚無僧に襲われ、その中の一人が拉致された。二度と人は斬らぬと誓って、刀を捨てて久しい俳諧師・風来老人だが、弁天詣で女性を救うのも、風雅というもの、五尺の樫の杖を旋風のように翻転させ、賊を追い払った。助けられた娘は志乃、老中・水野忠邦の密命を受け江戸城大奥への阿片持ち込みの噂を確かめるべく、探索をする者だった…。
赤城、加賀、蒼龍、日本の誇る機動部隊がミッドウェーの波間に消える。ただ一隻、阿修羅の奮戦を続ける空母の命運も風前の灯火であった。「か、艦長はいるか…総員に退艦命令を…だ、出してくれ」空母座乗の第二航空戦隊司令官がもうろうとした表情で告げる。「うっ…おーい…俺の足を誰か羅針盤に…ううっ…縛れ。か、棺桶から流れ出したら…うっ…たまらんからな…た、たのむ…」かろうじてつぶやくと、重傷の司令官は意識を失った。「よーし今だ、司令官を運び出すんだ。いいか、しばらくは目を覚まさんよう安定剤を多めに打てと、軍医に言うんだぞ」艦長が大声で叫ぶ。司令官は屈強な男たちに担ぎ出されていった。時は流れ昭和19年10月、レイテ湾。九死に一生を得た男が大和に佇む。
函館在住の推理作家を訪ねようとしていた編集者弘田の服毒死体が青森で発見された。その後各出版社に殺人を予告する脅迫状が送りつけられ、弘田の上司も殺されてしまった。しかも浮かび上がった容疑者には鉄壁のアリバイが…。はからずも事件に巻き込まれた笹谷美緒と黒江壮の名コンビは不可能殺人の解明に乗り出す。アリバイ崩しに挑む本格長篇鉄道ミステリー。
掴めないアリの心と自分の想いに絶望し、城を出たルビーローズ。しかし、城下には内乱の火種が広がりつつあった。新しい祖国「海賊王国」のため、ルビーローズは働き始める。だが、そこに現れたアリの姿にルビーローズの心は乱され…!?ノエルの冒険スペクタクル・ラブロマン、緊迫感あふれる第3巻、登場。
一児の母となった村上緑子は下町の所轄署に異動になり、穏やかに刑事生活を続けていた。その彼女の前に、男の体と女の心を持つ美人が現れる。彼女は失踪した親友の捜索を緑子に頼むのだった。そんな時、緑子は四年前に起きた未解決の乳児誘拐事件の話をきく。そして、所轄の廃工場からは主婦の惨殺死体が…。保母失踪、乳児誘拐、主婦惨殺。互いに関連が見えない事件たち、だが、そこには恐るべき一つの真実が隠されていた…。ジェンダーと母性の神話に鋭く切り込む新警察小説、第二弾。
雪山で死んだフィアンセ、藤井樹の三回忌に、渡辺博子は想い出に封印するかのように、樹が中学時代に住んでいた小樽に手紙を出す。ところが、今は国道になっているはずの住所から返事がくる。天国の彼からの手紙?博子は再び返事を書き、奇妙な文通が始まる。もうひとりの藤井樹は何者なのか?二度と戻れないその場所から、大切な何かがよみがえってくるのだった。
大学を出たばかりの新任教師・小谷芙美先生が受け持ったのは、学校では一言も口をきこうとしない一年生・鉄三。決して心を開かない鉄三に打ちのめされる小谷先生だったが、鉄三の祖父・バクじいさんや同僚の「教員ヤクザ」足立先生、そして学校の子どもたちとのふれ合いの中で、苦しみながらも鉄三と向き合おうと決意する。そして小谷先生は次第に、鉄三の中に隠された可能性の豊かさに気付いていくのだった…。学校と家庭の荒廃が叫ばれる現在、真の教育の意味を改めて問いかける。すべての人の魂に、生涯消えない圧倒的な感動を刻みつける、灰谷健次郎の代表作。
犬のろくべえが穴に落ちてしまった。なんとかしてろくべえを助けなきゃ!一年生の子どもたちがみんなで考え出した「めいあん」とは?表題策「ろくべえ まってろよ」の他、天真爛漫な男の子・マコチンの生活を描いた「マコチン」、何でも同じになってしまうのが悩みのふたごの女の子の物語「ふたりはふたり」など、八編の童話を収録。子どもたちのみずみずしい感性がきらめく一冊。
ヴァンパイア事件に揺れる東京に現れた、もうひとりの殺人狂。謎のバンド「ゾディアック」のライブに潜入を試みる滝沢稔…。そして、伊集院大介が最も恐れる竜崎晶の潜在能力とは?人々の不安と期待のなか、晶の初舞台は、ついにその幕を開ける-。